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第五回 ―補講の続き 《答え合わせ》―


 はいどうも皆さん、ご存じボンクラです。いつもありがとうございます。


 今回の補講は皆さんお待ちかね(?)、前回の答え合わせになりますー。



 ……というわけで、ダラダラとムダ話してると、


「早うやらんかい、ワレ!」


 なんて、怖いお兄さんが出てきて怒られそうなので、さっさと進めます。



 ではでは……こちらが『間違いの無い』例文になります。

 まずはご自分でチェックしてみたい、という方は、どうぞこれと比べてみて下さい。



          *


 地学の授業中……。

 ボンクラの机に広げられているのは、他のクラスメイト同様、教科書とノートだ。

 しかし――そのノートを埋めている言葉は、教師が黒板に書き連ねているものとは何一つ一致しない。


 それもそのはず、ボンクラが書いているのは小説だからだ。


 いつものことである。――というか、ボンクラは高校入学以来、あらゆる授業においてノートを取ったことがない。

 授業のノートを提出するよう言われてもお構いなしだ。

 授業内容を書き写す代わりに、ひたすら小説のネタを、展開を考える。そして書く。

 そして今日のこの時間もまた、息抜きに授業を聞いたり、眠ったりしながらも、やっぱり小説を書き続けていた。

 ほとんどの先生は当然のようにいい顔をしないが、この地学の先生は案外寛容だった。

 いわく、「授業を理解出来てるなら好きにしろ」と。

 そして実際ボンクラは、テストの点は良かったし、授業の邪魔をするわけでもなかったので、先生の注意や干渉を受けることも少なく……ゆえに地学は、小説に没頭出来るお気に入りの時間だった。


 今取りかかっている、ノート数冊に渡って続いてきたファンタジー小説が、まさにエピソードの佳境に差し掛かっているため、自然と執筆にも熱が籠もる。

 しかし手書きなので、表現が熱意に追い付かなかったり、書き損じたりして、むしろ消しゴムはいつもより頻繁に活躍しているのでは、といった感じだった。

 同じ所を二度三度と、書いては消しを繰り返すのも、そう珍しいことではない。

 もどかしい。なかなか納得のいく形で前に進んでくれない。


 『……え? どうしてキミたちが……こんなところに!?』

 『その説明は後よ! もう……ホントに心配したんだから……!』


 盗賊団が占拠する広大な廃城で、主人公と仲間が再会するシーンを描きながら、ふとボンクラは手を止める。

 黒板に書かれた図を元に、宇宙の広さを説明する先生の言葉が、ふと、脳内で展開している物語に重なって見えた。


 ――さすがにこのままだと、彼らが遭遇する確率は、それこそ天文学的に低い……?

 もうちょっと誘導するようなシーンを挟まないと、ご都合主義過ぎるかな……?


 これまでの流れと、ここから先の展開――。

 その二つについて思いを巡らせ、どういったシーンを挟めば、彼らの出会いに納得のいく整合性を持たせ、かつ前後のストーリーに矛盾を生じないかを考える。

 ざっと思いつくアイデアを当てはめては、どうにもしっくりこなくてボツにする――それを何度も繰り返していると、何だかボツにするためにアイデアを出しているような気になってくる。

 考えれば考えるだけ、何を思いついても気に入らなくなってくる――。


 完全に筆が止まり、顔を上げたボンクラ。

 その目が、ちょうど誰かを当てようとさまよっていた先生の視線とぶつかった。

 当然のように指名され、いつの間にか黒板に書かれていた質問を繰り返される。


 はっきり言って、小説に集中しすぎてまったく聞いていなかった。

 しかし、質問の内容は理解出来るのだし、そもそも教科書はちゃんと今日の授業のところで広げられている。

 あとは、それらを照らし合わせて、少し考えれば分かることだ。計算問題になったりすると、また話が違ってくるが――授業の中で、『日本語』で質問されて『日本語』で答える問題なら、考えれば分からないはずはない。少なくともボンクラはそう思っている。

 そして実際、これしかないと導き出した答えは正解だった。

 先生は満足そうに頷き、ボンクラがまったく聞いていなかったことには気付いていただろうに、何も言わずに授業に戻る。

 一方、ボンクラもまた――。


 ――そうか、そのテがあった。前の章のあの話を膨らませれば……!


 問題に答える過程で、ピッタリとはまるアイデアを閃いていて……。

 この授業中に形にしてやろうと、勢い込んで執筆に没頭するのだった。




          *


 ……はい、ここまでですね。


 どうでしょう、ご自分で直された方、合っていましたか?



