第二回 『三人称も書いとけ!(そう嫌わずに)』
……はい、どうも。
好評でも何でもないので、こうして第二回を開くことにしました。
ええ、来たのがあなた一人でもやるこたやりますんでご心配なく――って、いや、「やる」って言うほどのことは「やらない」んですけどね今回も。
受講料はやっぱりチョコです。置いてって下さい糖分。
こんなこと書きながら既にしてチョコ食ってますが、どうぞ気にせず。
……あ、ウイスキーボンボンとかやたらビターなヤツとかはダメですよ。この作者、根っからの子供舌ですからね。甘いのでお願いします。
ではでは、まずはお約束の前置きから――。
私が述べるのは「当たり前」かつ「役に立たない」ことなので、そこのところをご留意下さい。
加えて、『小説の書き方は人それぞれ』が大前提。
つまり、私は別に他の人にケンカ売ってるわけじゃないですからね。コレ重要ですからね。覚えておいて下さいよ? お願いしますよ?
――えー、それでは本題に入りましょう。
今回のお題は……。
『三人称を書け、蔑ろにするな』
……と、いったところでどうでしょうか。
まあ、言いたいことはほぼお題のまんまです。
ハッキリ言って三人称は、「難しい」やら「ウケない」やらで、特に最近は忌み嫌われてる書き方だと思います――私の実体験としても。
でも……文章力を鍛えるなら、三人称は避けては通れない道だと思うんですよね。
あ、もちろん今回も、一人称がダメだとか言うつもりはまったくありませんよ? 私だって一人称で何作か書いてきましたし。
何より一人称は、書きやすい読みやすいという圧倒的な利点がありますからね。
執筆活動の入門としてまさにピッタリ。これで文章に慣れていく、というのは実にスムーズだと思います。
……ですが。それが逆に一つのワナとも言えるわけでして。
あらためて言うと、馬鹿にしているのかと怒られそうですが……。
一人称は、その主体となる個人の視点でしか語れません。当たり前ですが。
状況も、心情も――基本的には、その個人の『主観』になります。良くも悪くも、それ以上は語れませんし、語っちゃいけません。ルールがどうこうというよりまず、読者が混乱しますので。
そしてあくまで個人の視点という形なので、地の文を、セリフ感覚で書くことが出来る、という面もあります。
これが、特に初心者の方には大きいでしょう。飾りっ気なく、普段遣いに近い言葉で物語を書くことが出来るのですから。
ですが、これこそがワナです。
等身大で伝えやすいからといって、話し言葉の延長だけで文章を構成していて、表現が上手くなるわけがありませんので。――分かりますよね?
だって、もしそうなら、友達といつもお喋りしている学生さんなんて、みーんな文豪ですよ? けれど、むしろ多くの学生さんが、小説どころか読書感想文ですらまともに書けません。
……つまりは、そういうことです。
さて、こう言うと、「一人称の素晴らしい文章もある」「一人称でしか出来ないこともある」といったご意見が出るでしょう。
……ええ、ごもっとも。まったくです。それを否定する気はまったくありません。
ですが――。
それを書ける人、使いこなせる人は、三人称でも小説が書ける人です。
どうしてかって?
三人称は『主観』ではなく、基本『俯瞰』でシーンを捉える必要があるからです。
つまり、主観による平面的なものでなく、もっと奥深く立体的にそのシーンを想像しなければならないからです。
主観なら個人からの視点で描くだけで良かった世界を、さらに広く、色んな角度から、しかも効果的に表現しなければならないからです。
それを踏まえた上で使うからこそ、その一人称には深みが生まれます。一人称という『主観』だからこそ――視界が制限されているからこそ、それを利用しようという『技巧』に繋がります。
――と、いうわけで、お題に戻ります。三人称を書け、蔑ろにするな、と。
一人称を書くならなおのこと、「三人称なんてどうでもいい」では上達は無いと思うのです。
もちろん、得手不得手、慣れ不慣れはあるでしょう。
ですが、書けないはずはない。
あなたの中に、その物語の光景、登場人物たちの心があるのなら、間違いなく。
だって、私小説ならともかく、それらすべてがあなたの想像である以上、それはあなた自身ではなく、あなたが『客観的』に生んだものですからね。
それをあらためて、『客観的』に描き出す。それが三人称の出発点です。
だから、あなたが文章力、表現力を向上させたいと思うなら、三人称を書くことに慣れておくようオススメします。
間違いなく表現の幅は広がりますし、ムダになることはありませんので。
……ああ、もちろん、「向上させたいなら」ですよ?
今のままでも充分ウケてるし、邪魔になりそうだからいいや――ってな人は、こんな駄文、早々に忘れて下さって結構です。
実際、売れてナンボのこの世界、正義は間違いなくそちらにあるんですから。
――はい、なので……。
今回もやっぱり、「当たり前」で「どうでもいい」、かつ「役に立たない」講座となりました。
けれども、一応私だって多少の時間は使ってコレを書いたわけですし。
そしてあなたも、こうして見て(聞いて)しまったわけですし……。
はい、受講料のチョコはちゃんと置いてって下さいねー。
ください糖分、置いてけカカオポリフェノール!