【20】ナンパ?
工学部棟の近い南側駐車場にヴィヴィオを停めドライ部のガレージに行くと事前に連絡しておいた紫音さんが待ってくれていた。昨日は遅刻してしまったので余裕を持って登校したのだが、それよりも紫音さんの方が早かったか。
「2人ともおはよう......」
「あ、紫音さん、おはようございます!」
美人でスタイル抜群の紫音さんは相変わらずの無表情だが、待たせてしまったことを怒ったりはしていないだろう。
一応、いちごに続いて挨拶をした後「待たせてすみません」と付け足しておいた。
どうやら紫音さんも用事があったらしく、ついでだから気にしないでいいとのこと。意外と大学生って忙しいのかもしれない。
とりあえず、あまり時間を取らせても申し訳ないのでS15に乗り込みガレージを出る。ゲレンデ以外の車がガレージに入っていないことを見るに誰も来ていないのだろう。
などと考えていたらすぐに南側駐車場に着きヴィヴィオの隣に車を停めるいちご。
昨日に引き続き、無風ではあるが雲が少なく見渡す限り青い空が広がっている。いちごも同意見だったらしく、
「天気良いと学校なんて休んで遊びに行きたくなるよねー」
「同感だけど、学校には行かないともったいねぇだろ」
「そういう意味だと、私ら夜間で良かったと思えない?」
「まぁ、昼間は大体働いてるだろうから遊びには行けないけどな」
「だねー」
昨日、学生証をもらいに工学部棟学生課を伺ったのだが、今日の予定を聞いておいたのが功を奏し迷わず11号館を目指すことができる。ぬこ先輩の通う薬学部は2号館、紫音さんが通う医学部は1号館とのこと。主な必修授業はそれぞれの学部棟で受けるため、11号館が我ら工学部のホームである。
11号館の中に入ってすぐの教室、『1-1』と書かれた教室のドアには『工学部デモ講義教室』と書かれており、中に入ると生徒が数人着席している。黒板にも先ほどのドアにも生徒個々人の席が決められているわけではなさそうなのでなるべく後ろの席。窓側の後ろから3番目にいちごと着席する。3人掛けの長テーブルだが窓側にいちご、真ん中にお互いのカバンを置き通路側の席に俺が座る。
(始まるまであと20分か......)
室内にいる生徒はみんなスマホを操作しているか、机に突っ伏して寝ている。ちなみに全員男。
「受験の時も思ったけど、やっぱ女子少ないよね」
「今のところ、いちごだけだな」
「なんか不安なってきた......」
「大......」
「ねぇねぇ!キミ可愛いね。名前教えてよ」
大丈夫だろ、と言いかけた時後ろから男にしては少し高めの声で話しかけてきた茶髪。




