9話 先輩の過去
後輩が先輩の過去のことを知ります。
【先輩とお出かけした日の夜】
夕飯時にもお母さんに先輩の事聞かれるし、それを聞いたお父さんは何か不機嫌になってるし。さっさと自分の部屋に逃げて来て
ベッドにゴロンと転がった。
今日は楽しかったなあ。
先輩が家まで来てくれたときにお母さん、あそこまで言わなくても・・・恥ずかしい・・・
でもびっくりした先輩の顔、かわいかったな!!
先輩とのお買い物、目いっぱい楽しんじゃった。
私の洋服もかわいいのを選んでくれた!ミニスカートなのがちょっと恥ずかしいけどね!!
先輩にプレゼントしようとした洋服も結局先輩が自分で買うことになったけど。でも私の選んだ服で喜んでくれたし!お互いに選んだ洋服着てデートしたいなあ!
そう!先輩とデートの約束もできたので満足!
でも、そもそもデートができない理由って何なんだろう。去年の部活が原因?ちゃんと誘ってくれるのかな?
そうだ、佐藤先輩に相談してみよう!
チャットアプリを開いて佐藤先輩にメッセージを送る。
「佐藤先輩、こんばんわ。いきなりですが文芸部にお知り合いいませんか」
「箕輪さんこんばんわ。今日は楽しかったですか?文芸部員はクラスメートに居ますよ。何かご用事で?」
「日下先輩、去年文芸部だったらしいんですけど、やめた理由とか聞きたくて。お買い物はすごい楽しかったです!
「日下さんご本人に聞いてみては?他人に人の事を聞くのはおすすめしませんよ」
「聞いても教えてくれないでしょうし、その話すると辛そうなので聞けないんです」
「まあいいでしょう。教えてくれるかはわかりませんが、あなたが来ることは伝えておきますよ」
「ありがとうございます、明日昼休みに佐藤先輩の教室に行きます」
◇
【月曜日の朝】
さて、制限を外す連絡をしたはいいが、奴がまだ来ないな。
僕は去年文芸部で一緒だった生徒を隣の2ーC教室前で待っていた。
香織先輩とのやり取りを知ってて、僕が振られた時に相談に乗ってくれた奴である。
「まだ来ないのか?もう朝のHR始まる時間じゃないか。遅刻か?」
HRまで10分を切った所で奴が登校して来た。
「おう、日下、早いな」
「やっと来たか。おまえが遅いんだよ。昨日連絡した件で来たんだが、昼休み時間あるか?」
「大丈夫だ、昼はこっちからそっちの教室に行くよ」
◇
【月曜日の昼休み】
昼休みになり弁当を食べ終わり、しばらくして奴がやってきた。
「日下、来たぞ」
「じゃ中庭でも行くか」
中庭の少し外れた人気の少ない所のベンチに揃って座る。
「メール返信返事早かったな。メアドとか変えられてなくて良かったよ」
「久しぶりにみるアドレスだったんで一瞬誰かわからなかったよ」
「スマホからメール送るのも久しぶりだったなあ」
「お、スマホ解禁か」
「ひとまずスマホ使用は再開することにした。ほんとは未だにデートとかしたくないんだが、後輩に頼まれてな」
「後輩?彼女作ったのか」
「いやまだそこまでの関係じゃない」
「けど、なりそうってことだろ」
「可能性はある」
「まあ、今更だが香織先輩の件はどうしようもないだろ」
「わかってるけどな。まだ吹っ切れてはいないよ」
◇
私は佐藤先輩の教室3ーAにお邪魔した。
「佐藤先輩いらっしゃいますか」
「箕輪さんいらっしゃい」
佐藤先輩が迎えてくれた。
「この男の方が文芸部員の方です」
「お昼休みにすいません」
「こんな可愛い子が来るとは思ってなかったよ。で、何を聞きたいんだい」
可愛いって!日下先輩にもいってもらいたいなあ。
「去年文芸部にいた、日下先輩について聞きたいんです」
「日下というと・・・ああ、去年卒業した香織先輩と仲良かった男の子だね」
「その香織先輩というのは」
「文芸部長だったんだけど、ロングヘアのすごい美人さんでね。日下君と非常に仲が良くて、よく一緒に居たんだよ」
「香織先輩が居ない時に部員と話してる時に、僕は卒業式の時に告白するんだ、って言っててね」
「だけど香織先輩は卒業と同時に結婚する事が決まってて、それを誰にも言ってなくて」
「卒業直前に彼にその事を伝えたみたいで、それはすごい落ち込み方をしてて。可哀想で見てられなくて」
「その時に、そんなに辛いなら封印しろって言った部員が居て。それに乗って日下君、使ってたスマホを使わないようにしたんだよね」
「そのあとは日下君が部活やめちゃったからわからないよ」
「ありがとうございました!十分です!」
