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  作者: 水沢 すず
第1話 日常
3/12

**

「裕二さん…!裕二さん…!」



女以外誰もいない静まり返った空間。


女の甲高い声がこだまする。



「…裕二さん!」



次々に家のドアというドアを開けていく。



「いない!」



「いないいない!」



次第にうわずっていくヒステリックな声。



「裕二さん!!!!」



そうだ、タバコを吸いに行ったんだわ…。


どおりでいないのよ。


美味しい朝ごはんを作れば、きっと喜んでくれるわ。


そう呟くと女は、台所へと立った。



「何にしようかしら。」



鼻歌交じりに冷蔵庫を開ける。


そこにはぎっしりと食材が詰まっている。




__という訳がなかった。



「ない!」



再び響く甲高い声。



「どうしてなの!なんで!」



朝ごはんを作らなくちゃ。


裕二さんが…裕二さんが…


そうよ、近くに24時間営業のスーパーがあるじゃない。


買ってくればいいんだわ。


女は突然顔を上げたかと思うと、ものすごい勢いで奥の部屋に入った。


棚の引き出しを必死にあさる。


手当たり次第ひっぱりだす。


手を奥へ奥へと突っ込んでいく。


その時だった。


手が、確かに触れた。


目当てのものに。



あった……



目当てのものは、奥の奥に押し込まれていた。


ほんとうに意地悪な子。


どうして?


私と裕二さんの子なのに。


どうしてこんなことするのかしら。


とりだした封筒を逆さまにしてふる。


すると、ひらひらと一万円札が2枚封筒の口からでてきた。


本当にバカな子!!!


女は拳を床に叩きつけた。


かと思えば、急に笑顔になり立ち上がるのだった。



それから鏡で姿を確認する。


分厚い化粧に白い上品なワンピース。


今日も綺麗だわ。


裕二さん、喜んでくれるかしら。


軽い足取りへ外へと向かう。


靴はお気に入りの淡いピンクのヒール。







_________手には二万円がガッチリと握られていた。











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