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第二回 ―補講―


 ……え? 補講? 今回も、ですか?


 三人称を書くコツを教えろ? 無料で?


 ちょっと待って下さいな、こちとら、お客様からいただいた数少ないチョコを堪能している最中で……って、ああもう分かりましたよ、分かりましたから椅子投げるなってば。


 うーん、そうですねえ……。


 まず――というか究極的に、マネしろ、というのはあるかと思います。

 つまり、読んでて「いいな」と思った三人称の小説をマネしてみるわけですね。何なら丸写しとかでもいいんで、結構徹底して。

 パクりって言い方すると印象悪いですが(実際パクりはダメですが)、マネをする、というのは小説に限らず、色々な芸、技において大事だと聞きますし。


 実際私も、最初はそうして小説の書き方を覚えましたし。中学生の頃。

 あとはまあ、延々独学でやって来たわけですが……一応、大学すら行けてない私でも、これぐらいの文章力を身に付けることは出来ました。


 ……なので、習うより慣れろ、慣れるために倣え、を実践しまくるといいんじゃないかな、ってわけです。

 そうして、構成の流れというか、思考のもっていき方のようなものを身に付ければ、あとは自分なりのやり方というのも見えてくると思います。


 さて、しかしこれだけだと、私自身は何も言ってないのと同義ですねえ……ふむ。

 いや、それでもいいや、とは思うんですけどね? こんなのまさしく個人の裁量次第、なんですから。

 なので、うーん……もうちょっと具体的な、三人称の文を、よりそれっぽく見せるためのコツを一つ。


 ――『同じ言葉を連続しない』


 これについては、実のところ一人称でも同じことが言えるので、いずれ講座のお題に挙げるかも知れませんが……。

 じゃあなぜ今それを持ち出すかというと、三人称で書いた場合、その見苦しさが一人称のときより圧倒的に幅を利かせるからです。目に付きやすいからです。

 一人称なら、語り手の個性だとか、話し言葉だから、とかの理由でごまかしが利いたところが、三人称だとモロにさらけ出されるからです。

 えー、どういうことかと(極端な)例を挙げれば、「言った」「思った」「見た」「した」「だった」「しかし」「そして」とかの乱発ですね。


 では、例文を書いてみましょう。



       *


 朝になった。ボンクラは目を覚ました。

 目を開くと天井が見えた。窓を見ると、窓の向こうに太陽が見えた。

 時計を見るともう起きる時間だったから、ベッドから起きた。

 タンスを開けて、しまってある服を取り出して、パジャマを脱いで、着替えた。

 そして、歯を磨こうかと思った。しかし、お腹が空いていると思ったし、歯を磨くのは後にした方がいいと思ったので、朝ご飯を食べようと思った。

 しかし、パンを焼くのに時間がかかるな、とも思った。しかしパンを焼く時間ぐらいはすぐだと思ったから、パンを焼くことにした。

 そして、ボンクラはパンを焼いた。そして、食べた後に歯を磨いた。



       *


 えーと……。

 なんやコレ、超前衛的な散文詩か! 自分で書いててなんやけど!


 てゆーか、む、ムズかしかった……思った以上に。そしてそのくせ、思った以上に例文としてのデキは良くない……。

 まあいいか。

 ともかく、さすがにここまで極端なダメ文章は無いと思いますが……すいません、私にゃコレが限度です。あああ、書いててイライラしたぁー……。


 なんて言うか、『同じ言葉がうんぬん』どころではない、ツッコミどころ満載の駄文になりましたが……同じ言葉が続くと、三人称は特に見映えが悪い、ということについて、少しはご理解いただけたかな、と思います――思いたい。


 いやまあ、私なんかが言わなくても、皆さん分かってますよね? ね?


