理沙
何が正しくて、何が正義なんだろう。
何が罪で、何が悪なんだろう。
わからない。
犯罪者。犯罪者。
クラスメートはこれを罰だと言う。
私を苦しめることが正しいのか。
クラスメートが正義なのか。
私が悪なのか。
私はなんだろう。
ああ神様、教えてください。
一体私はなんという名の罪を犯したのですか?
私はその罪をどうやって償えば良いのですか?
私は今償えていますか?
私のなにがいけなかったのですか?
クラスメートが私への''罰''を与え始めたのは入学してすぐだった。
_________初の登校日。
「名前…あさぎりさんっていうの?よろしくね!」
初めてだった。
あの日以来、初めて私に笑顔を向けてくれる人がいる。
嬉しかった。
ああ、もうこれで私は解放されるんだって。
私を縛っていた鎖がとかれたんだって。
「……うん!よろしくね!」
私は気がつかなかった。
すでにもう、クラスメートは私の敵だったことに。
鎖で何重にも縛られていたことに。
翌日、私は生まれて初めて学校に行くのが楽しみだった。
学校に行けば、私に笑顔を向けてくれる人がいる。
ああ、なんて身体が軽いんだろう。
教室に入ると、早速クラスメートが声をかけてきた。
「朝霧さん、おはよう!」
嬉しくて、嬉しくて。
思わず涙がでそうになって。
挨拶ってこんなにもいいものだったんだ。
人と話すってこんなにもいいものだったんだ。
忘 れ て た
「おはよう!」
休み時間になると、みんなが話しかけてきた。
「朝霧さんって今年のうちの学校の受験者の中で一番だったんでしょ?すっごいねー!!」
「朝霧さんって中学生の頃美術部だったの?前さ、県のイラストコンクールで優秀賞とってたよね!いいなー、私も応募したけどダメだったんだよね~」
「えー!!作文でも賞とってたよね?朝霧さんの読書感想文私読んだことあるよ~」
「朝霧さんさー、中学生のとき全国模試毎回で一番だったよね?凄いよー!!」
私を認めてくれる人がいる。
みんなが私を認めてくれる…!!
忘れてたこの感じ。
ああ、私はこれから幸せになれる。
そう確信したときだった。
「朝霧さんってほら、名前が覚えやすいから覚えてたんだよね~」
「私も~」
みんなが頷く。
…………どうして?
「どう…して…?」
微笑みながら、問いかける。
どんな風に覚えやすいの?
「え?えーと………」
私と目があった笹原さんが驚いたように口を開いたとき、浦崎さんがかぶせるように呟いた
「……………よねぇ」
「…………え?」
「朝霧さんってぇ、すぅーっごく綺麗な顔してるよねぇ!羨ましいなぁ~」
「そのおっき~い二重の目も、色白な肌も、綺麗な鼻も口も、あたしめっちゃ憧れるなぁ!」
浦崎さんは、わざとらしく抑揚をつけて言った。
……な…に?
「そ、そうかな…?」
「あたしずーっと思ってたんだよねぇ。朝霧さんにそぉーっくりな顔、なぁーんか見たことあるなぁって」
まさか。
激しく心臓が脈打つ。
どくんどくんどくんどくんどくん。
「ねね、朝霧さんって誰似?お母さん?」
息ができない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ………
「それともぉ………お 父 さ ん ?」