4話 後輩の部活
後輩さんの部活のお話です ついでにデートに誘います
先輩、かっこいいですよなんてつい言っちゃった・・・
だって自分で平凡とか言うんだもの・・・
赤くした顔のまま部室に向かって走る。
走って部室に入ればこの赤い顔もごまかせる、と部室に走りこんだ。
部室には陸上部の先輩、副部長の佐藤先輩がいた。
「箕輪さん、そんなに赤い顔になるまで走ってこなくてもまだ集合時間には間に合いますよ?」
「ウォームアップかねて走ってきました!」
「怪我もしますし、廊下は走っちゃだめですよ」
「はい・・・すいません」
「じゃ、先に行きますね。用意出来たらグラウンドに来てくださいね」
「わかりました!」
よし、今日は練習で気を紛らわそう!
先輩も今度練習見に来てくれるって言ってたし!
◇
(・・・・日下先輩、さっき平凡って言ってましたけど・・・かっこいいですよ?)
箕輪さんのこの言葉・・・
「なんなんだ、一体・・・」
あっけにとられて少し玄関でボーっとしてしまった。
懐かれてるだけだ。うん。そう考えよう。
また明日放課後来るだろうし、気にしてたら何も話せないしな。
そういえば急に走って行ったけど、集合時間に間に合ったのかな。遅れてたらこちらが悪いな。
ちょっとのぞきに行ってみるか。今日行っても良いって言ってたし。
グラウンドに降りて陸上部が練習をしてるところを遠巻きに見てる。
箕輪さんはスタート練習をしてるようだ。
スタート位置について、走り出しの確認を繰り返している。
「はーい、じゃ1本行ってみよう!」
「はい!」
「位置について。よーい」
お、100mのタイムを計るみたいだな。
「スタート!」
スタタっ!と小気味よく走り抜けた。本人が言ってた通り結構速いな。
タイムは?計測係が読み上げる。
「13秒9」
少なくとも僕よりは速いなあ。
◇
箕輪さんが僕に気が付いた。近くの部員に声を掛けてから僕の前に来た。
「日下先輩!早速練習見に来てくれたんですか?」
「さっきの玄関の件が気になって様子を見に来たよ。急に走って行ったから間に合わなかったのかと思ってね」
玄関の件と聞いて箕輪さんの顔が赤くなった。
「あ、あの・・・それは・・・ひとまず今は無しで・・・」
近くにいた女子陸上部員が急に顔を赤くした箕輪さんと僕をを見て、ニコニコしている。
「箕輪さんの彼氏さんですか?」
さっきの女子陸上部員が聞いてきたので
「どうも。箕輪さんの彼氏です」
僕は答えた。嘘だけど。
箕輪さんがびっくりして固まった。
「ち、ちちがいますよー説明会でお世話になった先輩ですよー!」
箕輪さんが手を横に振ってアタフタしてる。
「なんてね。そんな訳ないです。説明会で一緒だった後輩の姿が見えたので」
僕の答えに今度はひどくがっかりしてる。なんで?
◇
「箕輪さん走るの見ましたか?速いでしょう」
「いいタイムかどうかは僕にはわかりませんけど速いですねえ」
「箕輪さん、短距離で次の大会の1位を狙える有望株なのです」
「でしょうねえ。あれだけ速ければ」
「佐藤先輩、その辺で許してください!まだまだだと思ってますので!」
箕輪さんが照れた様子で話している。この女子部員は佐藤先輩と言うのね。
「じゃ、もう1本、本気で走ってみましょうか。彼氏も見てることだし」
佐藤先輩がからかって箕輪さんに話しているが。
「だからまだ彼氏じゃないのに・・・」
「「まだ?」」
僕と佐藤先輩の言葉が被った。
僕のほうはそんな予定は無いよ?