 ちなみに……間違いは、全部で『21』あります。



 うん……微妙に中途半端な数ですね。いっそ20にして、一つにつき5点、とかした方が良かったかも。


 ……まあいいか。


 さて皆さん、どれぐらい見つかったでしょうか?


 では、あらためまして答え合わせに入ります。

 まずは、もう一度『間違いのある』例文を。




          *


 地学の授業中……。

 ボンクラの机に広ろげられているのは、他のクラスメイト同様、教科書とノートだ。

 しかし――そのノートを埋めている言葉は、教師が黒板に書き連ねているものとは何一つ一致しない。


 それもそのはず、ボンクラが書いているのは小説だからだ。


 いつものことである。――というか、ボンクラは高校入学以来、あらゆる授業においてノートを取ったことがない。

 授業のノートを提出するよう言われもお構いなしだ。

 授業内容を書き写す変わりに、ひたすら小説のネタを、展開を考える。そして書く。

 そして今日のこの時間もまた、息抜きに授業を訊いたり、眠ったりしながらも、やっぱり小説を書き続けていた。

 ほとんどの先生は当然のようにいい顔をしないが、この地学の先生は案外肝要だった。

 いわく、「授業を理解出来てるなら好きにしろ」と。

 そして実際ボンクラは、テストの点は良かったし、授業の邪魔をするわけでもなかったので、先生の注意や干渉を受けることも少なく……ゆえに地学は、小説と没頭出来るお気に入りの時間だった。


 今取りかかっている、ノート数冊に渡って続いてきたファンタジー小説が、まさにエピソードの佳境に指し掛かっているため、自然と執筆にも熱が籠もる。

 しかし手書きなので、表現が熱意に追い付かなかったり、書き損じたりして、むしろ消しゴムはいつもより頻繁に活躍しているのでは、といった感じだった。

 同じ所を二度三度と、掻いては消しを繰り返すのも、そう珍しいことではない。

 もどかしくい。なかなか納得のいく形で前に進んでくれない。


 『……え? どうしてキミたちが……こんなところに!?』

 『その説明は後よ! もう……ホントに心配したんだから……!』


 盗賊団が占拠する広大な廃城で、主人公と仲間が再開するシーンを描きながら、ふとボンクラは手を止める。

 黒板に書かれた図を元に、宇宙の広さを説明する先生の言葉が、ふと、脳内で展開している物語に重さなって見えた。


 ――さすがにこのままだと、彼らが遭遇する確立は、それこそ天文学的に低い……?

 もうちょっと誘導するようなシーンを挟まないと、ご都合主義過ぎるかな……?


 これまでの流れと、ここから先の展開――。

 その二つについて思いを巡らせ、どういったシーンを挟めば、彼らの出会いに納得のがいく整合制を持たせ、かつ前後のストーリーに矛盾を生じないかを考える。

 ざっと思いつくアイデアを当てはめては、どうにもしっくりこなくてボツにする――それを何度も繰り返していると、何だかボツにするためにアイデアを出しているような気になってくる。

 考えれば考えるだけ、何を思いついても気に入らなくなくなってくる――。


 完全に筆が止まり、顔を上げたボンクラ。

 その目が、ちょうど誰かを当てようとさまよっていた先生の視線とぶつかった。

 当然のように指命され、いつの間にか黒板に書かれていた質問を繰り返される。


 はっきり言って、小説に集中しすぎてまったく聞いていなかった。

 しかし、質問の内容は理解出来るのだし、そもそも教科書はちゃんと今日の授業のところで広げられている。

 あとは、それらを照らし合わせて、少し考えば分かることだ。計算問題になったりすると、また話が違ってくるが――授業の中で、『日本語』で質問されて『日本語』で答える問題なら、考えれば分からないはずはない。少くともボンクラはそう思っている。

 そして実際、これしかないと導き出した答えは正解だった。

 先生は満足そうに頷き、ボンクラがまったく効いていなかったことには気付いていただろうに、何も言わずに授業に戻る。

 一方、ボンクラもまた――。


 ――そうか、そのテがあった。前の章のあの話を膨らませれば……!


 問題に答える課程で、ピッタリとはまるアイデアを閃いていて……。

 この授業中に形にしてやろうと、勢い混んで執筆に没頭するのだった。




          *


 では、これを順を追って直していこうと思います。




 ――1――


 『机に広ろげられているのは、』

       ↓

 『机に広げられているのは、』


 ※ 送り仮名のミスですね。手書きじゃないと起こらない……?



