県乱武闘!! 石川県VS新潟県〜間に挟まれた富山県〜
原作ファンの方すみません。殆ど原作の要素がありません。
これはこれでお楽しみ下さい。
会話は富山弁てんこもり(山盛り)、同時通訳でお送りします。
石川県と新潟県の闘争の間に挟まれ、漁夫の利を狙う富山県。
しんがいぜん(へそくり)という名のお金を貯め込むことが得意で、雪国特有の耐え忍ぶことになれた県民性を持つ。
その特性を活かし、虎視眈々と裏の覇者を狙っていた。
ここは、持ち家率全国一位の県内のとあるお宅。
おじ:「おっじゃ。よーこらしゃったね!」(次男(ここでは、二番目の男児の甥っ子に言っている)。よく来てくれたね!)
次男:「おじちゃん、まめなけ?」(おじちゃん、元気ですか?)
おじ:「まめにしとっちゃ。そいで、石川と新潟が対立しとるがやと」(元気にしているよ。それで、石川と新潟が対立しているそうだ)
次男:「そいがけ」(そうですか)
おじ:「だらやね」(馬鹿だね)
次男:「共倒れするがやないけ?」(共倒れするのではないですか?)
おじ:「そいがやちゃ」(そうだね)
日本の製薬業界を牛耳り、日本人の健康、命を握っている富山県に逆らうとどうなるか。と、他県を牽制し、売薬さんが諜報活動を行い、様々な情報を握っていた。
次男:「今日は、あんまはきとらんがけ?」(今日は、兄さん(長男)は来ていないのですか?)
おじ:「いまにくっちゃ。そんなあわさいにちんとしとらんと、上がられま」(そのうち来るよ。そんな隙間で大人しくしていないで、上がって)
おば:「やわしくてすまんねー」(散らかっていて悪いね)
次男:「なーん。つかえんちゃ。おばちゃん。これ、おっかがでかいとなったからいくして言うて……どうぞ」(いいえ。かまいません。おばちゃん。これ、妻が沢山実ったから、渡してくれと言ったので……どうぞ)
おば:「あれ、いいがにー。きのどくな。よういろんだきときとなとなわやぜ」(あれ、いいのにー。ありがとう。よく熟した新鮮なトウモロコシだね)
次男:「おばちゃんの、わらびしさには負けっちゃ」(おばちゃんの、若々しさには負けるよ)
おば:「なにゆーとんがけ。さ、ここにでもねまられ」(何を言っているの。さぁ、ここにでも座って)
仏間に移動し、おじちゃん(60代)とおばちゃん(60代)、そしておっじゃ(40代)の三人で絢爛豪華な金仏壇の前に座った。
おば:「あれ、あんにゃー、そんなちんとおつくわいしとらんと、あぐらでもかかれ」(あれ、あなた、そんなに畏まって正座してないで、胡座にしなさい)
おじ:「あんにゃんとこの子らはまめにしとんがけ?」(あなたのところの子供達は元気にしているか?)
次男:「まめにしとっちゃ。この前も、あんまがあんねとおーわとつんだっておわらの前夜祭に行っとったがやちゃ」(元気にしているよ。この前も、長男が長女と次女を連れておわら風の盆の前夜祭に行きましたよ)
おじ:「八尾まで行ったがけー」(八尾まで行ったのか)
次男:「おーわがこわくさなって、お祭り行きたいゆうもんやから、おわらやら曳山やら獅子舞やら麦屋やらこきりこやらにつんだって行かされとるがやと」(次女が知恵をつけてきて少し生意気になって、お祭りに行きたいと言うものだから、おわら風の盆や曳山祭や獅子舞、麦屋まつりやこきりこ祭に連れて行かされているみたいです)
おば:「そいがけー。こきりこいうたら、五箇山ちゃ世界遺産になって、観光客は増えたがけ?」(そうなの。こきりこ祭といったら、五箇山は世界遺産になって、観光客は増えたのかしら?)
次男:「どいがかね? 北陸新幹線も開通して随分経ったがやし、増えたがやないがけ?」(どうですかね? 北陸新幹線も開通して随分経ったのだし、増えたのではないですか?)
おじ:「なーん。あいつらは皆スパイやちゃ」(いいや。あいつらは皆スパイだ)
おば:「ほんとけ!? そら、えらいことやわ」(本当!? それは、大変なことだわ)
次男:「こんめぐらはスパイがおってもこたえんけ?」(この辺りはスパイが居ても平気ですか?)
おば:「こたえんやろうけど、どうするが?」(平気だと思うけど、どうする?)
おじ:「そこなちは、なんちゆうとんがけ?」(あなたの家は、何て言っているの?)
