原動力
「ただいま。外寒い」
「おかえり。今日は冷え込むみたい。帰り早いね。どしたん」
「うん。今日はね、会議が一つなくなったから早く帰れた。今日は病院に来てくれてありがとう。命の恩人に会えたって凄い興奮してたよ」
「そんな大袈裟な。でも無事だったことが分かって嬉しかった。まさか、晴人の担当の患者だったとはびっくりした」
「それな。僕さ、柚の時もだったけど、患者とよく話をするんよね。それで、事故にあったこととか、状況聞いてピンときたんだ。彼女ね、大量の出血で本当に危なかったんだ。柚が止血してなかったら、大変なことになってた」
「晴人に止血の方法、学んでおいて良かったわ」
「うん。彼女には旦那さんがいてね。毎日お見舞いに来てるんよ。凄く仲が良い夫婦。だから、旦那さんも妻が助かったことをとても喜んでいてね。柚に感謝してたよ」
「そうだったんだ。あの時、助けて良かった」
なぜか、あの時、体が動いた。気付いたらワンピースを切っていた。多分、今までの私ならそんなことはできなかっただろう。
原田に刺されたことで、生と死の狭間に立たされた。そして、生き返った時、たくさんの祝福を受けた。「私の周りにはこんなに心配してくれる人がいたのか」と思い知らされた。人が一人死ぬと多くの人が嘆き、悲しむことをとても実感した。
彼女が倒れて血を流していた時、彼女の薬指には指輪がはめられていた。彼女には、大切に想う人がいる。その人は彼女のことをとても大事に思っている。そう思った瞬間、手が勝手に動いていた。誰かを悲しませたくない。それがあの行動の原動力になっていた。晴人が私を助けてくれたように、私も彼女を助けたいと思った。
「柚。これ、受け取ってくれませんか」
見ると、晴人の手のひらの中には、上品な真っ白の入れ物があり、その中には……キラキラと光るダイヤモンドが見えた。
「え、これって……」
「結婚してください」
「私でいいの?」
「柚がいい」
「私も晴人がいい」
佐々木柚と坂井晴人は、キスをした。幸せな時間だった。
皆さん、こんにちは。作者の湯川田美央です。
ついに、二人が婚約しちゃいましたね。
二人の壮絶な過去を思い返して見ると泣けてきますね。
あと、2話で、この物語も完結になります。
では、また次回会いましょう!




