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病室・個室・海外

作者: 狐猫

……………

 「ここはどこだ」


俺は辺りを見渡した。殺伐とした雰囲気と共に鼻をツンとするような香りが鼻腔を刺激する。カーテンで区切られて俺はベットに寝かされていたようだ。


「う!なんだ頭が、、、、痛い」


俺は頭の痛さにめまいを起こしながら手を頭に当てた。するともう1つの強烈な違和感を目の当たりにした。俺の腕。右腕には「チクッ」とした痛みがあり、よく見ると透明な細い管が繋がっていることに気が付いた。これは誰が見ても点滴であることがわかる。


「うわぁ!点滴!なんで!」


俺はさらに動揺した。おかしな話だろう。ただ目が覚めただけなのに頭が痛いうえに点滴が繋がれているのだから。普通の状況じゃない。俺は簡単に状況を整理したが、この場所は病院で間違いないはず。先ほどのツンとする香りの正体は消毒液の香りだし、点滴を素人が簡単に刺せるわけがない。


「でも、なんで」


俺は病院に来た記憶なんてない。病院に運び込まれたなら看護師や医師がすぐそばにいるはず。それがいないのだ。この点滴はそもそもなにが打たれているのだろう。俺は恐る恐る点滴に繋がれている液体の袋に目を向けた。


「英語?」


日本語の薬でもただでさえわからないのに、英語ならなおさらわからない。俺の焦りは更に加速した。


「この点滴は何なんだ一体」


効能不明。ただただ俺の体にドクドクと謎の液体が流れだしている。俺の体にはまだ何も表れていない。

俺はゆっくりとベットから身を起こしてみると異常な体の重さに驚いた。


「重い。なんだこの重さは。おかしい」

「ウッ!」


やはり正常じゃない。やめてくれ誰か助けてくれ。助けを呼ぼうとしたがどこに行けばいい。誰に言えばいい。助けはまず来るのか不明。


「ウッ!こんどは腹が!」


頭痛や倦怠感だけでは俺の体は飽き足らないようだ。今度は腹の痛みと来た。異常な苦しみに耐えながらトイレを探すためにカーテンを勢いよく開けた。これで人がいれば万事解決だがその望みは一瞬にして消えてしまった。


「誰もいない個室・・・だと・・・」


俺の目には絶望しか映っていない。人は一人もおらず、ましてや病室の個室と来た。


「クソッ。やっぱりか。ここはどこなんだ!ウッ!」


俺の体は限界を迎えていたので体を引きずりながら歩き出した。トイレはなぜか完備されていた。部屋の角にトイレが設置されていたので、そこまで体に鞭を打って進んだ。


用を済ませてトイレから出るとベットの裏に窓があることに気が付いた。「ここはどこなのか」「逃げれるのか」この二つが頭に浮かびながら一筋の希望へと一目散に駆け寄った。その希望は儚くもすぐに散ることになる。目の前にはコンクリートの壁が見えるだけであり、窓は飛び降り防止のために全く開かない。


ただ、1つ確認できた。


今・・・夜だ・・・


「何時だ!」


俺は時計を見ようと振り返った。壁掛け時計は「7時」を指している。

あまり遅い時間ではない。よかった。真夜中ではない。


(本当にこの時計を信じていいのか)


俺の中の危機察知能力が何かを警告する。もう一度時計をよく見た。


「な、なに!」




止まっている




針は7時を指したまま停止していた。



「あてになんねぇじゃねえかよ」


激怒したが、やり場のない怒りである。


この部屋にあるもので何も情報は得られない。


時間わからない。場所わからない。症状わからない。薬わからない。


「ハハ・・なんだよここ」


半ば諦めでベットに戻った。ベットに横たわって状況を整理したいが恐怖の音がしてそれは不可能になった。


コン、コン


扉のノック音。地獄のノック音。俺の心臓はバクバクだ。


誰が入ってくるのか。

敵か味方か。

医者なのか医者でないのか。

俺は起きてていいのか。

まず俺は俺なのか。


多量の汗と共に恐怖も吹き出ればよかったのに尚更恐怖は増すだけ。息遣いは荒くなる。


カチッ


鍵が開けられて誰かが入ってきた。


コツ


コツ


コツ

コツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ

コツ


足音が早くなる。比例するように心拍数は上がる。

起きててカーテンを開けた際に顔合わせしたくないので寝たふりをすることに。

しっかりと目を閉じて元の寝てた態勢へ。


「シャッ」


カーテンが開いた。顔の表情筋を微動だにせず死んだように取り繕っている。


「シュー、シュー」


謎の息遣いが聞こえる。右手に刺された点滴が動いている。打たれている謎の薬を見ている。もしくは変えているのかもしれない。


(顔が見たい)


