第24話 そんな一日の始まり
目が覚めると、クラリィが僕の布団の中で寝ていた。
しかし、昨晩の内に予想をしておいたので、今朝の僕は冷静さを失っていない。
覚悟をしていたからね。
素数だって、ほら。
2、3、5、7、11、13……。
と、いくらでも言えてしまいそうである。
ちなみに1は素数に入らない。
一定の速度で動く点Pの問題に関してもそう。
精神的ストレスを由来とする夢遊病――これが、僕の解答である。
正解している自信は全く無いが。
それにしても、クラリィの髪は、僕と同じ黒色なのに、その一本一本が細いからか、かなりサラサラしているように見える。
仰向けになっている僕の右隣で、彼女は可愛らしく、すやすやと寝息を立てている。
これで心的外傷の影響による不眠が少しでも解消されているなら……。
まぁ、僕としては喜ばしいものである。
そして、恐らく、この状況も、ノック及び扉を開閉する音を消すチート能力を有するヴィオラが、すぐそばで見ているはず。
大丈夫。
僕は、どこまでも冷静沈着な目覚めで――
おや……? 何かいい香りがするぞ……?
それに、クラリィとは逆の方。
僕の左胸付近に、何か硬いものが当たっているような……。
痛っ!
痛ててててててっ!
何事かと思い、急いで左側を見ると――
ヴィオラが寝ていた。
それも、甲冑を着たまま。
「ヴィオラ! 胸が、胸の甲冑が当たってるから!」
「むにゃ? 胸? ……はっ! スロー、またひわいなこと考えてるのか!」
クラリィが、パニック状態に陥った僕の声で目覚め、勢いよくベッドから起き上がった。
「あー……。みんな、おはよう……」
クラリィに続いて、ヴィオラが柔らかい笑みを浮かべて、ゆっくりと起き上がった。
さっきのいい香りは、まさかヴィオラの……?
「なんだ、ヴィオラかぁー。おはようー」と、眠そうに平然と応じるクラリィ。
こっ、これは、天界ではよくある光景なのか?
僕は、何が何やらさっぱり分からず。
「二人が仲良さそうに寝てたから、私も混ぜてもらおうと思って」と、碧眼をきらめかせているヴィオラと。
「ふー、今日もよく寝た!」と、マイペースに伸びをしているクラリィを。
黙って交互に見ることしかできなかった。
僕の穏やかな目覚めは、いずこへ?
そんな一日の始まり。
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次話、『第25話 眠れる小屋の飛竜』は、今日の午後、夕方頃の投稿となります。
お楽しみいただけたら幸いに存じます。




