5話 後輩は先輩をデートに連れ出す①
後輩が先輩をデートに誘ってますが前途多難です
続きます
日下先輩に駅まで送ってもらって、電車で30分程で最寄り駅に着いた。
そこから歩いて10分程で家に着く。
自宅で夕食を食べて、自室でベッドに転がって今日一日を振り返る。
先輩が見に来てくれただけでも嬉しいのに、自己ベスト記録が出ちゃった。
しかもまた来てくれるって!あと駅まで一緒に帰ってくれた・・・
やっぱり先輩やさしいし、格好いいなあ。
あと、デート!
お買い物に付いて来て下さい、とお願いしたらすぐに良いよって・・・
まさかOKしてくれるとは思ってなかった!
これはもう念願のデートじゃないですか!!!
嬉しくてベッドで枕に顔を埋めてにやけている。
日曜日が待ちきれない!楽しみ!!
◇
金曜日なので今週の授業は今日まで。私は土曜日も部活で登校するけどね。
明日の部活が終わったら待ち望んだ先輩とデートだ!
日曜日が待ちきれなくて、朝からずっとにやにやしてた。
朝ご飯食べてる時も、母親から
「顔がにやけてるけど何かあったの?」
と聞かれるし・・・
通学電車内でも先輩とのデートのことを考えてたら、車内でこちらを見てた大学生ぐらいの男の人と目が合ったんだけど、顔を赤くして目を逸らされちゃった。
車内そんなに暑くないよね?風邪気味なのかな?
◇
「おはよう!」
いつものように自分のクラスに入って朝の挨拶したら、クラス中の注目が私に向いた。
あれ?こっちを向いてた男子が皆顔を背けちゃった・・・女子もなんか顔が赤いよ?でもチラチラ見てる。
「今日の箕輪さん、普段より可愛すぎじゃないか?まともに見れないよ・・・」
クラスの子同士で何か話してるけど・・・え、いじめられてる?
納得いかないけど自分の席に座ると、後ろの席の福田君が、
「なんか今日の箕輪さん、普段より可愛いんですが、何かありました?」
「詳しくは言えないけど、昨日すごいいいことあったの!」
昨日の先輩とのやり取りを思い出して、またにやけているのが自分でわかる。
「あ、そ、そうですか・・・」
福田君も顔赤いし、下向いちゃった。風邪流行ってるのかな・・・?気を付けないと!
(その笑顔で話しかけられると無理です、耐えられません)
箕輪さんは気が付いていなかった。
周りがみとれるぐらいの笑顔で目を惹きつけていたことを。
◇
放課後、いつものように先輩のいる2-B教室に向かう。
「こんにちわー!!!日下先輩いますかー!!!!」
「おー今日の箕輪さんすごい可愛いけど何かあった?」
「秘密でーす!!!」
「おーい日下ー。箕輪さん来たぞー今日は一段と可愛いぞ!」
「日下先輩、こんにちわー!!!」
いつも通り僕の机の前の席に座ってもらう。
うわーなんかすごい笑顔だぞ。
「あ、箕輪さん今日も?毎日だねえ」
「はい!日下先輩の顔見るのが日課なので!!」
2-Bのクラスメート、佐野が箕輪さんに声をかけたけど・・・
おいおい、なんで声をかけたほうが顔が赤くなるんだ。
なんか普段にまして強烈だなあ。今日、あの笑顔で何人も落ちたんじゃないか?
・・・僕は落ちてないけど。
◇
「日下先輩、日曜日、よろしくお願いします!!!」
ペコリと頭を下げたときに栗毛が跳ねた。
そうだ、日曜日の事、これは確認しとかなきゃいけないんだ・・・
「あーそのことなんだか・・・ちょっと確認していいか?」
「はい!何でしょうか!」
「買い物に行くんだよね?もしデートのつもりなら付き合えないんだけど」
「えー!!!!!デートですよね?!!」
「じゃ、約束した上で断るのは申し訳ないけど断るよ」
「えええええええええええええええ!!!!」
僕にデートは断ると言われ、ガクッと机の上に頭を落とし、先程とは一転この世の終わりかというぐらい落ち込んでる。
さっきの強烈な笑顔はどこへ行った。
机に頭が載ったまま、急に元気のなくなった顔で、
「なんでデートは駄目なんですか・・・」
「僕個人の事情があってね・・・買い物の付き添いならいいんだけど」
顔を上げ、ちょっと怒った顔で、
「どう違うんですか!一緒にお出かけなら同じでは!」
「買い物したらすぐ帰るだけだよ」
「お昼ご飯とか一緒には・・・」
「デートだね」
「それだとお買い物に付き添ってもらったお礼ができないじゃないですか!!!」
「僕に礼なんて要らないよ。荷物持ちと思ってもらえれば」
箕輪さんはご不満のようだ。むぅーと唸っている。
「それにデートなら僕以外と行ったほうが楽しいと思うよ」
「そんなことはありません!私は先輩と行きたいんです!!!」
◇
「なんだ。付き合ってるのにデートまだだったのか?」
「「(まだ)付き合ってない(ません)」」
「おー息ぴったりだ!って、え?付き合ってなかったの?あれだけ毎日居て?」
さっき顔真っ赤にされた佐野がからかって来た。
箕輪さんはかわいい後輩だぞ。なんで手を出す前提だ。
「じゃあ箕輪さん、デートに行かない日下なんかほっといて俺とつきわない?」
僕はびっくりして佐野をみた。お前は何を言ってるんだ?
「お断りしまーす!」
「だよねー。日下の顔が怖いからからかうのはそろそろやめとく。俺も帰るし」
佐野は僕のほうを見てニヤッとした。どうやら結構厳しい顔で睨んでたようだ。
佐野が帰り際に一言、
「とりあえず今回は買い物でいいんじゃない?日下と一緒に出かけたいんでしょ?毎日見てるから応援してるよ、箕輪さん」
「あ、ありがとうございます!!!」
箕輪さんが破壊力の高い満面の笑みでお礼を言っている。
あーあ、佐野、また顔真っ赤になってるよ。言わなきゃいいのに。
◇
「日下先輩、今回はお買い物の付き添いでお願いします!」
「わかった。待ち合わせとかはそのままでいいね」
「はい!よろしくお願いします!夜にメール送りますので見てください!!」
「わかった。じゃあ帰るか」
「はい!じゃ私は部活に行きます!」
ひとまず機嫌は直ったようだな。
◇
廊下を出て階段を降りる。
「今日は部活、見に来られます?」
「さすがに連日は迷惑だろうから今日は帰るよ」
「わかりました!また是非見に来てくださいね!」
玄関前でいつも通り別れる。
「では日下先輩、日曜日忘れないで来てくださいね!」
「じゃ日曜日に。あくまで付き添いだからね。荷物持ちだよ」
一応くぎを刺しておこう。
「残念ですが今回はそれでいいです!じゃ部活行ってきます!」
箕輪さんは走っていった。
◇
そう。これでいい。ひとまずデートということは避けられた。
僕に誰かとデートする資格なんてないんだから。
何も考えず約束しちゃったから仕方ないけど、本当は女の子と2人というのも断りたかったが・・・
・・・さて、家に帰って荷物持ちにふさわしい恰好の用意でもしますか。
後程細かく修正変更いたします
感想など頂けると嬉しいです