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第13話 監視役クラリィ

 

「今日からスローに、監視をつけることにした……」


 バス王は、威厳たっぷりにそう言い放った。


 話を聞くと、やはり転生失敗などというケースは前代未聞だそうで。


 僕の存在に対して、恐れというか、疑いというか。


 天界の繁栄における危険因子となるのではないか、という目で見る者も少なくないとのことだった。


「監視……ですか……」


 そう呟きながら、こっそり振り返って、謁見の間の入り口――巨大な扉の前に待機しているヴィオラを見ると――


 僕の視線に気付いたヴィオラが、こちらに向けて小さく手を振ってくれた。


「うむ。不安がる天界の民たちのためだ……」

「ええっと、それでは監視役は、どなたが……?」

「ここにいるクラリィだ」


 あれ? クラリィ?


 ヴィオラじゃなくて?


 僕は、そんな驚きを胸に秘めながら、初めて聞くその名の持ち主を探った。


 すると、バス王の(かたわ)らに、いつもの通り、姫騎士ショナさん、スーナさん。


 そして、(みなぎ)る性欲に任せて、限りない大人の世界へと旅立っていったセーナさんの代わりに――


 黒髪の少女が立っていた。


「その方が、クラリィさんですか?」

「うむ。いかにも……」

「クラリィは私の弟子。こう見えて姫騎士団の一員なの。とても優秀よ」


 バス王の同意に続くようにして、紫色の法衣を身に(まと)っているスーナさんが、小さな声でそう補足した。


 スーナさんのお弟子さん……。


 言われてみればクラリィさんの髪型は、スーナさんと同じショートボブだ。

 服装はシンプルな黒のローブ。仕立てがよさそうで、無地ながら高級感がある。

 そして、小柄なスーナさんよりもさらに華奢な体躯を、その中に収めている。

 フードがついているので、さながら“黒ずきんちゃん”といったところか。

 手には杖を持っておらず、分厚い魔導書だけを抱えている。

 年齢は、恐らく12歳かそこらだろう。背中に見える羽もまだ小さい。


 そんなクラリィさんは、まだあどけない表情をこちらに向けて――


 ……いや。

 

 (にら)まれている。


 すっごく(にら)まれている!


 それはもう、ほとんど鬼の形相で(にら)まれている!


「ボクは、おまえのこと信用してないんだからなっ!」


 彼女は、僕のことを指差し、怒鳴り声を上げた。


 そりゃ、そうだ。


 せっかく天界にやってきたというのに。


 毎日毎日、部屋に引き(こも)って、一日の大半を無為に寝て過ごし。


 運ばれてくる食事を、それはもう嬉しそうに平らげる不気味な存在。


 そんなやつ、僕だって信用しない。


 それに一度は、エリート集団である姫騎士たちの自制心を崩壊させたというヤバさだ。


 その内一人は、今も帰ってこない。


「ヴィオラのつもりだったのだが……。志願があってな……」と、バス王。


 ヴィオラは僕の第一発見者とはいえ、恐らく一般兵なんだろう。


 なので、その上位組織に所属している姫騎士からの志願ともなれば……。


 ……まぁ、そっちが優先されるか。


 僕は、ちょっぴり肩を落とした。


 しかし――


「ボクが、おまえをキッチリ見張ってやる!」


 という、まだまだ幼さの残る姫騎士クラリィさんの容赦のない挑戦的な態度。


 それを僕は、おやおやおや、と温かい目で眺め始めていた。


 可愛い。もう、酷く可愛い。


 これが父性か。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


本日も夕方頃に、もう一話投稿する予定です。


お楽しみ頂けたら幸いに存じます!

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