表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

第1章 “始まりの扉”

この物語には多数のパロディで構成されています

とあるストーリー、とあるセリフ、とある場面などにおいてよく知られているものが使われていることがあることをご了承の上でお読みください


 ―――それは確かある晴れた日のことだった。


「では、行ってくる」


 一人の男が低く、張りがあり、厳しさを感じさせる声でそう言った。

 しかし、その男は怒っているわけではない。

 いつもと同じようにそう言った、ただそれだけだ。

 そんな男を見上げえている少年はただ頷いた。

 その顔は明らかに目に涙を溜めて、それでも泣きまいとして失敗しているそれだ。

 男はそんな少年を見て、フッと微笑む。

 少年はそれを見て驚いた。

 いつも厳しい雰囲気で無表情を貫く男が、優しく笑うという表情ができたことに。

 男は少年の頭に手を置いた。

 そのまましゃがみ込み、少年の目線と同じ位置まで目を持ってくる。

 前触れのない男の行動にビクッと驚く少年は男の手の暖かさを感じ、

 そしてどうすればいいのか分からず、ただ男の眼を見つめ返した。

 その眼は黒と呼べないほど、どこまでも深い闇のようで、

 あらゆるものを知っているようで、見ていると吸い込まれるかのようで、

 そして―――


「大丈夫だ。お前には世界をも変える力がある。自分の力を信じろ。

 ―――そしていつか―――」

(りゅう)、そろそろ時間です」

 

 男が言葉を続けようとした所に彼の後ろから静かな声がかかる

 そちらに目を向けるとそこにいたのは一人の女性

 薄い白のワンピースを着て、日傘をさすその姿は

 まるでどこかのご令嬢のように見える。

 加えて、雪のように白い肌、どこか脆そうなガラス細工を

 思わせる容貌も重なっている

 しかし、一目では病弱のように見えるが、小さな動作一つに気品があるのに気付く

 その眼も、その声も、凛とした雰囲気があり、芯が通っているように思われた

 龍と呼ばれた男は言葉を止め、その女の方を向いた


「―――分かっている。もう少し待て」

「これ以上時間を延ばすことはできません」

「……やれやれ、そんなに慌てなくても旅行は逃げたりせん。そこまで楽しみか?」

「なっ、私はそんなことは―――」

「一週間以上前から準備して、毎日日付を確認していたやつが何を言っている」


 半ば呆れるようにそう言う龍に対して、女は毅然としていた態度を崩し、

 顔を真っ赤にして逸らす。

 元々が白すぎるため、そのことがとても分かりやすい


「いいじゃないですか、私はこんな旅行をするのが初めてなんです。

 たった三日間しかないんですから、時間は有効に使いたいんです。

 だから早くしてください」

「三日間しかないんじゃない、三日間もあるんだ。その間、この子は一人なんだぞ。

 ………心配ではないのか?」


 開き直ったかのようにそう言う女に対して、龍は静かにそう返した

 すると、女の表情にさまざまな感情―――喜び・怒り・嫉妬・悲しみが

 混ざったようなものがはしる。

 それも一瞬、すぐに桜が咲くような笑顔に変わった 


「―――あら、何を言ってるのかしら。その子は―――」


 そこで言葉を切ると、少年の方に目を向ける

 そこから感じられるのは、愛しさ、慈しみ、そして―――


「―――私たちの子なのよ。心配する必要はないわ、絶対に」


 そう断言した女はとても美しく、とても輝いて見えた。

 龍はそんな彼女を見て、溜息をつく


「まったくどこからそんな自信が出てくるんだ?

