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ドライ部  作者: 如月 六
5/28

【5】入学式(1)


いちごの運転するS15は絶妙なクラッチミートで加速していく。シルビアを社用車にする会社も珍しいと思うが、社長の趣味も加味されてるので仕方ない。


「そういえば、天はなんかサークルとか部活とか決めてるの?」


「うーん...。っていうよりそんな時間ないんじゃないか?」


「まぁ、そうなんだけどさぁ。サークルって言ったら高校の部活みたいに堅苦しくなさそうだからいいかなぁって思って。それになんだかんだで社長も、私と天が興味のあるサークル始めたって言ったら喜んで休みくれるよ」


ニヤリと笑いながらなかなか黒いことを考える社長の娘である。たしかに応援はされるだろう...いや、それどころか言ったら言っただけ休みをくれそうな気がする...。給料は基本的に固定なのに。

うん、ダメだな。


「というわけで却下だ」


「えっ、なにが『というわけ』なの!?」


驚いた反面、本当はわかっていたような声色のいちご。

俺の脳内会議では満場一致で否決だ。

騙すわけではないが社長の良心につけいるみたいで耐えられん。


「でも、天も気に入ると思うんだけどなぁ自動車部...」


「自動車部?」


「おっ⁉︎ 食いついたね?私の自動車部に食いついたね?」


「いちごのじゃないだろうけど気になるネーミングだな。具体的にどんな活動するんだ?」


「えっとねー。車好きが集まって観光とかキャンプとかするらしいよ。他はよくわかんない」


「それだけ?」


「うん。他は知らない」


「なるほど...。まぁ、いちごが興味あるなら話だけでも聞きに行くか」


「さっすが天。話がわかる〜」


話を聞きにいってから決めてもいいし興味がないわけでもない。交友の輪は大事だしな。


「正門の方が駐車場広いからこっちに停めるね」


「そうだな。せっかくだし正門の桜並木通っていくか」


いちごは正門前の交差点を右折し、本線から少し下った駐車場に停めるつもりだろう。大学が所有している駐車場は全部で3ヶ所あり、正門のある北側駐車場、理系棟の近い南側駐車場、学生寮や教務課のある東側駐車場だ。俺といちごは工学部なので、南側駐車場に停める方が近いのだが、入学式は第1講堂で行われるため北側駐車場の方が近い。


「ちょ、天みてよ!ぴっかぴかの180SX!並べるしかないでしょ」


いちごはスポーツカーが好きで、駐車場で見かけると隣に停めたがる子供っぽい一面もある。親娘揃っての癖なので仕方ない。

たしかにレアな車なのは事実として外観の状態もかなり綺麗だ。危なげもなく隣に駐車したいちごは車を降りて180SXをじろじろ見ている。もちろん俺もいちごも180SX自体、初対面というわけではないが、いちご曰く、車のオーナーもとい、ドライバーの愛情がわかるんだと。

皮切りとして、テールレンズやマフラー、ダウンサスを社外のパーツに交換している人はよく見かけるだろう。いわゆる、スモークテールや砲弾マフラー、シャコタンというやつだ。

おっ、いちごが帰ってきた。


「どうだった?」


「まぁまぁの仕上がりね」


「外から見た感じ、そこらの180SXよりは気合入ってるみたいだけど」


「曇りのないクリアテールにローダウン、GTウイング、レカロシートは評価するよ。けどね...」


ま、まさか......


「AT車よ」


「だろうと思ったわ」


いいじゃん、AT。運転が楽で。


「とりあえずこれからどうしよっか。途中からでも式に参加する?」


AT派かMT派の件はもう何回目だよって感じなのでいちごも深くは掘り下げないが、いちごは断然MT派だ。ちなみに俺の答えは『どっちでもいい』だ。いろんな人がいるから自分に合った車に乗ればいいと思う。


「そうだな。雰囲気的に混ざれそうなら参加するか。とりあえず講堂に行ってみよう」


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