田中心の視点
「こころ、昨日どこ何してた?」
「柚さんとご飯って言ったじゃん。」
「ほんとかよ。男と浮気してたんだろ。」
「違うよ! 柚さんだよ! なんで信じてくれないの!?」
「信じられないんだよ!」
痛っ。頬を思いきり叩かれた。ひどい。
「携帯見ていいよ。ほら、柚さんとだよ。写真も撮ってある」
「ほんとみたいだな。ごめんな。叩いて。またやってしまった。ほんとごめん」
「いいよ」
何回叩かれて、何回謝られたか。数えきれない。
真司のことは嫌いじゃない。けど、叩かれるのは嫌だし怒られるのも嫌。
別れるというと泣きついてくる。だから、別れられない。
同情ってやつかな。
叩かれたところが痛くて、夜は寝れないことが多かった。
心療内科に行ったら、睡眠導入剤を出してくれた。
最近は「愛の印」って言って、タバコをわたしの肌に押し当てて、ハンコみたいにしてくる。
ジュッってなって、痛いんだよな。
「今日はどこ行くんだ?」
「柚さんのお見舞い」
「あー、お前のせいで、刺された子か」
「……」
「じょーだんじょーだん。そんな気にするんなって」
真司は笑っていた。
でもわたしは笑えなかった。
真司の言う通り、わたしのせいだ。
わたしのせいで、柚さんは……
すごく落ち込んだ。つらかった。悲しかった。
柚さんに申し訳ない気持ちで溢れる。
柚さん。ごめんなさい。




