【22】テツとギン
教室に戻り改めて席を探しながらさっきの茶髪を横目に見ると、机に座って大声で友人たちと笑いあっている。
腰をかけるべき椅子に土足とは、あまり育ちが良くないらしい。自分の評価を落とすだけだろうけどなぁ。
時計を見ると8時55分。あと5分か......。
「よっ!卒業式以来だな、お2人さん」
「おぉ!」
後方の出入口から入室して席を探していると見知ったツンツン頭とピアス野郎ーーー古川砂鉄と福田銀二。2人とは高校3年間同じクラスだったのだが、まさか佐奈大にいるとは......。
知り合いがいて安心した様子のいちごと丁度空いていた彼らの前の席に座る。
「あれ?テツくんは早大に合格したって聞いてたけど......」
「あぁ、いちごちゃん聞いてくれよ。それがよぉ、母ちゃんに早大に合格したって話したら『都会に出したら帰ってこなくなるから』って理由で出してもらえなかったんだよぉ〜」
「あはは、裕子姉さん、相変わらずテツくんのこと大好きだね」
裕子姉さんとはテツの母親で、俺たちに限らず誰にでも姉さん呼びを徹底しているのだ。本人も相当若く見えるので誰も文句は言わない。それどころか人妻とは知らずにナンパ目的で声をかけたクラスメートまでいる始末だ。
「俺、必死に勉強したのによぉ。ソラにこの事電話したら『今忙しいから少し待って』って言うから待ってたのにそれから連絡なしだぜ?ひどいだろ?」
そういえばそんなことあった気がする。忘れてた俺が悪い......が、俺の声真似なのか顔真似なのかわからないがこいつのモノマネに悪意があると感じるのは俺だけか?
俺のセリフのとこだけ、細めた両目に下顎を突き出しモゾモゾと......違うよな?
「あはは。天のモノマネうまいね」
え?うまいの?
ということは俺普段こんな喋り方してるの?
「そんなことより、ソラ。さっきあの茶髪から声かけられてたろ。栗山のサッカー部だった奴で手が早い事で有名だから気をつけとけよ」
「あ、あぁ、ありがとな」
手が早い......ケンカっ早いってことか?
たしかに、栗山学園といえばスポーツ関係でよく活躍している学校だが、地元の評判はあまり良くない。とにかくガラが悪いことで有名なのだ。
「遊佐も気をつけろな」
「あ、うん。ありがとう、ギンくん」




