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生きてる価値を探す日々  作者: 湯川田 美央
心を休める時間
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オレンジ

「そろそろ、部屋に戻ろうか」


「はい」


「立てる?」


 坂井先生が腕を引っ張ってくれた。優しいな。


夜の誰もいない廊下を二人で歩く。寝静まった病棟は、いつもとは全く違って見えた。


魔物が寝ている側を起こさないように、息を殺して静かに歩く。


冒険者の気分だった。


真っ暗だった廊下が私たちが歩くところから電気がピカピカとつく。センサーが反応しているようだ。


私の部屋の前で坂井先生と別れた。坂井先生はこれから仕事があるらしい。大変だな。


私は、ベットの中に潜り込んだ。さっき見た、満天の星空が目に浮かぶ。綺麗だったな。


坂井先生に抱きしめられた時、凄く安心しちゃったな。


これって、もしかして、少し好きになっちゃったのかな?


まー、でも坂井先生人気だし、治療としてやってくれたんだよね。心のケア。ありがたかったな。


いつの間にか、私は眠っていた。




 次の日の朝。


看護師さんたちがカーテンを開ける音で目が覚めた。


「佐々木さん、おはようございます」


「おはようございます」


 眠い目を一生懸命開けて、声を絞り出した。


看護師さんたちがいつものように朝ご飯をトレーに乗せて持ってきてくれた。


「ありがとうございます」


「今日は佐々木さんの好きなオレンジがあるわよ」


「本当だ。嬉しい」


「ごゆっくりね」


 病院のご飯を見ていると、学校の給食を思い出す。トレーに乗せてよく運んだな。


給食よりは、味は薄めだけどね。後、おかわりができないのも違うか。


ご飯を食べ終わった後、痛み止めの薬を飲んだ。まだこれは欠かせないんだよな。


 午後になって、坂井先生が回ってきた。


「佐々木さん、具合どうですか?」


「まだ痛みがあるんですけど、日に日に痛みが軽減されている感じがします」


「それは良かったです。無理しないでくださいね」


「はい。ありがとうございます」


 昨日のことは何もなかったように会話した。


私は、ちょっぴり気を使ってしまったけど、坂井先生は何も意識していない感じだった。


余裕が漂っている。さすがですね、坂井先生は。


あくまで、医者と患者だからな。そう自分に言い聞かせた。

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