ココア
カチカチカチ……
時計の針の音だけが静かに部屋にこだまする。
「晴人ごめんね。怒っちゃって」
「うん。なんか柚のこと全部分かってた気になってたけど、それは間違ってた。柚の闇がここまで深いことを知らなかった」
「ごめん。いつでも別れていいよ」
「そんなこと言うなよ。僕が柚と別れるわけないやん。それだけは確実に言える」
「わたしね、怒りが止まらなくてさっきみたいにキレちゃうことがあるの。ときどき、自分をうまく抑えることができなくなる。わたし自身はそんなことやめたいって思うんだけど。病気なのかも。きっかけはとても些細なことなんだけど、いつの間にかキレてて…スイッチが入ると暴走するんだよね。自分の力では止まらない」
「そうだったんだね。今まで我慢させてごめんね」
「晴人が謝る必要ない! わたしが悪いんだよ」
「僕は柚を支える。今改めてそう思った。決めた」
「はるとぉぉぉ。ありがと」
「これからはさ、些細なことでも何でも言ってな。そしたら、キレちゃうことも少なくなるかもだし。でも、今日のあの女の登場はストレスフルになるのは当たり前だよ」
「しょーじき、怖かった」
「だよなぁ。あれは怖い」
「晴人がきてくれて助かったよ。わたし1人なら死んでたかも」
「行ってよかったわ」
「なんか飲む? ココアでも。作るよ」
「飲みたいです。ありがとうございます」
ココアを飲むと体が温かさで包み込まれた。お腹がじんわりとにじむような。
「美味しい」
コップの中のココアに自分の顔が写る。ゆらゆら揺れてる。泣き腫らした顔。醜いなぁ。明日、目腫れちゃうかも。腫れたらやだなぁ。
腫れないように願いながら自分の顔を飲んだ。
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