 ――2――


 『言われもお構いなし』

      ↓

 『言われてもお構いなし』


 ※ 「て」が抜けてます。

   慌ててるとやってしまいがち。



 ――3――


 『書き写す変わりに』

      ↓

 『書き写す代わりに』


 ※ 「かわり」違いですね。変化してどうする。



 ――4――


 『息抜きに授業を訊いたり』

      ↓

 『息抜きに授業を聞いたり』


 ※ 「訊」は「質問する、尋ねる」の意味。

   ……なので、この場合はこっちです。



 ――5――


 『先生は案外肝要』

     ↓

 『先生は案外寛容』


 ※ 変換間違いですね。

   先生に「案外大事(肝要)」とかどんだけ失礼だ……。



 ――6――


 『小説と没頭出来る』

     ↓

 『小説に没頭出来る』


 ※ 小説と没頭……何をする気だ?



 ――7――


 『佳境に指し掛かって』

      ↓

 『佳境に差し掛かって』


 ※ なんか合ってそうですが……。

   「さしかかる」はこっちですね。



 ――8――


 『掻いては消しを繰り返す』

       ↓

 『書いては消しを繰り返す』


 ※ なんか怖い……。

   掻きむしってはダメです。



 ――9――


 『もどかしくい。』

    ↓

 『もどかしい。』


 ※ 「もどかしく」と打ってから、「く」を消し忘れたとか。



 ――10――


 『主人公と仲間が再開』

      ↓

 『主人公と仲間が再会』


 ※ 再び出会う、です。

   コンティニューしてどうする。



 ――11――


 『物語に重さなって』

     ↓

 『物語に重なって』


 ※ 単純な送り仮名の間違いですね。

   手書きじゃないと起こらないかも。



 ――12――


 『彼らが遭遇する確立』

      ↓

 『彼らが遭遇する確率』


 ※ 出ました、ホンっトーによく見る間違い!

   確かにしてどうする。パーセント!

   だから、変換機能を信用しすぎるなって注意したのです。



 ――13――


 『納得のがいく』

    ↓

 『納得がいく』


 ※ 慌てたり焦ったりすると、よくこういう間違いをしてしまいますよね。



 ――14――


 『整合制を持たせ』

     ↓

 『整合性を持たせ』


 ※ これはちょっとイジワルしました。

   先の間違いから連続してるのが盲点になるんじゃないかって。

   ……でもいいですか、主題は文章の直しですからね?

   こうしたことは、充分、有り得る話ですからね?

   油断してはいけませんよ。



 ――15――


 『気に入らなくなくなって』

       ↓

 『気に入らなくなって』


 ※ これも、焦ったりしてるとやってしまいかねない間違いですね。

   繰り返しすぎ。



 ――16――


 『当然のように指命され、』

       ↓

 『当然のように指名され、』


 ※ 「指命」でも厳密には間違いではないのかも知れませんが……。

   この場合は「指名」の方が適当でしょう。

   命令ではないし。

   ……でも、「使命」とかにしといた方が良かったかな、とか。



 ――17――


 『少し考えば分かる』

      ↓

 『少し考えれば分かる』


 ※ 単純な脱字、ですね。ついやってしまいがち。



 ――18――


 『少くともボンクラは』

      ↓

 『少なくともボンクラは』


 ※ 送り仮名間違いですね。

   これも、手書きじゃないと起こりづらいかな……?



 ――19――


 『まったく効いていなかった』

       ↓

 『まったく聞いていなかった』


 ※ 用法間違いですね。

   無効化してどうする。



 ――20――


 『問題に答える課程』

     ↓

 『問題に答える過程』


 ※ 変換間違いですね。

   なんかパッと見は合ってそうですが。

   正しいのはプロセスの方です。



 ――21――


 『勢い混んで執筆』

     ↓

 『勢い込んで執筆』


 ※ これもよくある変換ミスですね。

   混ざり合ってどうする。




 ……はい、というわけで、以上21箇所が間違いでした。


 いかがでしょう、納得していただけました?


 いやまあ、納得出来んって言われてもどうしようもないんですけどね。


 とりあえず……少しでも手直しの練習になったり、お遊び感覚で楽しんでいただけたなら……やって良かった、といったところでございます。



 ――ではでは、今回はこの辺で……。


 どうもお付き合いいただきありがとうございましたー。

 また、次回の講座でお会いいたしましょうー。







 ……あれば、ですけどね。





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