【27】十六夜学園 (2)
音楽の授業は苦手です。
先程の山吹さんと清水さんの会話を伺うに厳しい先生なのでしょう。もはや嫌いの域です。
楽器も弾けませんし、人前で歌うのはやっぱり恥ずかしいですから。
外部進学の私は初対面ですが、十六夜学園では、初等部と中等部の授業を兼任する先生がいらっしゃるようで、入学式の日から生徒同士だけでなく先生を巻き込んで和気藹々という感じでした。
在籍する1年4組の教室を出て南校舎の音楽室へと向かう清水さんたちの後に続き、1人で不安に陥ります。入学からまだ4日目の授業初日ですが『友達作り』って難しいです。
到着した音楽室の場所もしっかり覚えておかないと、もし迷った挙句遅刻して教室に入りでもしたら恥ずかしくて死んじゃいます。
「あっ......」
私が気づいたと同時にゴンッと音楽室の入り口に激突する音が響きます。
「だ、大丈夫ですか!?」
急いで駆け寄るも、前を歩いていた清水さんが前方不注意でしょうか、山吹さんの方を向いた状態で側頭部を強打したようです。
防音のためか音楽室の入り口は二重ドアになっており、1つ目のドアを開けると右側には楽器庫と思しき部屋。正面の2つ目のドアを開けると音楽室のようです。
「千誠ちゃん、大丈夫?」
「あたた〜。うん、大丈夫大丈夫。ってあれ、あなたは......」
「あ、えっとすみません。ドアにぶつかるのが後ろから見えたので......」
「ふんっ!」
ーーー行ってしまいました。怒らせてしまったでしょうか。声をかけるべきではなかったかもしれません。じゃあ気づかないふりが正解でしょうか。
念願の初会話でしたが、内容が内容なだけに前進どころか後退。もうダメかもしれません。
ため息をこぼしそうになった時、
「ごめんね、千誠ちゃん、平気だから」
「あ、はい......」
授業が始まると先生の簡単な自己紹介があり、確かに『佐村河内』という先生でした。
厳しい先生には見えませんが、最初の授業はレクリエーションも兼ねて合唱をするとのこと。曲目は挙手で候補を募ったにも関わらず先生が提案した『翼をください』に決まり、なんと清水さんがピアノを弾くことになりました。恒例なのでしょうか、誰も文句を言わず決定した配役に、凛々しい表情で応える清水さんをカッコイイと思ってしまったのは内緒です。
各々自分の席を両窓側に寄せ、教室後方で2列横隊し先生の指揮を待ちます。横隊の後ろ側の列の左端が山吹さんでその隣に私が立っているのですが、お腹の音と思しき『ぐぅ〜』っという音が指揮の先生には聞こえないまでも、並んでいるクラスメートには聞こえているのではないでしょうか。
これ以上お腹を空かさないためか、曲が始まっても山吹さんの声は口をパクパクしているだけで隣の私にも全く聞こえません。
その上、心の中でリズムを感じて口の動きと合わせるならまだしも、間奏の時までパクパクしてるので歌ってないことが丸わかりです。
あっ、今、先生から睨まれました!




