ラビュー・ラビュー
カルマの坂の創作に影響され、書いてみました。
ポルノグラフィティの曲『ラビュー・ラビュー』が元です。
「……いい天気だな」
ミントティーを片手に持ち、彼女の話を聞いている僕。
日差しは暖かくて、喫茶店の中だというのに眠ってしまいそうだ……。
「……聞いてる? 天気がいいのはわかるけど」
「もちろん」
彼女が少し訝しげな瞳を僕に向ける。
手に持っているミントティーを一口だけ口に含むと、それだけでさわやかな味わいが口に広がる。
「それにしてもさっきの映画のラストシーン……すごく素敵だったな」
彼女の表情が穏やかになる。
映画のシーンを思い出しているのか、ぼうっとして少し気の抜けた表情になった。
「…………」
それを見た僕が手を口元に持っていってから軽く笑う。
「っ! え、え? ……私、また変な顔してた?」
「かなり間抜けな顔してた……面白いな」
彼女の顔が一気に朱にそまる、耳まで赤くなってる。
僕はそんな彼女を見て、また微笑する。
「そ、そんなに……? そんなに変な顔だったの? 恥ずかしいよ……」
「大丈夫だよ。変なんかじゃない」
その言葉を聞いて、彼女は胸を撫で下ろす。
耳がまだ赤い彼女は映画について話だす。僕はそんな彼女を見ているだけでなんだか、胸の奥が温かくなってくる。
(幸せってこんな感じだよな)
好きな人と一緒に遊びにいく。
一緒にご飯を食べる。
一緒に映画を見る。
色々な事について話す。
好きな人と……。
「やっぱ幸せだよな」
「え? どうしたの急に? 何か考え事?」
彼女は話をやめて真剣そうな表情で俺の顔を見つめる。
こんな時の彼女は僕以上に僕に真剣になる。
そんな彼女の表情を見ていると初デートを思い出した。あの時も空は晴れて、気持ちのいい日差しが降り注いでいた……
話題の映画を二人で見に行って、その帰り道の途中。
「手、つなごうよ……」
急にそんな提案をされた僕は戸惑った。
彼女からそんな事言われたのは初めての事でしかも場所は人気の無い公園などではなく、普通に人通りの激しい街中で、今も二人の周りには色々な人が歩いている。
「い、嫌だよ。恥ずかしいし……」
そう言ったら真剣な表情になった彼女から、手を繋ぐ事の大切さ、重要さを十分以上にもわたって聞かされる事になった……。
そして僕は結局、手を繋いだ。
あの時も……二人で一緒に海に行った時。
夕日も落ちて来て、そろそろ帰ろうって僕が言ったあの時。
「キス……しようよ」
もちろん初めてじゃ無かった。
その時の僕は軽い冗談からその申し出を断った。そして、後で後悔する事になった……。
「!?」
彼女は僕が考えているよりずっと深刻にその事を考えて、大泣きしてしまった。
それを慰めるのにどれだけ苦労したことか……
「それで、何考えてるの?」
彼女が真剣そのものの表情で尋ねてくる。
「大丈夫……僕は本当に君が好きだなって」
彼女はまた顔を真っ赤にする。
「な、何言ってるの! こんな所で……」
僕は笑う。
彼女は真っ赤な顔で僕を怒るけど僕は幸せだ。
君の顔を見てる、君と一緒にいられる。
君にとって重要な事。
僕にとって重要なこと。
意味の無い嘘をつくのはもうやめた。
君を見ていたから、君と一緒にいたいから。
僕は本当いっしょうけんめい愛されてるね。
書いてて少しだけ、恥ずかしくなりました。
読んでいただけて幸いです。