俺をこんな目に合わせている本人の顔が見たい。目が合ったらどうなるかわからない。見たい本心がありながらも見れない恐怖心で押しつぶされる。


見たい


見るな

見たい見たい

見たい

見る

俺は薄目を開けた。


言葉が出なかった。いや、出したら死ぬと思ったから。

目の前には真っ白の防護服を着た物体。


(うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)


ここでよく叫ばなかった。いや、叫べなかった。

必死に恐怖心をおし殺してじっとしている。


・・・・


コツ

コツ

コツ


コツ


コツ


ガラッ


奴は出ていった。汗が凄い。そして、あいつは何者なんだ。


「あぁクソ」


追い打ちをかけるように俺の頭の中では余計な情報が浮かびあがった。それは思い出せる内で一番最新の記憶。俺がどこにいたのか。


その場所は日本ではなかった

フィリピンだ


急にフラッシュバックしたかのように思い出した。

俺は友達とフィリピンにいたはず。ここは日本ではないのだろうか。


「友達は!あれ、そういえばいない」


友達はいないし持ち物もない。

必死にフィリピンの記憶を思い返す。


マフィアか?

警察か?

それとも裏の世界のなにか?


誰に捕えられたのだろう。


「え、いや空港には行ったはずだぞ」


友達とお腹が空いてパンを食べた記憶がある。この記憶は本当かどうか怪しい。

私はチョコパンを食べて飛行機に乗った・・・・・はず。


「出国している?ウッ」


今度は吐き気だ。トイレへ駆け込んだ。




点滴の薬の副作用なのか、気持ち悪さが存分に残っているがギリギリ耐えている。

持っていたものは全て奪われ、一緒にいた友達もいない。売り飛ばされたのだろうか。


「逃げ出そう」


夜の病棟。広さはわからない。消灯されているはずなので尚更怖い。先ほどの奴は出ていくときに鍵をかけ忘れたことは確認済み。ゲームであれば懐中電灯があるはずだがそんなものはない。ベリーハードモード。現れるのが日本人である確証、いや、人間である確証もない。


「やるしかないんだよなぁぁ」


震え声で自らを奮い立たせる。

心拍数は急上昇。手は震え息のし過ぎで過呼吸になりそうだ。


「よし!」


俺は扉の取っ手に手をかけると自動で開いた。いや、あちらから開いた。鉢合わせ・・だ。


「ぎゃあぁぁぁぁ!」


このゲームをスタートすることなく終えるようだ。起きていることがばれたのだ。どうなるのかわからない。人生の終わりを痛感したが・・・・


「あれまぁ田中さん起きてたんですね」


(ん?あれ?)


「あぁ鍵開いてたのね。ごめんごめん。はい、ベッド戻ってね。検査結果だよ」

「はい?」


何があったのだ。なにもわからない。


「あ、そっか。運び込まれたんだもんね。説明するよ」


俺はその医者から事情を説明された。

どうやらフィリピンにいたことは合っていた。出国もしている。

飛行機にも乗って日本にしっかりと帰ってきている。

ただ、飛行機を降りて入国審査中に謎に発汗、発熱をし、意識を失ったようだ。

そう。まだ俺は入国していない。空港管理の病院へ運び込まれて隔離されたのだ。なんせ東南アジア帰りで発熱なんて、シャレにならないからな。マラリアとかあるので即隔離。検査結果出るまで医者側も防護服で対応していたわけだ。



「大変だったねぇ田中さんも。あ、この部屋時計壊れてる」

「あ、はい。あ、壊れてただけなんすね時計」

「そして検査結果だけどね食中毒と脱水症状と熱中症」


日常生活でよくなるやつのオンパレード


「はぁ」

「そして食中毒が酷いのよ。大量にカビ食べた?」

「そんなバカな」

「最後何食べた?」

「チョコパンです」

「美味しかった?」

「味しなかったです」

「それだよカビ」

「え?」

「君がチョコだと思ったものはカビなんだよ」


恥ずかしい


「え、本当に?」

「友達からの証言でも発覚しているからね。アホだねぇ空腹で味覚わけわからなくなってカビとチョコ間違えるなんて」

「点滴はさっき変えたからいいか。ただの水分の点滴だし」


(いややややぁぁっぁぁぁ)


点滴はただの水分だった。アホだった。恥ずかしい。いやん


私にとって本当に怖いのはカビの生えたパンだった。



無事治療して入国した。


きゃぁぁぁぁぁぁ!


ホラーだと思って読んだ方全力で土下座します。

ごめんなさい

絶対コメディ…


なんかどうしてもネタに走りたかったんです。

許してください


ちなみに、事実をもとに創作しました。

海外に行って食べたパンがカビたパンがだったのは本当の経験です。

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