天地がひっくり返る
世界には地の神様と天の神様がいます。
地の神様は先程も言った通り、水の神様だったり土の神様だったり、人々のすぐ隣にいました。けれど天の神様と言えば、空が落ちてこないように世界の天井を支えてくれている空の神様だったり、混沌から秩序を守る夜の女神様だったり、とっても強い力を持った神様たちだけれど、人々に認知されにくい役回りでした。
なので、人々は身近にいる地の神様の方を頼りにしていたのです。
ある時、そんな人々の生活に天地がひっくり返るような出来事が起こりました。
いいえ、まさしく天地がひっくり返ったのです。
真っ暗だった世界に突然、すべてを覆い尽くすほどの光が生まれました。
強烈な光は暗闇に慣れた人々の目に突き刺さり、あまりの痛みに、しばらくの間、何も見えなくなりました。人々は思いました。これは世界の終わりに違いないと。
けれど、光に目が慣れて、飛び込んできた光景に人々は言葉をなくしました。
真っ黒だった世界がどこもかしこも色鮮やかに輝いていたのです。今でこそ、葉っぱは緑、土は茶色、そこら中に咲き誇る花は、赤、黄、ピンク、紫、ひらひらと飛ぶ蝶はその全部を混ぜたような色、といくら言葉を尽くしてもたりませんが、その当時の人々は、そんな簡単な言い回しすらできません。“色”そのものを知らなかったのですから。
人々には何が起こったのか理解できませんでした。
けれど、これだけは分かりました。
世界はこんなにも美しかったのだと。
しばらくすると、一人が頭上を指差して言いました。
『空に大きな星が浮かんでいる!』
指差された方向を見て人々は更にびっくりしました。
それは確かに星のようですが、星の何十倍も何百倍も眩しかったのです。
ずっとは見ていられないほど眩しい星は、人々に向かって言いました。
『私は太陽。空の神と夜の女神の間に生まれ、闇を焼き払い、人を導く役割を与えられた。この身が滅びるまでそなたらを守り、未来を照らし続けよう』
人々は知らず、涙を流していました。
もうこれで、暗闇に脅えながら暮らす日々が終わるのだと。
太陽の神は涙に頬を濡らす人々を見て、こう続けました。
『私は神々の王となった。地の神ではなく天の神を。天の神の中でも私を信仰するように』と。
人々が嫌がる理由はひとつもありませんでした。
こうして地の神の立場は追いやられ、天の神が地上を支配する時代になりました。