「そういえば、君は日下君の彼女なの?」
「い、いえ、まだ」
「そっか。日下君はいい奴なんだ。仲良くしてやって。じゃ僕はこれで」
文芸部員の先輩はニヤリと笑って席を立った。
◇
【月曜日の放課後】
「日下先輩!こんにちは!!!!」
うわー今日も元気だなあ。
「昨日はありがとうございました!!!!」
「いや、そんな大きな声で言わないで」
ほら、2-Bに残ってるクラスメート皆見ちゃうじゃない
「お、箕輪さん、デート楽しかったかい」
近くにいて帰ろうとしていた佐野が声をかけてきた。
「はい!!!とっても!!日下先輩にすごく良くしてもらいました!!」
「いや僕は何もしてないだろ・・・あと買い物だ」
「彼女喜んでるならなんでもいいだろ。いいねえ」
「そうだ!佐野先輩のおかげでお出かけ出来たんです!ありがとうございました!!!」
そういえば佐野の一言で決めたんだっけ。なら箕輪さんならお礼言うよね。
「い、いや役に立てて良かったというべきか・・・」
おい、佐野、まーた顔赤くしてるぞ。
「次はちゃんとデートしてくれるって約束してくれたので、今から楽しみです!!デートの帰りはまた家によってくださいって母が言ってました!!!」
クラスの中にざわっとしたものが走った。
「おい、もう挨拶済みか。おめでとう」
「違う!箕輪さんのお母さんの圧力に負けたんだ・・・」
◇
「そろそろ部活の時間だな。帰るか」
「では部活に行きます!!」
いつも通り2人揃って教室を出る。
廊下を歩いている時に箕輪さんが話しかけてきた。
「先輩、ごめんなさい。なんで先輩がデートがダメって言ったか訳を聞いちゃいました」
「ああ、聞いちゃったか」
いずれ言うことだし、知り合いに聞けばわかることだからな。
廊下の端の角で歩くのを止め、箕輪さんと向かい合う。
「思いっきり振られたんですね」
「正確には告白以前だったな。何も言えなかったよ。卒業式に告白してイヤリングを渡そうと用意してたんだけど結局渡せずでね」
「それでアクセサリーショップに」
「そう。あの時店長さんに相談に乗ってもらって用意したんだ。で、渡せませんでしたって報告にいったら、そんな辛いのはこちらで預かるって言ってくれてね」
「それで会いたくなかったんですね」
「あとは、文芸部の奴にも迷惑かけてね。辛いなら自分で制限しろ、って言われてさ」
「自分で考えて、文芸部を辞めて。スマホにも思い出のデータ詰まってるし、見たら辛くなるだろうって思って制限かけて。あとは吹っ切れるまでは彼女を作ったりしないって決めたんだよ」
「じゃあ、もう吹っ切れたんでスマホを出してきた、と?」
「いや吹っ切れてない。でも箕輪さんとデートすると言うことは、自分で決めた制限に引っかかる。だったら全部さらけ出して見てもらった方が良いと思ったんだよ」
「ちなみに香織先輩の写真ってあるんですか」
僕はスマホの写真フォルダから1枚開いて見せた。
「この人だよ」
うわあ、すごい美人さんだ!黒髪のロングヘアが似合ってる!!こんな人と仲良かったの?妬ける!!!
「先輩、私じゃ彼女になれませんか?ダメですか?」
真剣な面持ちで聞いてみた。
「気持ちは嬉しいが、さっきも言ったがまだ吹っ切れないんだ。こんな状態では箕輪さんに失礼だよ」
「そうですか・・・」
残念だけど・・・まだチャンスありそうな雰囲気!
「だけど今度はデートの約束は出来るからさ。また休みに出かけよう」
「はい!!!お誘い待ってます!!!」
「そうだ、スマホ復活したから、チャットアプリ入れるんでアドレス交換してもらっていいかい」
「はい!!もちろんです!!」
「これでいつでも先輩とお話できますね!」
「今でも毎日来てるだろ」
「いいんです!!!もう遠慮しないことにしましたんで!!」
遠慮って?元々遠慮なんてあったっけ?
「次のデートが楽しみです!お誘い待ってます!!!」
◇
階段を下りて玄関に来た。
「今日はどうされます?」
「そうだな。今日行くとからかわれるのが見えるから、明日見に行くよ」
「では明日一緒に行きましょう!!」
「では部活に行きます!」
「気を付けて」
帰り際にこちらを向いて一言。
「先輩、私、絶対に振り向かせて見せます!覚悟してくださいね」
そのままダッシュで行ってしまった。
覚悟・・・要るな・・・
後程細かく修正変更いたします。
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