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死亡遊戯  作者: 伊達加奈子
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2. 水先案内人の化け物


その時、頭に大きな声が響く。


「おい、メスガキとデクノボウ!!!」


唐突な声と乱暴な言い方に藍は驚いた。

隣の男性も同じく戸惑っている。

大声で怒鳴られている訳ではないのに、殴られたように頭に強く残った。こんな感覚は初めてだ。


「聞こえてねぇのか。

全く。バカどもは耳までバカなのか?」


藍はキョロキョロと回りを見渡した。

誰がどこで言っているのか検討がつかない。

だが、ふと目の前の化け物が気になり、そちらを見る。


「お、メスガキ。

ようやく気付いたか?

そうだよ。俺が話しかけている」


緑色の化け物の像は全く動く気配はない。

もし、この化け物が話しているのなら口元の動きで分かりそうなものだ。

彫像のように動かないこの化け物が本当に話しかけているのか。


「バカか。お前は。

ここは異世界だ。

何でもありなんだよ。

お前にテレパシーを送るのもな」


藍の考えを読み取ったように化け物がバカにする。

やはり、こいつが藍たちに話しかけているということらしい。


「デクノボウも理解したようだな。

では、早速始めるぜ。

俺の名は、グージーファイブ。

お前らの水先案内人だ」


藍がメスガキ、隣の男性がデクノボウらしい。

この化け物は口が悪すぎる。

だが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。


「この世界はアポカリプスという。

お前らのいた世界とは全く別の世界だ。

これに関する質問は受け付けない」


グージーファイブと名乗る化け物は断定的な口調で言い放った。


「これからお前らには乗り越えるべき試練が与えられる。内容はいずれ分かるだろう。

これに関する質問は受け付けない」


化け物は淡々と言う。

質問は受け付けないというが、急な展開に戸惑う藍に質問する考えなどなかった。


「これからお前らに、アポカリプスで生きる為のスキルを与える。このスキルは、お前らの為に神が決めた特定のものか、完全に無作為なランダムなものか選択できる。

いま選べ。

これに関する質問は受け付ける」


急に「質問を受け付ける」と言われて、藍は驚く。

「質問は受け付けない」と言いたいだけではなかったのか。


今スキルの選択をしないといけないらしい。

だが、どちらが良いか分からない。

神が決めたスキルの方が安心な気はするが。

詳細を知るにはこの化け物に質問すれば良いのだろうが、何を質問すれば良いだろう。

……全く思い浮かばない。

藍が考えていると横の男性が質問し出した。


「スキルの数はいくつだ?」


「それは知らん。

3つのやつもいれば5つのやつもいる。

お前らの為に神が適当に決めるからな」


「適当…か。

神は何を基準にスキルを決めているんだ?」


「お前らの特性と、ここに来る前のお前らの願いだ」


「なるほど…分かった。

神が決めたスキルと、完全にランダムなスキルの利点と欠点を教えてくれ」


「質問が多いな。

まぁ答えてやるぜ。

スキルには、有用性・レア度・成長度を踏まえてA、B、C、DやSなどのランクに分けられている。

神が決めたスキルを選ぶと安定的なランクのスキルが選択される。

お前らに合わせたスキルだ。ハズレはない。

完全にランダムなスキルを選択すると、運が良ければSを多く得られるし、運が悪ければ低いランクばかりになったりする。

博打という訳だ。

そんなところだな」


藍にとって、物凄くありがたい回答だ。

この男性がスラスラと質問できているのが、素直にすごいと感心してしまう。


「なるほどな。よく分かった。

俺はもう質問しなくて大丈夫だ」


「では、お前からの質問はこれで終わりだ。

メスガキは質問なしで良いのか?」


急に振られて藍は慌てた。

だが、やはり質問は思い浮かばない。

最後の男性の質問を聞けただけで藍は充分だった。

だが、ふと気になったことがあった。


「なぜ、私たちにスキルをくれるのですか?」


化け物が一瞬黙る。

僅かなタイムラグの後、声が聞こえた。


「予想外の質問だな。

普通はスキルの詳細とか内容だろうが。

まぁいいぜ。

教えてやる。

アポカリプスは過酷だ。

お前らが今までいた世界が羊の楽園とすれば、アポカリプスは狼の狩場なんだ。

羊のようなお前らなど、狼に狩られてあっという間に死ぬだろう。

でもそれじゃ面白くない。

希望を与えないとな。

それがスキルだ。

このスキルは、いずれ現実世界でも必要となる。

まずはアポカリプスでスキルを駆使して生き残れ。

そしてスキルを成長させろ。

神々はその足掻く姿を見たいんだ。

それがお前らにスキルを与える理由だ」


化け物の言葉には幾つか気になる点があった。

現実世界で必要となる?

スキルを成長させる?

神々?


「喋りすぎか。

回答はここまでだ。

メスガキ、もう質問はないか」


納得できない部分はあったが、この化け物からこれ以上は聞けなさそうだった。

藍はこくんと頷く。


「よし。

ならば、早速スキルを授けてやろう」


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