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ドライ部  作者: 如月 六
24/28

【24】慎ましさ?


予想に反して、B棟一階にあるパソコン室が授業登録でごった返すことはなかったのだが、ギンの機械音痴が尋常ではなくかなりの時間をかけてしまった。それでも、老人向けの『楽々スマートフォン』というスマホで日々、機械の練習をしているらしいのだが。


「昼間と夜間で教科書は違うんだな」


「あぁ、昼間と比べて授業時間も短いし、教科書代抑えるためにほとんどがプリントらしい。けど、一般教養科目の教科書だけは昼間と同じ授業だから購入しないといけないんだってさ」


「夜間の生徒って何人くらいなの?」


「夜間学部の定員は20人だったけどどうだろ?」


「ソラたちは夜間学部の工学部専攻ってことか」


「じゃあ夜間学部で文系学部専攻の子もいるのか!可愛い子いたら紹介してくれよな」


テツのお願いは俺もいちごもスルー安定。2人とは長い付き合いなだけに会話が尽きることのないまま昼を迎え、久しぶりに昼飯を一緒に食べたかったのだが、2人とも早速サッカーの練習があるらしくパソコン室を出てすぐに別れた。

少し強めの風が吹いているが暑くもなく寒くもない晴れた天気だ。サッカーも楽しいだろうが眠くなっちまう。


「あ、天、今眠たいって思ったでしょ?」


「ん、あぁ......。それより加藤から何かされたらすぐ教えろよな」


別に恥ずかしい事ではないのだが、図星を突かれたのも歯がゆいので話をすり替えておく。

あながち、いちごに彼氏ができたなんて大地さんが聞いたら仕事どころじゃなくなるだろうからな。

身内だからといってかなりの自由をもらっているんだ、できる限り遊佐家の意向には沿いたい。するとーー


「え...⁉︎あ、その......」


ボボボッといちごは顔を真っ赤に染めうろたえだした。慣れている相手であれば、きちんと目を見て話すいちごだが、俯いたままモジモジしている。か細い声で「うん」と続けるが、さっき加藤に使った体調不良の『でまかせ』が本当になったのかもしれない。緊張もあっただろうし、熱だなこりゃ。


「ありがと......」


ん?

あぁ、これも加藤との一件のことか。見ず知らずの他人じゃあるまいし、お礼を言われるようなことじゃないが。


「そ、それより、お昼食べに行こうよ」


「腹は減ったけど、お前熱あるんじゃないか?体調悪いなら乗せてくぞ?」


熱っぽく頬を染めてるだけで、体調が悪いわけではないのかもしれないが、これから悪化するかもしれない。念のため運転させない方がいいだろう。


「大丈夫......と思うけど、自分でもよくわからない......」


「緊張しただろうし、あんまり無理しないほうがいいんじゃないか?」


「うん......ありがと」


妙にしおらしいのは加藤との一件が大きいのだろうがこちらも調子が狂う。なんというか、従順な小動物みたいで。

いつもこれくらい慎ましかったら良いのに......って何言ってんだ俺は。


なるべくこれ以上何も考えないようにと、無心で駐車場まで急ぎいちごを乗せて会社へと向かった。S15は置き去りになるがやむを得ない。明日にでも取りに来るだろう。


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