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第64話 その村長、強かにつき

 

 村長の謝罪は二点あった。


 一点目。


 それは、やはり昨晩のコルネットさん誘拐事件についてである。


 クリフサイドの防犯体制は、単純に外部から侵入を狙ってくるモンスターのみを想定しており。


 今回のように、計画的に村全体に眠りの魔法をかけて悪事を働くような盗賊団への対策はできていなかったそうだ。


 まぁ、その点については、コルネットさんを無事に取り返すことができたので、不問に。


 ただ、二点目。


 過疎化が進む一方で、観光資源の不足も著しい山間の村クリフサイド。


 村おこしの一環として、イチかバチか、自分たちで凄腕占い師の噂を立てたらしい。


 クリフサイドの凄腕占い師の正体は、ただ占いが趣味というだけの村のお婆さんだった。


 今までとは事情が異なり、相手が天使さまだということで。

 嘘をついては天罰が下ると思い、真実を打ち明けることにしたのだそうだ。


 ……。


 うん、大丈夫。怒ってない。


「それにも関わらず、ありがたいことに、この村の近くに、観光資源――階層の浅い初心者向けのダンジョンまで作って頂きまして。この度は本当に何と申し上げたらいいか……。そう思いまして、心ばかりのお礼のしるしと致しまして、誠に勝手ながらダンジョンを……」


 全然怒ってないよ。間違いは誰にでもあることだからね。


「“英雄スローの洞窟”と命名させて頂きました」


 やめろーーーーーーーーっ!!


「えっ!? それって、もう決定しちゃったの? 公式採用?」

「はい! 善は急げということで、もうダンジョン管理組合やギルドの方にも申請致しましたので、各方面に通知が行き渡ったあと、じきに世界中に公示されるかと!」

「ひえっ! 世界中!?」


 オフィシャルで、“英雄スロー”なの!?


 それを聞いて、僕は気恥ずかしさのあまり、どうにかダンジョンの改名ができないか、脳内をフル回転。急いでその方法を考え始める。


 誠に勝手がすぎるぞ、村長。


「実のところ、最初の案は、“エンジェルガーディアン・スローと素敵な縫いぐるみヘルサの洞窟”だったのですが、申請書へ記入する際、どうやっても欄からはみ出してしまうので、少し長かったかと反省したんですよ、ホッホッホッ」


 ホッホッホッと笑っている最中、大変申し訳ないのですが。


 “エンジェルガーディアン・スロー”は、(いか)つすぎませんか? “英雄スロー”も大概だけど。


 あと、取り下げの手続をとってくれ! 今すぐにだ!


 っていうか、もう最悪、僕の方が改名してやろうかな……。


「ムググッ、原案の方がイカしてるムグ……」と、改案によって名前を省かれたヘルサが、悔しそうに呟いている。


 その顔面は依然として、退屈そうにしているヴィオラによって、もみくちゃにされ続けている。


 コルネットさんの強烈な回し蹴りが直撃してもヘラヘラしていたヘルサ。

 彼は案外、丈夫な作りなのだ。


 僕がその様子を見て感心していると、クラリィが――


「ダンジョンの登録費用って大丈夫なの? 結構するってボク聞いたことあるけど」

「えぇ、えぇ、えぇ、えぇ。その点もご心配なく! ダンジョンの調査をした際に、入り口付近で眠っていた窃盗団、微睡(スランバー)の残党を二人捕獲致しましたので、そやつらをギルドに引き渡して得た懸賞金で補填(ほてん)させて頂きました!」

「えっ、あっ、そうなんだ……」


 それ見ろ! 質問したクラリィも、若干引き気味になってるじゃないか!


 後に引けないくらい、この村は切羽詰まっているのかもしれないけれど。

 村長の常軌を逸した(したた)かさ。もう“ガンガンいこうぜ”的な迷いのなさ。

 背水の陣なの?


 そんな、やりたい放題のクリフサイドの村長。

 彼は、この後も僕たちに早口でペラペラと謝辞を述べ。

 一通り話し終えると、それはもう憑き物が落ちたかのようにすっきりとした表情で、部屋を去っていった。


 唯一の救いとしては、村長から新たな情報を得られたことである。


「『嫉妬(エンヴィー)』の厄災かどうかは分からないけど、男性がよく(さら)われる地域があるっていう情報は収穫だったね」

「そうだね~。ボク、てっきり無駄足かと思ったよ」

「ここから少し南に下ったとこにある、ジャングルの中の村かぁ……」

「ボク、ジャングルなんて絵本でしか見たことないや」


 僕とクラリィが、よかったよかった、と言い合っていると。


「私、趣味でもいいから占ってもらいたかったなぁ~」と、ヴィオラが残念そうに言った。


 占い師に会いに来たのに、登山だけして帰るというのは、確かに少し味気ない気もする。


「じゃあ、出発する前に、占い師さんのところに寄ってみようか」

「わぁ! そうしようそうしよう!」


 と、僕の提案を聞き、パァっと表情が明るくなるヴィオラ。


 その手元では、まるでヴィオラの喜び具合を現しているかのように、ヘルサの顔が限界まで引き延ばされている。


「ボクも占ってもらう!」

「オレも占ってもらうギギ!」

「じゃ、じゃあ……僕も」


 取り敢えず、スローという名前の運勢を占ってもらおう……。

 今これ、ほんと切実な悩みだから……。


 すると、僕のすぐ隣から、「私も……」というコルネットさんの寝言。


 そんなこんなで。


 なんだかんだ占いが気になるお年頃の僕たち一行であった。

いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。

応援感謝致します。気に入って頂けていたら嬉しく存じます。


次話、『第65話 占い結果は、当たるも八卦』は、明日の朝、午前中の投稿となります。

お楽しみ頂けたら幸いに存じます。

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