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終章―3

 あの日。


 あの夜。


 聖堂騎士団をひきつれたラインハルトが大聖堂へと馳せ参じたのは、すべてが終わった、そのすぐ後のことだった。


 駆けつけた彼らの懸命な処置により、レオンは奇跡的にも息を吹き返し、からくも一命をとりとめた。


 だが安堵に胸を撫で下ろしたのも束の間、それがぬか喜びに過ぎなかったことを、ミリアは間もなく思い知らされた。


 峠を越え、容態も安定し、着々と快方へと向かうその身体とは裏腹に、レオンの意識は死んだように眠りについたまま、一向に目を覚ますことはなかった。


 原因は分からない。

 少なくとも医学的な観点からは。


 けれど、いや、だからこそ、ミリアには一つだけ心当たりがあった。


 レオンハルト・ユーベルシュタイン。

 人間(ひと)磔刑者(クロイツ)の混血児。


 磔刑者(クロイツ)の消滅。

 目覚めない混血児(レオン)


 ミリアは両者を結ぶ不吉な符丁に、密接な関連を見出さずにはいられなかった。

 そして、その恐ろしい予感を裏付けるように、一月が過ぎ、二月がたち、三月を越えてなお、レオンの意識は戻らないまま、ただいたずらに時ばかりが過ぎ去った。


 大丈夫。

 きっと、大丈夫。


 静かに寝台の上に横たわる彼を前にして、祈るように、縋るように、一体幾度、そう自分に言い聞かせただろう。


 けれどそれは盲信であり、願望であり、決して確信ではあり得なくて。


 だから、揺らぎ、擦り切れ、打ちのめされるまでに、そう長い時間はかからなかった。


 絶望。

 諦観。

 醒めない悪夢。


 それがミリア・エーレンブルクにとっての、この四ヵ月のすべてだった。



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