無尽の扉——第一章(完了)
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「うぐっ……すごく痛い……」
ナイチンゲールはふと右すねに残る深い歯形をなぞり、滲み出る血を拭った。白い脚が一瞬、鮮やかな赤に染まった。
数秒前、ナイチンゲールが引き金を引いた瞬間。
顔面に散弾を浴びても、コヨーテはただ一歩後退しただけで、すぐに再び彼女に襲いかかってきた。ナイチンゲールがもう一発撃とうとした時、すでにすぐそばまで迫っていたコヨーテの牙が、彼女の右すねに深く食い込んだ。悲鳴を上げず、ただ低く唸っただけだったのは、彼女自身も意外だった。銃で狙う体勢が窮屈だったため、彼女は身に巻いた布を解き、手帳の金属縁でコヨーテの目を強打した。やはり目はどんな生物にとっても弱点だ。衝撃を受けたコヨーテは口を離し、距離を取った。
今、人と狼は静かに対峙していた。
手帳が邪魔にならないように、ナイチンゲールはそれを脇に投げ、潜むような体勢で銃を構えた。コヨーテも左右に歩き回り、彼女の隙をうかがっていた。
コヨーテが先に動いた。
隙を見て、突然隣のソファに跳び、反動を利用して空中に浮かび上がり、慣性と重力に乗って斜め上からナイチンゲールに迫った。その動きを見て、ナイチンゲールはすぐに撃とうとはしなかった。散弾の散布範囲は広く、至近距離でなければ威力を発揮できない。しかも狼は空中にいる上、失血で右すねが痺れていた。どれだけ動体視力が優れていても、この状況で安易に撃つのは得策ではない。彼女は銃を横に構え、コヨーテの大きな口を塞いだ。
人と狼の顔の距離は、わずか二十センチほどだった。コヨーテの牙が一本一本はっきりと見えた。
少女と獣の死闘、果たして勝つのはどちらか?
ナイチンゲールは左手の力を抜いたように見せたが、銃身を離すことはなかった。コヨーテはこの隙を突き、彼女の左肩に噛みついた。激痛が走ったが、その痛みは彼女を失神させるどころか、動きを加速させた。ナイチンゲールは右手を離し、地下室から持ち出した錆びた長釘を服から抜き、全力で右腕を振り下ろし、尖端をコヨーテの左眼に突き刺した。
もっと深く、もっと深く刺せばいい——
コヨーテが口を離した。ナイチンゲールはすぐに右手で黒い銃身を掴み、両手で銃床を長釘の末端に叩きつけ、銃身を回して、漆黒の銃口を狼の頭に押しつけた。
引き金が引かれた。
戦いは少女の勝利で終わった。
(これで……全部終わったのかな?)
ナイチンゲールは熱を帯びた猟銃を地面に投げ捨て、皮靴で長釘を踏みつけてぐりりと回し、コヨーテが完全に息絶えたことを確認してから、手帳を拾いに行こうとした。
(あの扉……さっきまでなかったよね?)
応接間の壁は元々がらんとしていて、廊下の壊れた壁さえもここまで伸びていなかった。だが今、そこに唐突に重厚な扉が現れていた。よく見なければ、最初からあったと思い込んでしまうだろう。
ナイチンゲールはふらつきながら手帳に近づいた。失血による激しいめまいが、今になってはっきりと意識を襲った。彼女の体は、すでに限界を超えていたのだろう。左肩から血が腕を伝って流れ落ち、ガラスの傷を包んだ布さえ吸収しきれなくなっていた。彼女は手帳を捧げ、眉をひそめてページの揺れを抑えた。新しく滴った血痕以外に、新しい文字は現れていなかった。
(全部終わった……かな?)
ナイチンゲールは最後に、顔が血まみれで息のないコヨーテの死体を一瞥し、鍵を取り出して扉を開けた。扉の奥には鉄格子の扉が横たわり、行く手を阻んでいた。
(やだな……もう鍵探しなんて嫌だよ。)
泣きたくなるような気持ちでナイチンゲールは鉄格子の中央を見た。そこには四角い溝があり、どこかの物の輪郭とそっくりだった。彼女は全ての任務が記された手帳を見つめ、試しにそれをはめ込んだ。ぴったりと収まった。次の瞬間、鉄格子は自動的に地面に収まり、前への道を開いた。
(この後……休めるといいな……)
ナイチンゲールは傷だらけで疲れ切った体を抱え、扉の奥に広がる無尽蔵な闇の中へ、一歩踏み出した。