次男:「あんまに聞かんとわからんわー」(兄さんに聞かないと分からないです)
おじ:「あんまがくるが待つけ」(長男が来るのを待つか)
おば:「そうせんまい」(そうしましょう)
――待つこと数十分、あんま(50代)が富子(あんまの妹、おっじゃの姉)(40代)を連れてやって来た。
長男:「遅らとなって、きのどくな。あとまたいに時間食って。富子もつんだって来たちゃ」(遅くなって、すみません。後始末に時間がかかって。富子も連れて来たよ)
おじ:「ああ、あこなちに行っとたがか」(ああ、あそこの家に行っていたのか)
長男:「そいが。あのっさんもとんだことをしてくれたもんやわ」(そうだよ。あの人もとんでもないことをしてくれたものだ)
おじ:「しんきくさいこと残すがは、へくさんぼみたいやわ」(面倒なことを残すのは、カメムシみたいだな)
おば:「本当やちが」(本当だね)
イタイイタイ病で今尚苦しんでいる人達がいる。
イタイイタイ病とは、岐阜県の三井金属鉱業神岡事業所(神岡鉱山)による鉱山の製錬に伴う未処理廃水により、神通川下流域の富山県で発生した公害で、日本初の公害病で四大公害病のひとつである。(https://ja.wikipedia.org/wiki/イタイイタイ病 引用)
次男:「あんまよ。神通のところのじーじがのうなったいうがわ、ほんとけ?」(兄さん。神通のところのおじいさんが亡くなったというのは、本当?)
長男:「さ、だっから聞いたがけ?」(それは、誰から聞いたんだ?)
次男:「義姉さんからや」(義姉さんからだよ)
長男:「あん、だら! ちゃべが! お前んとこのおっかがけなるいわ」(あの馬鹿! おしゃべりが! お前のところの奥さんがうらやましい)
次男:「おっとっしゃ―。義姉さんも親切で教えてくれたんだから、堪忍して」(怖いわー。義姉さんも親切で教えてくれたのだから、許してあげて)
おば:「それにしても、あいそむななったぜ。かわいさげに……」(それにしても、寂しくなったね。可哀想に……)
おじ:「暗い話はそんくらいにして、やわやわ食べにいかんまいけ」(暗い話はそのくらいにして、そろそろ食べに行こうか)
着いたのは、富山の名産品を扱う一件の小料理屋。
店主:「白えびもホタルイカも時期やないから、とりあえず昆布締めと鱒寿し、かまぼこを食べてくたはれ」(白えびもホタルイカも旬ではないから、とりあえず昆布〆とます寿司、かまぼこを食べて下さい)
おじ:「お酒は有り過ぎて選べんが。おすすめはどれけ?」(お酒は有り過ぎて選べないよ。おすすめはどれ?)
店主:「これかね?」(これですかね?)
おじ:「じゃ、それで」(では、それで)
富子:「か、どしたんけ? ねぐさないけ?」(これは、どうしたの? 腐って臭くないか?)
次男:「黒作りちゃ、こんなもんやちゃ」(黒作りは、こんなものだよ)
富子:「そやったっけ? ちょっとはならかしてくれんけ?」(そうだったかな? ちょっと離してくれない?)
店主:「この五箇山のとっぺも食べて」(この五箇山豆腐も食べて下さい)
富子:「そのとっぺ、いそて」(その豆腐、(お皿に)取って)
次男:「こでいいが?」(これでいい?)
富子:「もっとでかいといそえんがけ? はがやっしゃ」(もっと沢山入れれないの? 歯がゆいわ)
次男:「あんねはやかましいのー。まっでねねやねか」(姉さんはうるさいなー。まるで子供みたいだね)
富子:「いつまでもせせっとらんと、せーだいて」(いつまでもいじっていないで、早くして)
次男:「ほんとせわしない」(本当にうるさい)
店主:「大門素麺と氷見うどんもどうぞ」
富子:「五箇山のとっぺはうまいのう」(五箇山の豆腐は美味しいな)
おじ:「五箇山といえば、スパイ対策はどうすっけ?」(五箇山といえば、スパイ対策はどうする?)
富子:「スパイ?」
次男:「観光客のフリしたスパイが沢山来とるがやと」(観光客のフリをしたスパイが沢山きているんだって)
富子:「そいがけ。おとろっしゃ」(そうなの。恐ろしいわね)
長男:「うちらで見付けられたがは、親父にまたいしてもろたがやけど……」(うちで見つけられた範囲は、親父に始末してもらったのですが……)
おじ:「ほーん。あのきかずなあんまに頼んだがけ? さ、はかいったやろ」(ふーん。あのやんちゃな兄貴に頼んだのか? それは、はかどっただろう)
長男:「そーいったかって、多すぎてどんこもならんわ。きかずでもはかいかんちゃ」(そうはいっても、(人数が)多すぎてどうしようもないよ。やんちゃでもはかどらない)
おじ:「そいがけ。か、飲まんとやっとられんわ! 酒くれま!」(そうか。これは、飲まないとやってられない! 酒をくれ!)