 ―――だがその通りだな。俺たちの子ならば、何を心配する必要がある?」


 そうまるで自分自身に言い聞かせるかのように龍は続けた。

 そんな彼を見て、女はまた微笑んだ。


「だいたいこの旅行はその子が『自分一人で大丈夫だから』

 って言うから行くことになったんだから。

 そんなに心配なら、目的早く終わらせて帰ってくるのが一番だと思いますけど?」

「あぁそうだな。……よし行くか、御幸(みゆき)

「えぇ、エスコートよろしくお願いしますね」

 

 御幸と呼ばれた女は頷くと日傘と一緒にクルリと回った。

 龍は少年の頭から手をどけ、立ち上がる。

 その時、少年から「あ」という小さな声が漏れた。

 慌てて口を閉じるが、表情が寂しそうになっているからあまり意味がない。

 それに聞こえたのだろう、龍は苦笑した。


「やれやれ仕方ない、少し保険をかけておこう」


 そう言うと、服の中に入っていたものを取り出す。

 それは首飾り―――ただ一つの水晶(クリスタル)を紐に通しただけの飾り毛もないもの

 しかし、その石は日差しに当たって虹のように様々な色で輝いていた。

 少年はそんな美しい輝きを今まで知らずに見入ってしまう。


「受け取れ」


 龍はなんでもないかのようにあっさりとそう言って、それを少年へと放った。

 少年は突然放られたそれを慌てて掴む。

 すると、一瞬だけ輝きが強い閃光となってはしった。

 少年は咄嗟に目を瞑るが、瞼の上からでも感じるほどの光に意味はない。

 同時に目を瞑っているはずなのに視界に何かが見えた。

 それは―――どこかの風景―――誰かの姿―――何かの戦い―――

 そんなものが一瞬の間にすべて同時に見えたのだ。

 あまりのことに驚いて、再び目を開けた。

 しかし、すでにその時には、光は消え、ただ石が輝いているだけだった。

 そんな状況の中、龍は平然と少年の様子を見ていた。


「―――なるほど、やはり俺の子というわけか」


 小さな声でそう呟いていたが少年には聞こえなかった。

 そして、「どうした?」と何事もなかったかのようにそう続ける。

 少年は慌てて首を横に振った。


「それをやろう、お守り代わりだ」


 龍がそう言うと少年は本当に驚いた表情をした。

 当然だろう、その首飾りは龍がどんな時でも絶対に手放そうとしなかったことを

 少年は知っていたからだ。

 龍はそんな少年を見て、さらに続ける。


「大丈夫だ、できるだけ早く戻ってくる。その間、家を頼むぞ。」


 その言葉は厳として響き、少年の記憶にまで刻まれた。

 自然と少年も普段の表情に戻り、頷いていた。

 それを見ると、龍は少年に背を向け、御幸の元へと歩いて行く。

 二人は並ぶと、もう振り返ることもなく、毅然として歩を進めていった。

 少年はそんな二人―――深い悲しみを宿した瞳をもつ両親をずっと見つめていた。


 一日たった、二日たった、三日たった。二人は戻ってこない。

 少年は用事が終わらなかったんだろうと考え、納得した。 

 一週間たった。それでも二人は戻ってこない。

 少年はせっかくの旅行なんだから少し延びてもしょうがないと考え、納得した。

 一月たった。連絡すらなかった。

 少年は自分の両親の言ったことを思い出し、自分もあの二人の子だと、

 あの二人は心配ないと考え、納得した。

 半年たった。少年はようやく二人が帰ってこないことが不安になった

 一年たった。ついに少年は確信に至る。 

 ―――そして、二人は少年の前から姿を消した。

 





 みんないなくなる。

 何もかも壊れていく。

 それは誰のせいなのか?

 近づいたものは消えていく。

 関わった者はなくなってしまう。

 ならば、どうすればいいのか?

 関わらなければ、近寄らなければいい。

 全て捨ててしまえばいい。

 そうすれば何も失わない。

 最初から何も持っていないのだから。

 一人で生きていけばいい。

 この手が掴めるものなど存在しないのだから。

 少年―――だった俺は一人、そう思っていた。


長期休暇中に投稿できるか分からないので少し早めに。

これは前段階なので、次回から本格的に本編になります。

誤字・脱字等があれば教えていただけると幸いです。

では、良き休暇を過ごせることを祈って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