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ドライ部  作者: 如月 六
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【6】入学式 (2)


正門をくぐると先程まで日差しに焼かれていた肌を、両端の桜並木に歓迎されてるかの如く木漏れ日となって和らげてくれる。

矢印の書いてある立て看板には講堂までの道順が書いてあり迷うことはないだろう。


「あ、天みてみて!もうサークルの勧誘してるよ」


「ほんとだ。野球部、剣道部.....ポケモン部ってなんだよ」


中庭につづく通路の右手側に並べられた掲示板には部活やサークルの勧誘チラシが貼られている。あたりをよく見ると今立ち止まっている通路の先には第3食堂と書かれた食堂があり、食堂の入り口には今日のおすすめ定食の他に構内マップが貼られている。自然と生徒が集まりやすい場所なのだろう。


「あっ、そういえば吉良先輩が言ってたんだけど、野球サークルだけでも10チームくらいあって、佐奈大リーグっていう大会で競ってるんだって」


「なんかすげぇな。で、肝心のドライ部っていうのはーーー」


掲示板を見渡す限りそれっぽい名前は見当たらない。


「君たち!すでに私のサークルを存じているとは有望な生徒とみた。探しているのはこのチラシだろう!」


他の生徒が少ない為、通常より大きく聞こえるだけだと信じたい。いるよね、声のボリューム調節できないやつ。とりあえず声の方を振り向くと、曇ったメガネで小太りの男がチラシを握りしめてこちらに突き出している。汚い字だが確かに『ドライ部』と書かれているのがわかる。すかさずいちごとアイコンタクト。

『ヤバいやつ、離れろ』

ーーーそりゃそうだ。


すみませんがーーーと話し始めようかとしたその時、小太りの後ろから、


スパーン!!


小気味の良い音を残しハリセンで殴られるデブ。

背後から殴ったのはーーー背中まで伸びた長い黒髪に全体的に整った顔立ち。いや、美貌というべきか。なにより目を引くのは胸の大きさである。服の上からでもわかる、いわゆるボンキュッボン体型。


「ごめんなさい。これ良かったらどうぞ」


「あ、ありがとうございます」


とりあえず受け取ったものの、終始無表情で淡々と話す美人さん。差し出してくれたチラシには『ドライ部』ーーと、端正な文字で書かれてある。カラーペンで色分けされてあり見易い。


「入学式はもうすぐ終わるわ。今から部室に行きましょう」


「えっ、ちょ、待って」


有無を言わさず俺の右手といちごの左手を引っ張りどこかへ連れて行こうとする。

いちごの方を見るとなぜか満更でもなさそうな、いや、それどころか羨望の眼差しを向けてらっしゃる。


「はぁ」


ため息を一つつき腹をくくる。仕方ない。もともと話だけでも聞くつもりだったんだ。予定がだいぶ早まっただけと思おう。

俺は早々に抵抗を諦めていちごと共に連行された。

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