次男:「おじちゃん、そんなに飲んでつかえんけ?」(おじちゃん、そんなに飲んで大丈夫?)
おじ:「つかえん、つかえん」(大丈夫、大丈夫)
店主:「デザートもどうぞ」
おば:「呉羽の梨と入善のジャンボ西瓜け」(呉羽の梨と入善のジャンボ西瓜ね)
富子:「両方、酒飲みにはいっちゃ」(両方共、酒飲みには良いね)
こうして宴も酣となり――
おじ:「はらういわ。そろそろさんにょしてくたはれ」(お腹いっぱいだ。そろそろお勘定して下さい)
富子:「ごめん。財布うしなかしたみたいやわ」(ごめん。財布無くしたみたい)
おば:「さ、どこやったが?」(それは、何処に置いたの?)
次男:「何ゆうとんがけ。どうせわざとうちにおいてきたがやろ?」(何言ってるの? どうせわざと家に置いてきたんだろう?)
おじ:「いいが。今日もおらがだいてやっちゃ」(いいよ。今日も俺が奢ってあげるよ)
富子:「いいがけ? きのどくな」(いいの? ありがとう)
次男:「おじちゃんばっかりさいさいあしめて!」(おじちゃんばっかり毎度当てにして!)
長男:「おじちゃん。おらが出すちゃ」(おじちゃん。俺が払うよ)
富子:「あんまよ。ここは、おじちゃんによばれんまいけ。財布はまたいしとかれ」(兄さん。ここは、おじちゃんにご馳走になろうよ。財布はしまっておいて)
次男:「まったく、あんねはー」(まったく、姉さんはー)
兄弟:「おじちゃん、きのどくな」(おじちゃん、ありがとう)
おば:「さ、行くけ?」(それでは、行きますか?)
おじ:「かえらんまい、かえらんまい!」(帰ろう、帰ろう!)
次男:「あんま、つかえんけ? 身体、かたがっとっぜ? 飲み過ぎやちゃ」(兄さん、大丈夫? 身体、傾いているよ? 飲み過ぎだね)
長男:「なんか、だやなってきた」(なんだか、だるくなってきた)
富子:「いのけるが?」(動けるの?)
長男:「だんないちゃ」(差し支えないよ)
次男:「そうけ? こうりゃくしようか?」(本当? 手伝おうか?)
長男:「あー、やっぱりてきないわ。片貸してくれんけ?」(あー、やっぱりだるいわ。肩を貸してくれないか?)
次男:「つかえんちゃ。……なー、あんま。おらっちゃ、他にもこーやって片貸したらいけんがけ? 漁夫の利を狙うのは、ちごとるきいするが」(構わないよ。……あのさ、兄さん。俺達、他にもこういうふうに肩を貸したら駄目かな? 漁夫の利を狙うのは、間違っている気がする。)
長男:「めーむいたわ。おらによしかかってばっかりだったお前が、一丁前に言うようになったなー」(びっくりしたわ。俺に依存してばかりだったお前が、立派に言うようになったなー)
次男:「よわるようなら、いいが」(困るようなら、(無理しなくて)いいよ)
長男:「なーん。お前はかたいもんやちゃ。ここは越中で、「中」いうがやし、漁夫の利作戦はおいて、つまつま仲を取り持つようにするけ?」(いいや。お前は実直な人間だよ。ここは越中で「中」というのだから、漁夫の利作戦はやめて、少しずつ仲を取り持つようにするか?)
次男:「やんばい。あっかりしたわ」(よかった。安心したよ)
長男:「ああ、ありがたなってきた」(ああ、眠くなってきた)
次男:「ちょっ、こでねぶらんとって!」(ちょっと、ここで眠らないで!)
霊峰立山と天然の生け簀と呼ばれる富山湾に挟まれ、山の幸海の幸にも恵まれた富山県。
そして、名水百選にも選ばれる湧水のように清らかで、南砺のバットのように一本気で真っ直ぐな富山県人。
結局、卑怯な真似は出来ず、漁夫の利作戦は魚津の蜃気楼のようなものとなり、高岡大仏様のような慈悲深さで近県の仲を取り持とうとするのであった。
——が、立山の氷河のように、一部にはかねこりで(氷のように冷たく)、いちがい(融通が利かず頑固)な部分が残っているかもしれない……
お読み下さり、有難うございます。
富山県民の皆様、いろいろ思うところはお有りでしょうが、この作品は、愛ゆえですから温かい目で見て下さい。
他県の皆様も、読みにくくてすみません。
地元民でも、ここまで富山弁を使っている人はあまりいない気がします。
あと同じ富山県でも場所によって方言に違いがあったりするので、これが全てではありません。
この物語は、フィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
私のおすすめの富山の名産など富山に関する情報を、2/23(金)〜3/1(木)の活動報告で紹介しています。
ご興味のある方はお気軽に遊びに来て下さい(*^_^*)ノ