 ……なので、見直し、改稿をする際は、その辺特に気を付けましょう。

 どうしても同じ言葉、同じ表現を使いたいときは、『同じような』言葉で立て替えて、表現を散らすといいですよ。

 そうすることで、自分の中の『言葉の引き出し』も増えていくでしょうしね。



 さて――と。じゃあ、これを改稿してみましょうか。

 まずはレベル1……というか、とりあえず、件の繰り返しだけは気を付けて直した形。




       *


 朝になった。ボンクラは目を覚ました。

 瞼を開くと天井が見える。

 そのまま窓へと視線を移すと、射し込む朝日に目が眩んだ。

 時計を確認すると、もう起きる時間だった。ベッドから足を降ろす。

 そのままパジャマを脱ぎ、タンスにしまってあった服に着替える。

 その後、歯を磨こうかと思った――が、何よりお腹が空いていたので、先に朝食を摂ることにした。

 パンを焼くのに時間がかかるな、という考えも頭を過ぎったものの、大した時間でもないのだから、と思い直し、準備に取りかかる。

 そして、熱々のトーストを平らげて満足したボンクラは、あらためて、後回しにしていた歯磨きを始めるのだった。



       *



 さて……いかがでしょうか。

 まあ、基本文が結構ムリヤリに言葉を重ねたものなんで、ちょっとピンと来ないかも知れませんが……。

 それでも、こうやって、同じ言葉を使うような表現を意識して他の言葉に置き換えてやると……大分、小説っぽくなってきた気がしませんか? しますよね?


 ――うんうん。

 えー、では、今回の補講はここまでということで。


 他にも色々とツッコミどころは残ってるでしょうが、いちいち語ってたら長くなり過ぎて鬱陶しいだけだと思いますので。

 他の事柄については、また別の回で語るとしましょう……機会があれば、ですが。


 あ、今回も補講なんで、チョコは結構ですよ。タダです。お得ですねー。








 ……え? レベル2以上の直しはどんな感じになるか、ですか?


 うーん……。

 じゃあまあ一応、最後に、もうちょい気合い入れて直した文を載せておきますか。

 何の役に立つかは分かりませんけど。




       *



 ――朝が来た。

 自分のベッドで目を覚ましたボンクラは、そのままぼーっとしばらく、か細く陽の光が映り込む天井を見ていた。

 このままだと、二度寝してしまうかも知れない……。

 寝惚け眼を擦りつつ、枕元の目覚まし時計を引っ掴む。

 ……どうやら、あと1分遅ければコイツに叩き起こされていたようだ。

 つまり、良いタイミングだったと言える――二度寝が許されるほどの余裕が無いあたり、幸運とまではいかないだろうが。

 得とも損とも取れない、曖昧な気分を抱えたままベッドを降りると、パジャマを脱ぎ捨て、適当な服に着替える。

 タンスにしまってあるのは、どれも同じような服ばかりだ――わざわざ時間をかけて選ぶほどのものでもない。

 いつもなら、このまま洗面所で先に歯を磨くボンクラだったが、今朝は空腹感に負けた。

 食べてから磨いた方がキレイになるし……などと、誰に対してか分からない言い訳を頭の中で並べ立てながら、僅かの時間も惜しむようにトースターに食パンを放り込む。

 そして、待つこと数分。

 その間に用意しておいた、バターととっておきのマーマレードを塗りたくり……文字通りにむさぼる。かっ食らう。

 毎朝のルーチンを曲げさせるほどの胃袋の欲求は、そうしてようやく落ち着きをみせた。

 ……あのマーマレードはもったいなかったかな……。

 ボンクラが、ふとそんな後悔を覚えたのは――あらためて洗面台に立ち、歯磨き粉の強いミントに鼻をくすぐられたときだった。



       *



 ……と、こんな感じでいかがでしょうか。

 とりあえず、それっぽくは仕上がってると思うんですが。

 まあ、探せばいくらでも粗が出るでしょうが、そこはそれ、オマケみたいなもんだってことでご容赦下さいな。





 ではでは、今回はこれぐらいで失礼いたしますー。





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