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身勝手な働き者

ふらちなカッコウ

作者: 与太話 ヒロ

 あるところに体の弱いカッコウがいました。

 活発に動けないので美味しい食べ物にありつけず、誰も食べない不味いものばかり食べて毎日を過ごしていました。

 ある日、カッコウは自分で餌をとるより、得意な托卵を請け負って代わりに餌を貰う方が楽だということに気付きました。

 そこで他の子育てが不得意な鳥たちに話を持ち掛けます。

 カッコウが代わりに托卵してくれるというので、自分で育てるのが面倒だと思っていた鳥たちは話に乗りました。

 お客の鳥たちはそれぞれお礼の食べ物を集めてきてカッコウに支払い、自分が産んだ卵を渡しました。

 カッコウは卵を預ける予定の巣の鳥をよく調べました。

 預けた卵から孵る雛が、その巣の雛の中で一番大きく見えるようにするためです。

 何も知らない親鳥は、一番大きい雛によく餌をあげてしまいました。

 お客の鳥は苦労しないで子供が良く育つので大喜びです。

 カッコウはこの商売で成功して、貧相だった食卓は旬の食べ物で彩られた豪華のものになりました。


 しかしいつまでもそんな商売が上手くいくはずがありません。

 親鳥たちの中には、生みの親である自分たちより一回りも二回りも大きく育ったヒナたちを見て不審に思うものも現れ始めました。


「自分の子供ではないかもしれないが今更追い出せない。餌をあげるのをやめてしまったら逆に自分たちが襲われてしまいそうだ」


 そこで知恵者のフクロウに相談します。


「大きくなる前に自分の本当の子供と見分ける方法はありませんか?」


「だったら自分が産んだ卵の模様をよく見て覚えておきなさい。1つだけ違う色の卵があるはずだよ」


 カッコウは卵の模様もよく似せて預けるようにしていたのですが、親鳥たちの記憶力にはかないません。

 カッコウが置いていった卵を見破った親鳥たちは次々に他所の卵(よそのこ)を落として割ってしまいます。

 自分たちが産んだ卵が割られたことに怒ったお客の鳥はカッコウを責めます。

 慌てたカッコウは急いで対策を思いつき、お客の卵から雛が孵ってから預けることにします。

 そしてカッコウは孵ったばかりの雛を預ける前にこう教えます。


「向こうへ行ったら気に入ってもらえるように大きな声でこう言うんだよ。いっぱい食べて大きくなります! 元気な声であいさつします! お母さんが大好きです!」


「いっぱい食べて大きくなります! 元気な声であいさつします! お母さんが大好きです!」


「よくできました。良い子にしてるんだよ」


 預け先の雛たちが孵ったばかりのタイミングをカッコウは狙います。

 預けられた良い子は卵の殻を奪って被り、数を合わせるために一羽の雛を突き落として殺します。

 こうして成り代わることに成功した良い子ですが、帰ってきた親鳥はどうも違和感を拭えません。

 困った親鳥たちはもう一度知恵者のフクロウに相談します。


「だったら子供たちが喋れるようになってから、家族にとって大事なことを聞いてみなさい。そうすれば誰が自分の子供じゃないか分かるだろうね」


 それから親鳥は不安な気持ちを抱えながら子育てに励みます。

 良い子はたくさん食べましたが、親鳥の仕事は雛に餌を与えるだけではありません。

 親がいない間に巣に迫った危険を子供たちだけで力を合わせて回避しなければならない時もあります。

 そのためにどうすればいいか、親鳥は代々受け継いできた生き延びるための決まり事を雛たちにも教えています。

 ところが良い子は食べることしか考えていなかったので、その決まり事を覚えようとはしませんでした。


 十分に雛たちが大きくなったその日、親鳥は雛たちに順番に質問していきます。

 そしてとうとう良い子の番になりました。


「他の兄弟がお腹を空かしていたらどうする?」


「いっぱい食べて大きくなります!!」


「カラスがやってきたらどうするか覚えてる?」


「元気な声であいさつします!!」


 見破られた良い子はかつて自分がそうしたように巣から落とされます。

 良い子は「お母さんが大好きです」と言いながら死んでしまいました。

 他の親鳥たちもこれにならって、自分の巣から裏切り者を突き落とします。


 これを見たお客の鳥たちは、男遊びにはまっていたカッコウのところへ押しかけて責めて突き回します。

 不埒な格好で命からがら逃げたカッコウは、遊びすぎて食べ物の取り方すら忘れてしまっていたので飢え死にしてしまいました。

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