ワンピース
一ヶ月後。
晴人とのデートで着るワンピースを買いに服屋に行っていた。
最近は、肌寒いから厚めの生地の可愛いワンピースほしいなと思う。
「お客様、何かお探しですか?」
「はい。ワンピースほしいなと思って」
「そうなんですね。ならこれならどうですか?」
「かわいいです! 試着して見てもいいですか?」
「もちろんです。では案内致します」
試着してみると、凄くぴったりで可愛かった。値段は少し予算オーバーだけど…買うことにした。
ワンピースを買って、ルンルン気分で歩いていた。
交差点で青信号になることを待っていた。
向かえに立ってる木は、葉っぱが落ち、ほとんど枝だけになっていた。
木も寒そうだな。
どんどん冬になっていくな。
次の瞬間、「ドーン!!!!!!」という凄い音と叫び声が聞こえてきた。
目の前に広がる光景。車が店に突っ込んでいて、窓ガラスの破片や壁の残骸が散らばっている。
何人もの人が倒れていた。血を流している人、動かなくなっている人…私は呆気にとられていた。いや、私だけじゃない。その場にいる人たちの動きが一瞬止まった。
信号が青に変わった。次の瞬間、私は走っていた。その事故現場をめがけて。
現場に着いた時、既に先頭に立って、救急車やら心肺蘇生をやってくれている人がいた。AEDは取りに行ってくれているらしい。
私は、血を流している人へ駆け寄った。かなり酷い傷。血がどんどん流れている。晴人から、止血の方法は教わっていた。実際にやるのは初めてだけど……「よし、私ならできる」そう言い聞かせて、さっき買ったばかりのワンピースを持っていたハサミで切った。「私が助けるんだ。この人を。私が晴人に助けてもらったように」
応急処置をしている時、救急車がやってきた。
「病院に搬送します」
「お願いします」
「あなたはこの方の知り合いですか?」
「いや、違います。ちょうど目の前で事故が起こったので応急処置しただけです」
「分かりました。応急処置ありがとうございます」
その私が処置した女性は、ストレッチャーで運ばれ、救急車に乗った。
私は、ガラスの破片や血が飛び散っている中、救急車を見送った。
「どうか、助かりますように」
その日の夜には、全国ニュースになっていた。死者は、3名。負傷者9名。大きな事故だった。
運転していた人は、80代男性。
「アクセルとブレーキを踏み間違えた」
と話していた。この間もニュースでそんな事故があった。今回は死者も出た。
あの女性は生きているのだろうか。
晴人が帰ってきた。
「今日の事故、私の目の前で起こったんよ」
「え、そうだったの!?」
「そうなの。それでね……」
「よく止血したな。教えておいてよかった。なかなか、実践するとなるとパニックになって出来ない人多いけど柚凄いな」
「でもその女の人、助かったか分からないんだ」
「そっか。柚が止血してくれたからきっと助かってるよ。僕も願っておく」
「うん。助かりますように」
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