「あ、あの・・・その・・・用意してきます!」
あ、逃げた。
箕輪さんはそれこそ猛ダッシュで100m走のスタートラインに走っていった。
◇
「で、実際のところ箕輪さんとはどのようなご関係で?結構親密に見えましたが」
佐藤先輩は若干疑うような顔を僕に向けてきた。
(毎日放課後に来てるのは言わないほうが良さそうだな)
「説明会で一緒だった後輩というだけですよ。その時に顔見知りになりまして」
嘘は言ってない。
「そうですか。彼女結構可愛いので、狙ってる男子部員もいるようですよ」
「そのあたりは彼女次第でしょうから。僕はあれこれ深入りするつもりはないですよ」
「あなたは彼女のことはどうお考えで?」
「そうですねえ・・・懐かれてる後輩という感じでしょうか」
「わかりました。今はそれでいいのではないでしょうか。あとは彼女次第ですかね」
佐藤先輩は何か分ったような口ぶりで言った。
◇
「佐藤先輩、用意できました!」
100mトラックで準備完了のようだ。お、なんだか箕輪さん気合いが入ってるぞ。
「はーい、じゃ本気で行ってみよう!」佐藤先輩がストップウォッチを持った。
「はい!」
「位置について。よーい」
「スタート!」
シュパッっ!と走り抜けた。さっきより相当速い!すごいなあ。
タイムは・・・佐藤先輩がびっくりした顔で読み上げる。
「12秒1!」
一気に2秒近くも縮めてきた。佐藤先輩も驚いている。
「このタイム・・・インターハイで上位狙える記録だよ・・・」
箕輪さんが歩いて僕のいるところに戻ってきた。
「かなり本気出しましたけどどうでしたか」
「いやすごく速かった。びっくりした」
「日下先輩が見ててくれたおかげで気合いが入りました!ありがとうございます!」
ペコリを頭を下げてきたときに栗毛の髪が揺れた。
◇
「今日はいいタイムも出たし、早めに上がっていいですよ。折角だから彼氏と一緒に帰ったら如何ですか」
「ありがとうございます!日下先輩と一緒に帰らせてもらいます!か、彼氏じゃないですよ!」
「まだ、でしょ」
「あ、あの・・・うううう・・・」
箕輪さん赤い顔でオロオロしだした。とことんからかうつもりですね、佐藤先輩。
「僕は玄関で待ってるから着替えてきたら」
ちょっとかわいそうになったので間に入って声をかける。
「はい、すぐ行きますので待っててください!」
部室に向かって猛ダッシュで向かっていった。
◇
箕輪さんが部室に向かったあと、佐藤先輩が話しかけてきた。
「日下さんでしたよね。お願いがあるんですが、時々でいいので彼女を見に来ていただけませんか」
「見に来るのは構わないですけど、なぜです?」
「彼女、箕輪さんの力の入り具合が全然違うからです。今日、日下さんがいらしてる間に出したタイムは物凄い記録で、次の新人戦どころかその先も狙えるんです」
要は気合いを入れてほしいってことかな。
「彼女も貴方に懐いているんですよね。是非ともお願いします」
「時々、ということであれば。毎日はさすがに無理ですよ」
「それで結構です。よろしくお願いいたします」
◇
箕輪さんが着替えて玄関にやってきた。
「日下先輩、お待たせしました!」
「じゃ、帰るか」
「そういえば。私は電車で通学ですけど、日下先輩も電車ですか?」
「いや、雨の日以外は自転車で来てる、だから駅までは一緒にいくよ」
最寄り駅まで時間にして大体15分ぐらいの距離を自転車を押して並んで歩いている。
「今日は日下先輩が部活見に来てくれてうれしかったです!」
「そのことだけど、時々見に行っていいかな?」
「はい、大歓迎です!来てくれるなら練習頑張っちゃいます!」
「で、ですね・・・日下先輩、お願いがあるんですけど・・・今度の日曜、部活休みなんです。それで、お買い物に行きたいんですけど、付いて来てもらえないでしょうか・・・」
何故か下を向いて、恥ずかしそうに伝えてきた。
「日曜は特に何もないよ。買い物ぐらいなら付き合うよ?」
荷物持ちぐらいやってあげるよ。
「本当ですか!嬉しいです!」
なんかホントに嬉しそうだな。喜んでもらうのは嬉しいが、付いていく相手が僕だからなあ。
◇
学校最寄りの駅に着いたが、次の電車までまだ時間があるのでもう少しおしゃべりを続けることにした。
「じゃこの駅で待ち合わせしましょう!10時ぐらいでいいですか?」
「10時ね。解った」
「あと、日下先輩の連絡先知らないので教えてください!」
2つ折りの携帯電話を出す。
「日下先輩、何ですかこれ」
「何って・・・携帯電話だよ?もしかして初めて見た?」
「はい。周りに使ってる人が居ないので・・・」
「ガラケーってやつだよ。僕のも親父が使ってたのを貰って使ってるから。ほらカレンダーとか大昔で止まってる」
「うわ、よくこんなの使ってますね!これ使うのやめてスマホにしましょうよ!」
「去年はスマホ使ってたんだけどね・・・」
・・・また辛い思い出が出そうになったが抑え切った。箕輪さんには関係のないことだからね。
「日曜日ついでに一緒に見にいきましょう!」
「タイミングあればね」
電車がホームに入ってきた。箕輪さんはあれに乗るらしい。
「じゃ、日下先輩、お疲れ様でした!また明日放課後に行きます!」
大きく手を振ってから走っていった。
「気を付けて」
そう声をかけて、僕は自転車に乗って帰路についた。
◇
家に着いたのは18時半ぐらいか。自転車をガレージにしまい、
家の鍵を開けて入る。
「ただいま」
「おかえりなさい、今日は遅かったね。夕飯用意してあるからさっさと片付けて」
「ちょっと寄るとこがあったんで遅くなった。すぐ食べるよ」
母親に急かされ急いで夕飯を食べ、自室に戻ってふと気がついた。
あれ、よく考えたら日曜の買い物に付き合うって・・・
これってデートでは・・・
しまった・・・うっかり受けてしまった・・・どうしよう・・・
箕輪さんに確認しないと・・・電話するべきか・・・明日でいいか。
ひとまず今日は何も考えず寝よう、うん。
後程細かく修正変更いたします。感想など頂けたら嬉しいです