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陸妃(仮)  作者: 新田 船
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※猫の出産シーンがあります。描写は大したことないですが、苦手な方は気を付けてください。

(眠れない・・・)


 お茶会をしたその日の夜、怪我をした腕と足がじくじくと熱を出し、雪鈴は布団にはいったもののなかなか寝付けずにいた。万一熱が出た場合にと医官から渡されていた薬も飲んだが、全く効果はなかった。意識は冴えわたり、だからと言ってこんな夜中では何もすることがない。持て余した時間をぼんやりと天井を眺めてる。こういった場合、たとえ眠れなくても、ひたすらじっとして時が過ぎるのを待つべきだと経験上で知っていたので、牛の数を頭の中で数えながら時間をつぶす。

 しかし、3000匹を超えたあたりで数を数えるのに飽きてきた。何かほかにすることがないかと思考をさまよわせていた時、外の廊下を何かが動く気配を感じた。


(蓮が帰ってきたのかな・・・?)


 三華姫が出かけており、閑散としたこの淑貴宮で他にこの辺りを出歩く人はいないはずと思い、暇なこともあって少し様子をみてみようとのそりと体を起こす。上衣を羽織り、蝋燭に火をつけ、部屋を出た。

 しかし蓮の部屋に来て中の様子を伺うが、部屋の主はまだ帰ってきていなかった。蓮の部屋は菖歌姫の世話をするために、即席で用意された一時的な住まいなため寝台と机、必要最低限の衣類しか置かれておらず、部屋はまるで生活の形跡すら見えない。その中で、文が落ちていることに気がついた。ちらりと見た文章は字が難しくてさっぱりわからないが、文の最後に蓮名前があるので、蓮が書いたものらしい。

この部屋には墨もないのに、どうやって書いたのだろうかと違和感を感じつつも文を机の上に置き直し、雪鈴は部屋を出た。



自分の部屋に戻り寝台に向かうと、その上には体を丸めている茶色い猫の姿があった。雪鈴の前に現れる様になった猫は、こうして寝台に潜り込んでくることがある。 だから大して気にもせずに猫から少し離れた所に体を横たえた。


 ぐぅぅぅー


 猫は寝ているのかと思っていたが、どうやら違ったらしい。うめき声の様なものが聞こえてきて、具合が悪いのかと思い体を起こし、再度蝋燭に火をつけ猫の方を伺う。すると、そこには茶色い猫とそれに寄り添うように生まれたばかりの子猫がいた。

 

 猫は出産をしていた。


 おどろいて固まっている内に、また一匹、また一匹と子猫は生まれ、4匹目が産まれ落ちると、母猫は出産後の処理をしてから満足そうに我が子を一通り舐めやると目を閉じた。そして、起きているのはみぃみぃと鳴いている子猫達と、雪鈴だけとなった。

 体をづらし、母猫をに手を伸ばす。一仕事終えたせいか、多少疲弊しているが寝息が安定しているので、具合が悪いというわけではなさそうだ。


(蓮が戻ってきたら、猫について聞いてみよう)


 確か尚食宮で猫飼ってるといっていたから、多分世話したこともあるのだろう。ついでに、飼ってもらえるかどうかも尋ねようと頭を巡らせる。

随分と懐いたが、どうあっても自分はあと半月もすればこの後宮からでていなかければならない身だ。もともと野生の猫だから、人間が世話をしなくても心配ないのかもしれないが、猫もお腹を空かせて後宮をさまようよりも、確実に食事がとれる環境の方がいいだろう。

 

(とりあえず、朝になったら猫の分も食事もらってきて、尚医宮に行って薬をもらって、それから・・・)


 朝になった時の算段をたてつつ、ちらりと出産で汚れた布団を見て溜息を吐いた。

 怪我した手で出産で汚れた布団を洗濯しなければならない手間を考えると、言葉がわからないと分かっていてもなぜわざわざ雪鈴の部屋で出産したのかと猫に文句の一つでも言いたくなる。

 

 だがそんな少しの不満も、猫たちの無垢な姿を見ると霧散して、自然と顔がほころんだ。


「お疲れ様」


 母猫の頭をなでると気持ちよさそうに身をよじる。子猫達がみぃみぃと鳴く声を聞きながら、雪鈴は眠れない夜が明けるのを待った。 



 猫の出産に関してはネット知識だけなので、不自然な箇所がありましたら報告をお願いします。

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