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  作者: 水沢 すず
第1話 日常
2/12

明希

2話目となりました。

まだまだ慣れない作業ですがぼちぼち頑張っていきます。

朝がきた。


なんだよ、さっき寝たばっかりじゃんか…。


窓から差し込む日差し。


久々の晴れ間にちょっと嬉しくなる。



今日は外で部活できるな。



ここ一週間天気はずっと不安定で、いい加減室内での筋トレ尽くしにうんざりしていた頃だった。


明希の通う中学は3年前にできたばかりの新設校。


家から歩いて5分で行ける。


だから朝は遅くていいのが楽だった。


部活に打ち込む毎日。


明希が所属するのは弓道部。


1年の頃、その珍しさとかっこよさに一目惚れしてすぐさま入部した。


公立の新設校の割になかなか強い部活で、休日は試合や大会が忙しい。


引退試合が近づく3年生は、今まで以上に熱心に練習をしていた。


明希も必死だった。




''なんとかして結果を残したい''




その一心で。


弓道のなんともいえない魅力に惹かれたのは事実である。


だが弓道の中学生の競技人口の少なさも、入部の大きな決め手となっていた。


もともと明希は幼い頃からサッカーをしていたのだ。


しかし、サッカー部に入部する気などさらさらなかった。


競技人口が多いだろう?


サッカーで名を残すのと弓道で名を残すのでは、弓道のほうが断然簡単に決まってるじゃないか。



はやく、はやく結果がほしい。



この部活の方針は、団体戦を極めることだった。


だから団体戦では結果が出るものの、個人戦は3年生の引退試合のみとなっていた。




これで結果が出せれば。



その成果は俺だけのものだ。



みんな俺を認めてくれるんだ。



理沙に勝ちたい。



明希は理沙が弓道をしていないことに心から感謝した。


理沙は明希が弓道部に入部したての頃、よく呟いていた。



「いいなぁ、弓道。私もやってみたい。」



「なぁんで私の学校は弓道部ないのかなぁ。」



理沙とは年子で、一学年しか変わらない。


しかし、学校が違った。


俺が通う学校は、理沙が入学した次の年に開校したからだ。


普通近い方の学校に転校するものだが、新しい制服なんかを買い揃える余裕はうちにはなかった。



「ごめんね、理沙。」



「学校遠いよね。」



「ううん、いいの。」



「運動できるから遠いくらいが丁度いいよ!」



あいにく理沙が通った中学は山の上にあった。


自転車に乗れない。


そのために理沙は毎朝1時間半歩いて山の上の学校に通っていた。


5分で行ける学校があるのに。


でもこれには心底感謝だ。


同じ学校に通わずに済んでよかった。


理沙はいつも俺の邪魔する。


理沙がいなければすんだ話なのに。


理沙がいるせいで俺は認めてもらえない。


出来損ないの弟としか見られない。


別に俺は自分を出来損ないだとは思わない。


成績も人並みには良かったし、運動だって並以上にはできる。


#理沙__アイツ__#のせいで。




俺は理沙が大嫌いだ。



小さい頃から、ずっとずっと大嫌いだ。






リビングに行くと、電気がついていなかった。


またかと思い玄関に行くと、案の定理沙の靴はなかった。



朝ごはんも食べねぇでなんでこんな早くからでるんだよ?



おかげで俺が飯つくらなきゃいけねぇんだぞ?



こんな日が、もうずっと続いている。



作るのが面倒くさいから、家の前のコンビニでパンでも買ったっていいけど。



あいにく明希の全財産は底をついていた。




『チッ』




夏休み前までは理沙が作ってくれた。


一緒に食べて、理沙が慌てて出て行くことが日課だったのに。


夏休み明けてからだろうか。


理沙の顔を見ない。


もちろん口を利いてもいない。


どうして朝食も食べずに早く登校するのかも聞けずにいた。


部屋から理沙はでてこない。


同じ屋根の下に住んでいるのに、会わない。


おかしい、と感じる。


けれど。


今の明希には、部活以外のことを考える余裕などなかった。



1人で不器用に目玉焼きを焼いて、冷凍ご飯をレンジで解凍する。


母が起きる前に。



急げ。



急げ。




学校に行けば、楽しい時間が待っている。



急げ。




家にいても、つまらないだけだった。


それに、家には母がいる。




檻から飛び出す獣のように、俺は家の玄関を勢いよく開け外へと足を踏み出す。








_________これが、俺の日常。



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