第7部 理沙
「朝霧さんはさぁ、お父さん似なんだよねぇ?そうでしょぉ?」
心臓が飛び出してしまいそうだった。
苦しい。
息ができない。
鎖に締め付けられる。
やめて…やめてやめてやめてやめてやめて!!!
言葉がでない。
でてくるのは、ヒューヒューと喉を通る間抜けな音。
だめ………違う…
口が渇く。
言葉が……………
「朝霧 裕二」
浦崎さんが勝ち誇ったように言った。
頭が真っ白になる。
どうしてどうしてどうして!!!
どんなに頑張っても、言葉がでてこない。
無様に口をパクパクするしかなかった。
「朝霧さんはぁ、朝霧裕二の娘でしょぉ?」
ざわめくクラスメート
「夢乃、こわぁいー!!!」
やめて。やめて。
浦崎夢乃。
#浦崎夢乃__コイツ__#のせいで、また、また、私は…………
「やっぱりそうだったんだ」
「だよな~」
「マジかよ~ww」
あれ?
な ん で ?
なんでみんな?
「犯罪者の娘ってことだよねぇ~~?やだぁ!朝霧さん、あの凶悪犯と血ぃ繋がってんでしょぉ~~」
呼吸が。呼吸が。
息が…………苦し…
「なんかいえば?」
そこには、ついさっき笑顔で私に挨拶してくれた
先崎さんがいた。
「なんで、黙ってんの?違うなら違うって言えばいいじゃない。」
違…くない。
それは事実だ………けど……
「ち…が………」
かすれた声を精一杯口に出した。
…と同時だった。
「まっ無理だよね!だって事実だもんね!あれ?もしかして嘘つく気だったの?酷いよ朝霧さん」
「嘘なんてつかなくていいよぉ~~。朝霧さんの顔見ればぁ、誰だってわかるよぉ~」
笑顔。
笑顔なのに。
私が望む笑顔じゃなくて。
その顔はもううんざりするほど見てきた。
ああ、私は。
私は幸せになんかなれないんだね。
少しだけ。
ううん。
私、もう解放されたんだって思った。
自分の愚かさに呆れるよ。
神様、ごめんなさい、ごめんなさい。
ごめんなさい。
「犯罪者の娘とか何するかわかんないよぉ~!ねぇみんなぁ~~?」
「朝霧さんも#凶悪犯__アイツ__#と一緒だよ!そんな悪い奴には、罰をあたえなきゃ。」
ざわついていたクラスメートは、誰も、何も、口に出さなかった。
ただただピンと張り詰めた空気が流れる。
「#凶悪犯__アイツ__#はぁ、何十人もの命を奪ったんだよぉ?そんな奴ほっとけないよねぇ~~私たちも殺されたらどうしよぉ~~」
いくつもの目がこちらを盗み見る。
みんなの視線が痛い。
痛いよ。
助けて。
助けて。
「私たちが仇をうつのよ!」
気取った声。
私じゃない。
凶悪犯は私じゃないじゃない。
悪いのは朝霧裕二。
私じゃない。
朝霧理沙じゃない。
違う。
思わず顔を覆う。
私は違う。
私は#朝霧裕二__アイツ__#じゃないの!
悲痛な心の叫びは誰にも届かない。
クラスメートの目は好奇心に満ち溢れ、キラキラと眩しかった______