表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1章

 「あなただけでも行った方がいいわ。もうすぐここにも来るだろうから。」

 まるでか弱さの象徴のようだった彼女の雀斑が、途端に歴戦の古傷に見えた。拳銃を握り、先ほどまでの人物とは思えないほど鋭く言い放った彼女に、僕は自分の置かれている状況を認識する。

 「でもフレイさんっ!この子たちを置いては行けないって」

 僕は両腕に抱えた幼い体温を感じながら反駁した。

 「その子たちは大丈夫よ。奴ら、子供はすぐには殺さないわ。それよりもあなた。あなたの瞳と肌は、奴らに見つかれば即座にターゲットよ。」

 「なんで?!そんなこと言ったって――」

 腕の中で震える少女たちが、それでも確かに僕を見上げ微かな声を挙げる。

 「大丈夫だよ、楽器のお兄ちゃん。私たちは大丈夫。」

 「前にだってこんなことがあったもん。でもじっと隠れてれば大丈夫だったから。」

 そんな。子供達を置き去りにして自分だけ逃げるなんてできない。それに。

 「フレイさんだってここの人たちとは違う見た目じゃないか!一緒に逃げた方がいい」

 すると彼女は、冷たく鋭利に細めた瞳をくしゃっと緩め、ほほ笑みながら応えた。

 「優しいのね。でも、私を信じて。そのために私はここにいるんだから。」

 その間も拳銃を握った腕は決して降ろさない。僕は彼女の身のこなしから常人には到底備わることのない技量を感じた。

 「ほら、あなたたちも、楽器のお兄ちゃんを行かせてあげて!」

 「うん」

 二人が僕から離れていく。そのうちの一人が僕の楽器ケース拾い上げ、そっと手渡してくれた。

 ふとフレイさんに視線を戻すと、彼女は先ほどまでの冷たい視線をブロック先へ向けていた。

 仕方ないが、これ以上は彼女の邪魔になるだろう。

 「気を付けてね」

 「うん。君たちもね。」

 「大丈夫よ。子供たちだけなら、怪しまれることもないから。いざというときは私が二人を守る。」

 「お姉ちゃんもいるし大丈夫、怖くないよ!」

 「いい子たちね。じゃあ、ケイ。あなたは裏口から西門の方へ向かって。できるだけ建物の中を通ること。」

 「わ、わかりました。」

 「それじゃ始めましょう。いい?今から10分だけ隠れること。それだけあれば片が付くわ。」

 10分?それって、どういう――?大きな疑問符が頭に浮かんだが、すでに彼女は日差しの中に消えていった。二人の少女も僕に行けとばかりにうなずいて見せた。

 なんだかよくわからないが、ひとまず楽器ケースは抱えた。

 僕は裏口からそっと飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