【17】負けず嫌い
いい加減飽きてきたゲームを辞め、缶ジュースを片手にゲーム機後ろのベンチに座る俺といちご。
5ゲームやって結果は2勝3敗。実車とゲームは違うと分かってはいても、クルマに関することでは些細なことでも熱くなる。クルマ好きの性だろう。
「みんな遅いね」
「そうだな」
いかん。急に現実に引き戻されたことで柚に置いていかれたことが5割増しで寂しい。そもそもなにか怒らせるようなことをしてしまったのか?もしくは何か隠してるのことがバレたか......
「あ、もどってきた」
顔を上げるとこちらに向かいながら笑顔で会話している5人。まちがいなく柚たちなのだが流石に文具屋に1時間ちょっとは長くないか?
「お兄ちゃん、ただいま」
「あ、あぁ、おかえり」
「遅いですよぉー、先輩」
「ごめんね。インク探してもらってたら時間かかっちゃって」
いちごはいつも通りの軽口だが、言葉通りの意味で皆を攻めてる感じは一切ない。先輩たちはそれを分かっているようだが、申し訳なさそうにこちらを見る千誠ちゃんと先程以上に眠たそうにしている、というか目をこすってギリギリ起きてるぐらいの涙ちゃん。勉強法でも教えてもらったのか、柚と千誠ちゃんは先輩2人にかなり懐いたようだ。
柚も怒ってはいないようだが、なおさら拒絶された理由がわからん。
プライズコーナーにある壁かけ時計を見るとすでに5時手前。
「俺の方こそ柚たちの相手を任せきりですみません。けど、涙ちゃんはだいぶ眠たそうだね。もう帰ろっか?」
「はむぅ......大丈夫......」
「少し休憩がてら座ってるから大丈夫だよ。お兄ちゃんたち4人でクルマのゲームしてるの見たいな」
相変わらずの気遣いさんだ。快く受け入れれる話し方にぬこ先輩と紫音さんもやる気満々といった雰囲気。
「ふっ...手加減はしないからね」
「のぞむところですよ......」
「恨みっこなし......」
だんだんと人が増え始めたためおそらく一本勝負になるだろう。たかがゲームなのだがこれはクルマのゲーム。先程のいちごとのバトル同様、全力で勝ちに行かせてもらう。
このゲームでは使い慣れているZ33を迷いなく選択する。
ステージがサーキットである以上、初期位置はランダムだが、俺の前にはおそらくいちご。白のR35、GT-Rはいちごが全力の証だ。
右前には青のBMW、Z4。これはぬこ先輩か?
そして俺のほぼ真横にシルバーのSLK。紫音さんだと考えれば納得がいく。
コースは2周回。カウントダウンが始まり周囲に漂う独特の雰囲気がさらに重苦しくなる。ゲームの特性上2速発進は不可能だが、測ったかのように全員同時に1速。
たとえ素の性能で劣っていようが、自分が負けるとは誰も思ってはいない。
クルマ好きはバカが多いらしいがバカで結構。自分こそが誰よりも愛車を速く走らせることができる。たとえゲームであってもそんな負けず嫌いな生物なのだ、俺たちは。




