第二話
『この先、カーブです』
パッとしない卒業旅行、ありふれたものなのだろうけど、いつの日にか、これもまた良い思い出になるのだろうか。
そんな事を思いながら、B樹が運転するワンボックスカー──車に詳しくないのでよく分からないが、ワンボックスカーと言うとB樹に怒られる──に揺られ、僕たち一行は旅の目的地に向かう。
『Nシステムです』
今回、B樹の車になった経緯は、
僕以外は皆、車を持っているとは言っても親の車だったりとするが、
B樹──マンハッタンB樹。勿論、本名だ──は、授業を一度も欠席することもなくバイトも掛け持ちしながら自分の学費に生活費、そして、車まで所有する生い立ちが複雑な苦労人だ。
『5km先、右に曲がって下さい』
今回の旅行で、ガソリン代はB樹を除いた四人で出すこと、運転は僕以外で交代とする事を提案したが、B樹は「大事な車をお前らには触らせねぇよ」と、ガス代だけで良いと笑って言ってのけた。
なんでこのグループに居るのか不思議なナイスガイだ。
『30km先の交差点を左に曲がって下さい』
そんなB樹の運転するワンボックスカーはナビに従い、呪獄村に向かうのであった。
『目的地まで、あと…………』
──────────────
ひた走ること数時間。
進めば進むほどに民家もお店も疎らとなり、車中では「大丈夫なのか?」と不安の声が上がるも、突然に現れるガソリンスタンドと共に併設されたコンビニエンスストア『ナイトーマート』にて休憩を入れつつ、また走りにひた走り──
進めば進むほどに舗装も綻びが見られ、揺れる車内、無言になる僕たち。
誰ともなしに溜め息が流れる中。
「おっ!?おおっ!?」
その道の遥か先、両隣に聳え立つお出迎えの看板。
「おっ!?アレじゃね?」
「おぉー!アレだアレ!」
「着いたねー!」
「道も空いてて良かったわー!」
「………………フヒッ」
近付くにつれて、文字も徐々に見える看板。
『ようこそ!呪獄村へ!!』
よく見ると看板の近くにはご当地ゆるキャラだろうか、風雨に晒され塗装も剥げた出来損ないの置き物──後から聞くに『ジュゴッ君』という名前らしい──が、目に当たるだろう部分からLEDを明滅させていた。
体の至る所が明滅しているので、どこが目なのか分からないが。
お出迎えの看板とジュゴッ君の間を通り抜け、呪獄村へといざ行かん!!
『ようこそ!呪獄村へ!!』
~この先30km~