第28話 ふわふわモコモコ
この世には、逆らわない方がいい二種類の女性がいる。
一つ目は、何度か前述している通り、ナイスなバディを有する女性である。
これは、問答無用のものであり、口外無用の他言無用である。
心配ご無用、天地無用。無用の用。
そして、二つ目。
これは、少し特殊で、抽象的なもの。
すなわち、どんな自分であっても愛を持って受け止めてくれる女性である。
これを包容力というのか、また母性と呼んでいいものなのか。
未熟者の僕は知らない。まだまだ修行が足りない。
きっと、緑竜ミドリでいうところの後者の存在とは、軽自動車くらいの勢いで向かっていっても、問題無く受け止め――
「よしよし、いい子」
と、優しく鼻先を撫でてくれるコルネットさんのことをいうのだろう。
ミドリは、気持ちよさそうに目を伏せ――
「クロロロン……」
と、甘えた声を上げている。
精神の面でも、肉体の面でも、コルネットさんには絶対に敵わない。
ミドリは、そう理解しているのだ。
っていうか、さっきの衝突は、どういう原理なの?
まるで雲のような白い綿毛の中から上半身だけを突き出し、コルネットさんの身体的強度について考察を深めている僕に――
「スロー、怪我は無い?」
「大丈夫? 今、すっごく飛んだけど」
と、ヴィオラとクラリィが駆け寄ってきた。
「大丈夫、大丈夫~。ここの植え込みに助けられたから!」
「出られそうかな?」
「……これ以上、動けないかも」
「あー、あー。もう、全くスローは」
心配してくれるヴィオラと、呆れているクラリィ。
そんな二人に、よいしょ、よいしょ、と両腕を掴まれ、モゾリと引きずり出される僕。
大きなカブにでもなったような気分で庭園へ無事着陸すると、僕のローブが綿毛まみれでモコモコになってしまっていた。
「危なっかしいんだから……」
クラリィが、僕の手の届かないところに付着した大粒の綿毛を一モコ、二モコ、丁寧に取ってくれている。
「あー! それ、私もやりたい!」
と、ヴィオラがキラキラした目で、それに続く。
僕は、ミドリとコルネットさんの関係を眺めていて、なんだか微笑ましい感情を覚えたけれど、僕たちの様子も、傍目から見れば……。
「スローく~ん! ミドリ、飼育小屋まで連れて帰っておきますね~!」
こちらに向けて、コルネットさんが手を振っている。
お願いしますと言わんばかりに、僕も大きく手を振り返した。
「あっ、こら! スロー! 今動くと!」と、何故か焦っているクラリィ。
気が付けば、僕を中心として、ローブの至るところに付着していた大量のモコモコが舞い散っていた。
辺りを漂うそのふわふわの綿毛に、鼻腔をくすぐられる僕たち三人。
誠に申し訳ないことに、しばらくの間、僕たちはクシャミが止まらなくなってしまうのであった。
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次話、『第29話 七つの厄災と元英雄たち』は、今日の午後、夕方頃の投稿となります。
お楽しみいただけたら幸いに存じます。




