表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/193

第12話 No Lucky, No Life.

 

 コンコンというノックの音。


 ――が聞こえるや否や、ガチャリと客室の扉が開かれた。


「おはよう、スロー! もう朝だよ! 起きてる?」


 このスピード感は、間違いなくヴィオラである。


 すでに、あの「姫騎士三人の三大欲求大解放事件」から数日が経とうとしていた。


 僕はといえば、毎日毎日、快適な客室に引き(こも)り――


 ダラダラ、ゴロゴロと、ぐうたら生活をエンジョイしていた。


 ビバ! スローライフ!


 まぁ、どうして僕がこんな素晴らしい待遇でいられるかというと。


 ヴィオラ(いわ)く――


「スローは、この天界の大きな戦力となるかもしれん……だって! バス王さまが言ってた!」


 ……だそうだ。怖い。


 なんというか、客人というより秘密兵器扱いなのだ。


 そして、まだ初日のアレから敵襲は無さそうだったのだが、どうやら戦っている相手というのが、天界を取り込み、軍拡を企んでいる人間族なんだそうだ。


 同じ人間族である僕は、少し肩身が狭い。


 なので、僕はあまり部屋の外を出歩くことができず、こうやってヴィオラが遊びに来てくれるのを楽しみにしているのだった。


 ときに――


 もう一度確認しておくと、この部屋には鍵がない。


 今の僕はというと、シャワーを浴びたばかりで、腰には何も巻いておらず。


 机に置き忘れた着替えの下着とローブを取りに行こうと、部屋を練り歩いている最中だった。


 生まれたての姿で。


「あら、御免(ごめん)あそばせ」


 僕は、どこまでも平静を装い、淑女(しゅくじょ)のような気高さを持って、ヴィオラにそう返したが。


 心の中では、淑女(しゅくじょ)のような悲鳴を上げていた。


 対して、ヴィオラはというと――


「あ、あ、あ……」


 思考回路はショート寸前のようだった。


 そんなに今すぐ会いたかったの?


 僕の純情はどうしてくれるのだ? ミラクルロマンスか?


 こんな逆ラッキースケベがあっていいはずがない!


 これは夢だ! 夢なら早く覚めてくれ!


「あっ、そうそう! バス王さまが、話があるから来てくれって」


 意識を取り戻したのか、自然な笑顔で僕にそう報告してくるヴィオラ。


 彼女の脳内では、僕はもう、()()()()()()()だと、みなされてしまったのかもしれない。


 生憎(あいにく)、僕には、姫騎士セーナさんのように肌を露出する趣味はない。


 が、焦っていると思われるのもなんだか(しゃく)だったから、実にゆったりと、優雅なモーションで着替えを始めた。


 すると、そのとき。


「なんか、スローって色白でいいね」


 いや、余計なことを!


 これは受け手側の問題である!


 場合によっては、女性から男性に対してでも、立派にセクハラが成立するって言うじゃないか!


 第一、僕より色白で、肌も瑞々(みずみず)しいヴィオラがそれを言うんじゃない!


「いいでしょ?」


 ……。


 僕も返答をしくじった!


 何が、「いいでしょ?(クソ爽やかボイス)」だ!


 日に焼けていない色白が美徳とされるのは、女性かヴァンパイアくらいだ!


 反省しろ、自分!


 ヴィオラのは純白、大雪原の色!


 僕のは蒼白、ゾンビ色!


「う~ん。バス王さまの話って、なんだろうねぇ……」


 クリティカルな部分まで完全に目視され、まだ心穏やかではない僕を差し置いて、もうすっかり普段通りのヴィオラ。


 彼女が投げ掛けてきた会話の種に対して、下着姿で猛省中の僕は、もう何も言い返せなくなってしまっていた。


 こんなことになるなら、筋トレの一つでもしておくんだった……。


 生まれてこの方、ずっと自堕落な生活を続けてきたツケ。


 それが、とうとう回ってきたのかもしれない。


 ガリガリで腹筋が割れているなんて不本意すぎる。


 もう、あまり記憶が残っていないけれど、生前から他の追随を許さない程、モヤシ野郎だった僕である。


 死ぬまでに一度は、「筋肉はファッション」などと(のたま)ってみたい人生だったなぁ……。


 そんな思春期真っ只中の僕の筋肉事情をよそに――


 一難去ってまた一難。


 ぶっちゃけありえないバス王との拝謁タイムは、刻一刻と近づいてくるのだった。


お読み頂きありがとうございました。


少しでも明るい気持ちになったり、クスっと笑って頂けていたら嬉しく存じます。


次話、『第13話 監視役クラリィ』は、明日の午前中に投稿する予定です。


新キャラが登場します! 黒髪ショートの魔法使い!


ゆるゆるな雰囲気の異世界コメディーですが、気に入って頂けていたら幸いに存じます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▲応援いただけますと、大変励みになります!▲
 
▼みなさまのご感想、お待ちしております!▼
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