第一回
ある夜の、ある館に極めて小規模な舞踏会が開かれた。これはあるミステリー作家の気まぐれで、知り合いを招待したものだった。集まった者は皆作家ではあるが、書き方も書く物も全く違う者たちであった。私も招待された者の一人だった。実をいうと、私はこの主催である九条秋常先生の大ファンである。九条先生のデビュー作に出会い、ミステリー作家を目指したが、当初素人だった私は、だれの目につくこともなく貧しい生活をしていた。ところが、小説を書き始めて五年目の三作目で少しながらも有名になり、四作目を出して間もないのである。憧れの大物作家のお呼びいただいて内心飛び上がりたいほど楽しみにしていた。しばらくの間書斎に籠りっきりだったので、あまり人と話すのが得意ではない私は、隅の方で静かにしていたが、幸いほとんど無名の私に話しかける者はいなかった。
II
その夜は大きな丸い月が、夜空に浮かんでいた。今日は満月らしい。その月の光が当たり、静かに窓の縁が光り輝いていた。足元には人がいたが、大きなため息をついても聞こえないようだ。こんな夜なら早く終わればいいのに。
II
この舞踏会も終わりの時が近づいてきた。しかし、いくら待っても九条先生が現れない。異変に気付いた者が二階の九条先生の書斎へ向かう。しかし、彼らが上に着く前に真実を知ることになる。
「九条先生が倒れている!」
そう言って階段を駆け下りてきたのは津之田桂彦だった。
九条先生は書斎で倒れていて、外傷はなく、首に絞められた跡がある。警察は呼んだが、山奥にある館なので二時間ほどかかるらしい。先生の招待なので、ミステリー作家が多く警察が来るまで推理することになった。
舞踏会に集まったのは、九条先生も含めて十人。そして今、書斎に集まったのは五人。他にホールで泥酔している者が一人、その彼氏である者が一人、九条先生発見の前にお手洗いに言った者が一人、そしてあと一人、どこにいるかは誰も知らなかった。戸も窓も風が吹くので施錠されていたので、今いない者はすぐに探そうとはしなかった。
第一発見者である津之田は、
「私用で九条先生を探していたところ書斎で物音がしたので書斎に向かったが、鍵が閉まっていたが九条先生の身を案じ、戸を破ると九条先生が倒れていたが、他に人はいなかった。」
と言うが信じる者は居ないようだ。
「自分が売れてないから嫉妬心で殺したんじゃないの?」
同じ出版社の江野瀬奈が喧嘩腰で問い詰めるところを見ると、仲が悪いようだ。それが見るに耐えなかったのか、江莉乃音が仲裁していた。
しばらく言い合いが続いていたが、それはすぐに終わった。鈍器で殴ったような音がホールでした。すぐに全員でホールへ行くと、先程泥酔していた猫三毛野が、頭から血を流しながら倒れていた。騒ぎに気付いて、猫三の彼氏である神田保橋が駆けつけた。神田が、
「少し離れていたらホールから鈍器で殴ったような音が聞こえたので来たらこんなことに…」
と泣きながら訴えるが聞く耳を持つ者は多くなかった。先程、書斎にいなかった者は全員容疑者なのだ。
最初に書斎にいた五人は、
津之田
ベテラン作家だが、今は伸び悩んでいる。
江野瀬奈
津之田の後輩だが、津之田を見下している。
江莉乃音
江野の同期で内気。
叉夜明歩
私のとてもいい先輩。
そして私だった。
ホールに居たのは、
猫三毛野
九条先生とは昔から知り合いだった。
神田保橋
猫三の彼氏で体はでかいが、優しい表情をしてる。
まだ来ていないのは、
晴渡正義
書斎で物音がする前に席を外していた。
浦辺麻央
九条先生同期だったらしい。
もちろん、全員ペンネームである。
「今は全員の安否確認が先だな」
という叉夜の提案でまとまって他の二人を探すことにしたが、ここでも問題が起きる。書斎に九条先生がいない。最初に気が付いたのは、江莉であった。書斎の絨毯が重みで僅かに沈んでいたので、先程までここで九条先生が横たわっていたのは間違いないだろう。なぜ、ここにあった死体が消えているのか?犯人がわざわざ運んだのか?いや、違う、九条先生は____________________




