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着信音

作者: マフマフ

半年前。

自分のケータイを使って、目の前にある、彼のケータイを鳴らした。


シャワーの聞こえる、狭いワンルームに、


もう、すっかりふるくなったラブソングが流れる。



うれしかった。


それは私が好きだといった曲。


わざわざ探して、設定してくれたんだと思うと。



私も


彼からかかってきたときに流れる曲は、


彼が好きだといっていた曲。


その曲が、テレビや、有線で流れると、

はっとする。


思わずケータイを確認してしまう。

街中の音楽だと、わかっているはずなのに。


目の前にいる人と、メールや電話はしないから、

きっと彼からかかってきた着信音が、

彼の好きな曲だということを、本人はしらない。


彼の着信音が、私の好きな曲に設定されている、

と私が知ってることを、

彼は知らない。


知らなかった。



1ヶ月前


私の知らない曲が鳴った。


彼はケータイを握り締めて、部屋をでた。


かかってきた人ごとに、

音を分けているなんて、

なんて細かい。


彼が帰ってきて、

荒っぽくケータイを投げた。


次の日。


彼が部屋の中を探し回っていた。

ケータイがないのだという。


昨日、使ったのだから、必ずあるはず。



自分のケータイを使って、どこにあるかわからない、彼のケータイを鳴らした。



プルルル、プルルル、プルルル・・・



機械的で、単調で、等閑な音が鳴った。



その音を頼りに、

彼はケータイを見つけた。



それから、

何度鳴らしても


プルルル、プルルル、プルルル・・・


私がどんなに、好きなあの曲を口ずさんでも


プルルル、プルルル、プルルル・・・



あの音聞くだけで、私は不機嫌になった。

でも、彼は私が機嫌の悪さの原因がわからなかった。


彼が、ケータイをおいて、

少し、その場を離れて、

戻ってくると、

私は、悲しくて、苛立ちを隠せないでいるのだから。



気がつくと、

私と彼は


機械的で、単調で、等閑な関係になった。



私は好きだったあの曲が

とても嫌いになった。


そして、彼のことも、

嫌いになった。


それから、

私は一人街中で、

ふいに好きだったはずの曲を

聞くと、

あの時のことを思い出す。


音楽を聞くと、

そのときの思い出がよみがえってくる。



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