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ドライ部  作者: 如月 六
10/28

【10】遊佐自動車


俺と紫音さんが乗っているゲレンデといちごとぬこ先輩が乗っているS15の2台で向かう先はーーー


『遊佐自動車』


と、書かれた自動車整備工場。

言わずもがな、いちごの両親が経営している会社だ。

工場に隣接している4階建てのビルの1階が事務所で、工場正面の駐車場に車を止める。


「実は、私と天はここで3年くらい整備士として働いてるんです。といっても、私の実家なので、社会勉強にはなってないかもですけど」


「ほぇぇ。だからあんなにクルマ詳しかったんだねぇ」


「びっくり...」


「ふっふっふー。では、中にどうぞー」


ご機嫌なのはわかるが何をどう話すつもりなのやら。

ーーおっと、お客さんが来ているようだ。


「どうする?裏から入るか?」


「うーん、見たことないお客さんだねー。失礼のないように裏から入るのがベターかな」


「あれ⁉︎ 学長?」


驚いた声を上げるぬこ先輩。って、え?学長?

ここで4人の視線に気づいた学長(?)はぬこ先輩の言う通り...かどうかはわからないが知り合いではあるようだ。


「ただいまー」


「ただいまです」


「おう!おかえり!」


おそるおそる帰宅を告げるといつもと同じ快活な声で笑顔を向けてくれる社長。

おそるおそるなのはぬこ先輩たちも違う意味で同じなようで、それぞれ「こんにちわ」と挨拶をして入室している。


「おかえりなさい。おや、もう顔見知り...というよりお友達になったみたいですね」


「あ、はい。えーっと、学長さん...ですか?」


「ふふっ。そう畏まらないでください。いかにも、私が佐奈大学学長の星川です」


「伝えてなかったわね。2人が通う大学の学長は私たちの昔からの友人なの」


いちごの母、遊佐桜さんがお盆にグラスを乗せて奥から出てくる。社長と学長が座っているテーブルとは別にある隣のテーブルにグラスを置くので、こっちに座れということなのだろう。先輩たちを誘導し、俺といちごも席に着く。


「まあ、幼馴染だからって不正はダメだからな。お前らにもきらりちゃんにも教えなかったわけよ」


「いえいえ、2人の成績は拝見しましたよ。首席おめでとうございます久我天くん。1点差で天くんに及ばないまでも十分優秀な成績ですよ遊佐いちごさん」


「ところでそっちの2人がさっききらりちゃんが話してた...」


「あぁ、紹介が遅れましたね。こちら、縫川心さんと篁紫音さんです。それと、何回も言いますが、きらりちゃんと呼ぶのはやめてください」


「きらりちゃんはきらりちゃんよ。人のためになることが大好きで、教育には特に一生懸命なきらりちゃんにぴったり」


「......」


「『教育とは教師が持つ知識の光を生徒全員に分け与えること』だったわよね」


「うわぁぁぁぁ!!! それ以上は怒りますよ桜!」


それ以上があるのか...

いちごとぬこ先輩は感極まって涙をこらえてる。似た者同士か。確かに良い話...というか素晴らしい信念だとは思うが。


「まぁ、詳しい話はおいおいしていくとして、他ならぬきらりちゃんの頼みだ。その仕事、俺たちに任せてくれ」


「ありがとうございます。それと、収支に関してはきっちりお願いしますね、桜。大地に任せたらどうせ安請け合いするでしょうから」


「ありがとう、きらりちゃん」


「では、私はそろそろ失礼します。あなたたちも仕事の邪魔はしないようにですよ」


「はーい」


紫音さんはこくりと頷くだけだが、各々の返事を聞き届けて立ち上がる星川学長。

全員で見送るつもりなのだろう。社長たちも立ち上がり玄関を開け外に出る。

見慣れないマークXが止まってると思ったら学長の車だったか。

リヤバンパーには350RDSとエンブレムがついている。

軽快な足取りで工場を後にした学長。


「さてっと。先にお話するか」


事務所に戻る社長。まぁ、なんとなく学長と何を話していたのか察しはつくが、入部した件も含めて話をしなきゃな。


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