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第17話 目覚めと、少しの不安と

 

 クラリィが目覚めたのは、次の日の朝だった。


 余程疲れが溜まっていたのか、やはり彼女は連日の不眠が原因で発熱してしまっていたので、そのまま起こさずに、僕の客室ベッドに寝かせておくことにしたのだった。


 クラリィは、まだ幼いというのに、姫騎士団は働かせすぎだと思う。


 天界城というのは、実はブラックな職場なのかもしれない。


 きっと働き方改革が必要なはずだ。


 今度試しに、目についた天使一人一人に、「まぁ、少し休め」と、堕落のスキルをかけてみようか。


 ……。


 そんなことをしたら平手でバス王に吹き飛ばされるけど、多分。


 それに、一歩間違えれば、特に休息を必要としていない屈強な男天使たちの性欲を解放しかねない。


 そんなの地獄絵図である。ここは天界だというのに。


「う~ん。ここは……?」


 ぶっちゃけた話をすると。


 クラリィが、僕の客室ベッドの上で目覚めたとき。


 僕は、そのそばにある丸椅子に座りながら、ベッドに寄りかかり。


 顔だけをふかふかの中に(うず)めて――


 寝ていた。


「おい! おまえ、スロー! 起きろ!」

「……」

「おいってば!」

「……」

「おい……」

「……」

「しっ、死んでる……」


 半分夢心地で、それを聞いていた僕は――


「おはよう、クラリィ~」


 と、顔を上げないで、モゴモゴと挨拶をした。


「生きてた! おい、起きろ!」


 クラリィに激しく身体を揺さぶられ、まるでスライムのように粘性を有しながら、ゆっくりとした動きで、ベッドからずり落ちていく僕。


 これが本当のスローモーションか。


「あ~、まだ起きたくないんじゃぁ~」

「いや、起きろよ!」


 そのまま(とろ)け切った状態で客室の床に着地した僕は、ベッドの上から僕を(のぞ)き込んでいるクラリィに対して――


「もう、大丈夫かな? だいぶ顔色よくなったね」と、見上げながら言った。


「スロー、逆に大丈夫? その体勢……」と、クラリィは呆れていたが。


 その後――


 クラリィは、疲れや不眠で発熱していたこと。


 一時的ではあるが、僕の堕落のスキルで、監視役としての使命を放棄させられていたこと。


 一晩中、深い眠りについていたこと。


 その間に、師匠であるスーナさんやヴィオラが、心配してお見舞いに来たこと。


 もう堕落のスキルは解いてあるということ。


 スキルの責任を感じて、僕が看病させてもらっていたこと――途中で寝落ちしていたけれど。


 床に寝そべる僕の口から説明される、そういった込み入った事情を、クラリィは真剣な表情で聞いていた。


 と、そのとき。


「……クラリィ、大丈夫? あっ、起きてる!」


 もはや、ノックすらしなくなったヴィオラである。


 彼女は嬉しそうに客室に入ってくると、「せめてタイムアタックであれ」と、心の中でツッコミを入れている僕に対し――


「スローは、そこで何をしてるの?」と、至極真っ当な質問を浴びせてきた。


「ヴィオラ、これはね。隙あらば二度寝を試みようという構えなんだよ」

「病人のボクよりも寝ようとしてどうする!」

「スロー。バス王さまが呼んでるから、二度寝もほどほどにしないとダメだよ?」

「いや、大丈夫。今、一発で目が覚めたよ。ありがとう、ヴィオラ」


 こうして僕たちは、大急ぎで朝支度をして、少しの不安を抱えながら、謁見の間へ向かうことになったのだった。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


次話、『第18話 バス王の頼みごと』は、明日の夕方、またこの時間帯の投稿となります。


お楽しみいただけたら幸いに存じます。

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