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晴人のアパート

「晴人さ、さっきの修羅場みてどう思った?」


「どう思うかって…あの女の人おかしいでしょ。アパートまで押しかけて柚にあることないこと言ってさ。早く帰れって思ったよ」


「女に言われたんだよね。あなたなんて、この世に存在しなきゃ良かったって。あなたなんて、生きていなきゃ良かったって。たしかにその通りだなって。私がいなければあの女の人は、あんな思いしなくて済んだ。原田も逮捕されることもなかった。全部わたしのせいだ」


「なんでそんなこと言うんだよ。きっかけはどうであれ、原田がストーカーをしたという事実は変わらないから逮捕された。あの女は、たしかに悲しい思いしたかもしれないけど、それは原田のせいでもあるよね。ゆずだけが抱えることではない」


「でも私のせいではある。晴人だって、こんな修羅場抱えている女と付き合いたくないでしょ! 今だって本当はもう私のこと好きじゃなくなってるんでしょ! 晴人だって、いつか私のこと嫌いになっちゃうんだ。中学の時の親友のように! 友達のように! 最初はみんなで仲よかった! 私にだって優しくしてくれた! なのに最後はいじめて終わり! 晴人だって、そうなるんだ!」


私は糸が切れたようにしゃべった。急に何かに対しての怒りが湧いた。今まで思い詰めてきたものが一気に弾けた。今の私の血相は、かなり悪いと思う。眉間にシワが寄り、怒っている。でも、自分では止めることはできない。


「ゆず……今まで我慢させてごめん。あんな事件があったのに毎日平気な顔して過ごしてたよね。でもあんなことがあったら、普通は平常心でいられなくなるし、仕事復帰なんてこんなに早くできないよね。柚は我慢してたんだよね。誰にも言えずに。気づいてやれなくてごめん」


坂井晴人は、柚を抱きしめた。


私は彼の腕の中で、まるで子供のように声を上げながら泣いてしまった。


「わたし、いじめられたときに死んでおけばよかった。あのときに、おまえは存在する必要のない人間だって、みんなが教えてくれてたのに。私は今日まで生きてしまった。だからこんなことになった」


「いじめは、加害者が悪い。柚は何も悪くない。彼らが裁かれるべき。柚が生きてくれていたおかげで、僕は柚に会えた。だから、柚が生きてくれていて本当に良かった」



しばらく柚は、晴人の腕の中で泣いていた。まるで、柚は子どものようにうずくまっていた。



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