湖
空の上には
洸洋たる湖があります
その水は
春先の川のように冷たいのです
両手ですくうと 皮膚の細胞の隙間から
するりと血管の内腔へと沁みこみ 全身へとめぐります
果てのみえない湖面には
いっぽんの水樹が枝をのばしています
その幹ははるか遠い底までつづいていて
どこまでも澄んだ水の中 たたずんでいます
澄んだ水の底には
まっしろな太陽がみえます
燦々と輝くそれは
幾筋もの光の束で 湖面をまばゆく照らします
あいいろの天蓋から湖面へと
星々の鈴の音が舞いおりてきます
音は湖面で一度とまってから
しろい光にとけて湖へと沈んでいきます
空の上の
太陽と星々の隙間には
洸洋たる湖があるのです