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第六回 ―補講―


 どうも皆さん、ボンクラです。

 今回も、このような僻地にお運びいただきありがとうございます。


 さて……通例となった補講の時間……なのですが。


 ぶっちゃけまして、今回は補講を無しにしようかとも思いました。


 なぜなら、本講のお題にしました『流れ・リズム』は、あまりに個々人の好みやクセに拠るところが大きいと感じたからです。


 つまり、明確に「こうした方が良いんじゃ?」と言いづらいからです。

 私が良いと思ったものが、皆さまにとっても良いとは限らないからです。

 そして、明らかに流れを阻害する要素となると、基本的に『誤字・脱字』といったところが原因であることが多く……そうなると、前回の『見直し・手直し』と被ってしまうからです。


 ……ですので。


 何だか予防線を張るようですが、今回も一応例文を挙げたりするものの、『今まで以上に』私の主観に拠るため、皆さまにおきましては「納得がいかない」となる可能性がより高いかも知れません。


 そこのところ、ご留意いただければ、と思います。いやホントに。





 ……さて、では今回の例文ですが……。


 またゼロから作っても良かったのですが、せっかくなので、


 『文章密度が高くても流れは作れる』


 ……といったところをちょっとでも実感していただければと、拙作『畢罪(ひつざい)の花』から、重〜い文章を引っ張ってきました。


 あと、さすがに文章を載せるだけだと芸がなさ過ぎるので、一応――。


 「あなたならどこに『、』を置くのがいいと思いますか?」


 ……みたいな形にしてみました。



 なので、最初の例文はワザと『、』を増やして付けています。

 これで良いと思うのならそれも良し、「ここは無い方がいいなあ」とか、逆に「ここにはあった方がいい」とか、ご自由に添削しながら目を通してみて下さい。




     *      *      *



 その広い廊下は、材質こそ、最新の特殊鋼によるものながら、細部に至る、名工の精緻な装飾により、芸術としての美しさばかりでなく、緑あふれる並木道の、生命の躍動感すら、備えていた。

 磨き抜かれた、大理石のような光沢を放つ、その並木道を、静かに歩く、一人の少女。


 そこが、並木道であるならば、彼女は、まさしく、花だった。


 小柄で華奢な身体を包み込む、派手ではないが、穏やかで、優美な、若草色のドレス。

 透き通ったザクロ石のような、つややかな赤みのある、素直な、短い髪。

 少女らしい丸みを帯びた顔を彩る、大きく愛らしい、青い瞳と、小さくとも、真っ直ぐに伸びた鼻筋、厚みはないが、引き締められた唇。

 そして何より、彼女がまとった、何者をもなごませる、柔らかで暖かな、優しい雰囲気――。

 それらは、温室育ちの、高貴な麗花でも、大輪を咲き誇る、佳花でもない――野に秘めやかに咲く、愛花ならではの、可憐で純朴な美しさだった。


 しかし、その美しさにも、今は、影が射していた。笑えばさぞ魅力的だろう、という顔容を、物憂いに曇らせ、少女は、大きな窓の前で、足を止める。

 そして、ガラスの向こうに広がる夜景、それそのものに、すがり付くように、小さな手を、そっと、置いた。


 ここが、相当な高所であるために、広がる街の灯りは、ことごとくが、彼女の眼下だった。


 だが、水面が映した星空、すべてを手に入れたかのような、その美しい光景でも、彼女の表情が、やわらぐことはない。

 それどころか、むしろ、憂いを、さらに助長させる結果に、なったのだろうか。

 その小さな唇からは、彼女も、そうと気付かないうちに、吐息が一つ、漏れ出ていた。




     *      *      *



 ――はい、お疲れさまです。


 では続きまして、私なりの――まあ、一応の完成文です。



     *      *      *



 その広い廊下は、材質こそ最新の特殊鋼によるものながら、細部に至る名工の精緻な装飾により、芸術としての美しさばかりでなく、緑あふれる並木道の、生命の躍動感すら備えていた。

 磨き抜かれた大理石のような光沢を放つその並木道を、静かに歩く、一人の少女。


 そこが並木道であるならば、彼女はまさしく花だった。


 小柄で華奢な身体を包み込む、派手ではないが穏やかで優美な若草色のドレス。

 透き通ったザクロ石のような、つややかな赤みのある素直な短い髪。

 少女らしい丸みを帯びた顔を彩る、大きく愛らしい青い瞳と、小さくとも真っ直ぐに伸びた鼻筋、厚みはないが引き締められた唇。

 そして何より、彼女がまとった、何者をもなごませる、柔らかで暖かな優しい雰囲気――。

 それらは、温室育ちの高貴な麗花でも、大輪を咲き誇る佳花でもない――野に秘めやかに咲く愛花ならではの、可憐で純朴な美しさだった。


 しかしその美しさにも、今は影が射していた。笑えばさぞ魅力的だろうという顔容を物憂いに曇らせ、少女は大きな窓の前で足を止める。

 そして、ガラスの向こうに広がる夜景、それそのものにすがり付くように、小さな手をそっと置いた。


 ここが相当な高所であるために、広がる街の灯りは、ことごとくが彼女の眼下だった。


 だが、水面が映した星空すべてを手に入れたかのような、その美しい光景でも、彼女の表情がやわらぐことはない。

 それどころかむしろ、憂いをさらに助長させる結果になったのだろうか。

 その小さな唇からは、彼女もそうと気付かないうちに吐息が一つ、漏れ出ていた。




     *      *      *



 さて――いかがでしょうか。


 繰り返しになりますが、個人の感覚に拠るところが大きいと思いますので、「上の例文の方がいい」と思われるなら、それもまたアリです。


 まあ、上の方はだいぶブチブチ切りましたんで、上の方そのまんまがいい、ってことは多分無いと思うんですが……。


 もし、「下の方がリズムがいい、流れを感じる」と思っていただけたなら、それに越したことはありません。

 ちょっとした参考にでもしてもらえれば何よりです。






 ……と、いうわけで、今回の補講はこんな感じになってしまいました。



 なんかもう、この補講自体が蛇足だったような気もしますが……。


 まあ、よくよく考えれば、そもそも「役に立たない」かつ「当たり前のこと」がモットー(?)のボンクラ式ですので。ね?


 「こんなモンだろ」と、笑い飛ばしていただければ幸いでございます。



 ――それでは……。

 皆さま、特にグダグダな今回もお付き合いいただき、ありがとうございましたー。





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