驚愕
本当に驚いた。
まさか……こんなことってある?ってね。
でも心のそこから沸々と湧き上がる喜びを抑えることなどとてもじゃないけどできなかった。
___学校から家へと帰り、インターホンを鳴らした。
………あれ?
お母さんが出てこない。
玄関の外に1人たたずむ私。
お母さん、出かけるなんて言ってたかな。
続けざまに何度もインターホンを押す。
__ガチャ
やっと出てきた。
どうしたんだろう。
「お母さんただいま。昼寝でもしてた?」
お母さんの顔は青ざめていた。
わなわなと震えている。
「どうしたの?」
「ニュース…………あの……さつじ…」
ニュース?穴?ひつじ?
「なに?お母さん。ほんと、どうしちゃったの?熱でもあるの?」
つったったままのお母さんを押して家へ入る。
すると真っ暗なリビングで、ニュースが流れていた。
ニュースなんて難しいものに興味のない私は、スルーして自分の部屋へ入ろうとした。
ところがニュースから聞こえてきた名前に反応した私は、それとなくテレビに目をやった。
ほんとにビックリ。
これが驚愕ってやつ?
テレビに映ってるのは、毎日目にするあの人。
___ではなかったが、なんてそっくりなんだろう。
全てが同じ。
この世のものとは思えない美しさ。
アナウンサーの話に耳を傾ける。
朝霧裕二?
もしかして…やっぱり…。
胸が高鳴った。
うちのクラスの………
だよね?
そうだよね?
すぐさまスマホを取り出す。
LINELINE……
みんなも思ったことは同じだったみたい。
うちのクラスの裏グルの通知が168件もあった。
……裏グルだから、朝霧理沙はいない訳で。
≪ヤバスヤバス(((o(*゜▽゜*)o)))≫
≪なんや、どしたん≫
≪ニュース見てみーや≫
≪おkおk≫
≪うちも見たでニュース^o^≫
≪絶対そうやんな?≫
≪やんな?≫
≪朝霧裕二ゆう人朝霧のお父さんちゃうか爆笑≫
≪お前ゆうかーそれwww≫
≪なんや違うんか≫
≪いや、絶対そうやろ≫
≪(゜o゜;;≫
≪高嶺の花も墜落やなwwwww≫
≪やっぱなんかあるとおもたわ≫
≪あんな完璧なやつおる訳ないもんな≫
≪うーわー、がっかりやわぁ涙≫
≪えーこわいんですけどーwwww≫
≪凶悪殺人鬼の娘ってことやろー(¬_¬)ww≫
携帯の振動は止まらない。
私の笑みもとまらない。
あーあ、やっぱり完璧な人っていないのね。
なんだ、意外に世の中って平等なんじゃないの?
天は二物を与えず?
ううん、違う。
朝霧理沙には天は何物も与えたわ。
けれど奪ったものも大きいってとこかしら。
結局プラマイゼロ?
この状況を楽しんでいる自分がいる。
そんな自分が恐ろしい。
どうしてだろう。
私ってもっと優しくなかったっけ。
もっとその人の気持ちになれる人じゃなかったっけ。
私、どうしちゃったんだろう。
そう思った。
あのね。その訳に気付いたの、それからずっと先の話なの。
ええ、悪かったと思ってるわよ。
でもしょうがないんじゃない?
私だって子供だったんだもの。
元はと言えば悪いのは私たちじゃないわ。
朝霧理沙のお父さんじゃない。
もう過ぎたことだし。
それに、彼女は私たちのなかの誰も手に届かない頭のいい学校に行ったわ。
私が今更気づいたことを、きっとその頭のイイ人たちはわかってるわよ。
結局は才能よね。
まあ中学時代くらい痛い目にあったってよかったんじゃないの?
あはは、冗談よ。
え?わたしが気付いたこと?
言わなくてもあなたはもうわかってるわよ。