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怪魂歌 ~二十一世紀初期に発生した怪現象について~  作者: おさかなの煮物


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一ノ一 肝試し

 ホラー系は考えて書くのは好きですが、うまく表現できないです。それにホラー系の本とか映画とかは興味は湧くんですが見るのは苦手です。

 20XX年八月の上旬。K県のとある廃ホテルでそれはいた。


「本当に大丈夫?」

「何言ってるんだ?これからその大丈夫じゃないものを見に行くんだろ?」

「いやそうじゃなくって警察沙汰にならないの?」

「大丈夫でしょ!私の先に一組行ってたし、ここも最近ネットで有名になったばっかなんだから!」

「そうそう、お前はそういうところ心配し過ぎなんだよ」


 男女四人のグループが談笑を交えながら懐中電灯の明かりを頼りに道を進む。道といっても放置されたゴミや板を壁に寄せて無理矢理に開かれた道を通っているだけだが。


 このホテルは3階建て。ネットでは一階の廊下を真っ直ぐ進み、二階へ上がり、客室を回っていく。階段の方へ戻り三階へ上がり、三階の客室を回って戻るルートがおすすめされている。というかその通り方しか全てを巡ることが出来ない。四人は一階の客室を一つ一つ訪問し、何かアクシデントが起こらないか、ワクワクしながら扉を開ける。一人の女性は少し警戒しているが。


 その時、客室の扉が勢いよく締まり、天井の電灯が一瞬点滅する。

 大きく響いた音と点滅した伝統に一同は驚き、懐中電灯の光を周囲に当てて警戒するように周囲を見渡す。


「帰れってことじゃないの……?」

「いいや、歓迎してるんじゃないのか……?」


 女性が恐怖を感じながらも冷静にそう話す。それでも、リーダーのように全員を率いている金髪の男は口元が緩み、むしろこの状況に惹かれ好奇心を持っている。


 ドアを開けて廊下に戻る。奇妙な現象は起こっているものの、肝心の霊に遭遇したわけでもないため、全員はまだ探索し足りないとでも言うように残りの客室を探る。


 期待感に駆られる様に残りの客室のドアを開ける。ただ、残りの客室に入ってもさっきのような現象は全く起こらずに、吹く風でカタカタと窓が揺れ、青白い月明かりが部屋に差し込むだけだった。


「よし、この回の客室は探索し終えたな。」

「じゃあ、次は二階だね。」

「ネットによれば三階に近づくほど奇妙な現象が多くなるらしいよ。何なら一階で遭遇できたらレアだって。」

「じゃあ、俺たちラッキーだったって事!?いやー!今日ツイてるわ!もしかしたら会えるかもな!」

「会えないくらいが丁度良いんだけども……」


 男の発言に女性があまり乗り気ではないがツッコむ。一同がスマホを頼りに歩き始めた途端、上の階から悲鳴が聞こえる。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 天井越しに聞こえるその声は多少音が籠っているが、はっきりと聞こえるほどの悲鳴だ。そしてそれと同時に、スマホを持った女性が真剣そうな表情で声を上げる。


「圏外になった!みんな塩持って!」

 その声に合わせ全員がポケットからスーパーで買えるような小瓶に入った塩を片手に持つ。


”スマホの電波が圏外になる。”ネットで出てきた情報で、霊が活発に動いているという情報。彼女が事前に調べた情報には、圏外になっている間、霊が現実に干渉しているというのだ。そのため、ごく稀に引っ掻き傷や噛み傷をつけられるといった事例が過去にあったらしい。

 対策としては塩をかければいいとのこと。持つだけでも十分効果がある上、仮に攻撃されても塩をかけることで霊が怯むらしいのでその間に廃ホテルの外に逃げるのが適当だという。失敗すると長期間呪われるといった情報が書かれているが、詳細は書かれていなかった。


「いや!!やめて!!いやああああああああああ!!!」


 絶えず聞こえる女性の悲鳴に、四人は居ても立ってもいられなくなったのか、走るようにして階段へ向かい、声のする方へと向かう。


「二階か!?三階……か……?」


 男が救助に向かおうと階段を駆けながらそんな言葉を発するが、一階上がったところで声が止まる。

 階段が上の階に伸びておらずこれ以上登れないのだ。


「おい、ここ……何階だ?」


 順当に階段を上っていたのならば、現在は二階にいることになる。だが、これ以上階段が続いていないということは三階にいるのかもしれない。

 疑心暗鬼になりながらも警戒しつつ周りを見渡す。視界に入ったマップの左上には、薄汚く汚れ、塗装の一部が剥がれた灰色の数字が一つ、「3」と書かれていたのだ。


「いやっ、助け……っ!」


 四人組が足を止めていた時、その階の一室から助けを求め、突如として途切れた声が響く。


「助けに行くぞ!」


 冷や汗を流し、急ぎ気味に腕を振って音がする部屋へと向かう。

 叫ぶ声は途切れたものの、ポタリ、ポタリと液体が垂れる音と、大きな物音が異様に響いていたため、すぐに部屋を特定することが出来た。


「大丈夫か!?」


 男が先陣を切り、扉を勢いよく開け、部屋に懐中電灯の光を部屋に当て、視界を確保する。彼に続いて、他の三人も部屋の中へと入っていく。違和感に気付いたのはその時だった。

 懐中電灯の明かりが壁に当たってより強く光ることもなく、ただ遠くを照らしている。それほどまでに部屋が広いのだ。四人はその光景に一瞬動きが止まったその時、背後の扉が閉まり、室内ではありえない冷たい風が吹き、四人の髪を揺らす。


 男は広くなった空間を探るように懐中電灯の光を右へ左へと、懐中電灯を持っている手を小さく揺らしながら動かす。たった今起こった事象の元凶となる()()はいた。

 くちゃくちゃと音を立てながら何かを食べている。肉のようなピンク色をしたただれた皮膚が何重にも重なるほどに肥大化し、二メートルは優に超える大きな体。体の一部を覆うように着ている淡い緑の浴衣も先が破れ全体が泥や埃で汚れ、原形を留めていない肉塊のようだった。

 体から生えている長い手や短い手を器用に動かして女性の胴を掴む。女性には頭がなく、そこから引いている糸のような液体は、その肉塊の口に繋がっている。彼女の手と足は脱力しているのかのようにぶらぶらと、それの動きに合わせて動く。

 漂っていた鉄のような異臭が四人の鼻に入る。一人の男性がえずき、その場で内容物を吐いてしまった。

 三人は吐くことは無かったが、あまりの光景に言葉を失い、一瞬体が動くことをやめる。

「んめ……めいん、でぃっしゅは……お、お前ら?」

 その肉塊は懐中電灯の明かりを反射するほどに光沢のある大人の頭ほどの大きさの眼球をぐにゃりと動かし、四人を睨む。掴んでいる女性の肩に口を当て、涎を女性の体に垂らしながら、ブチッと抉るように噛み千切る。歯の間に隙間があるのか、肉は完全に噛み千切られておらず、まだ生きているであろう神経が反応し、ビクン、ビクンと体を痙攣(けいれん)させる。口と女性の体を離すように動き、噛み千切った肉と体の間を引いている筋や肉をブチッと切る。同時に胴と足だけ(のこ)った女性の動きも静まったかのように止まる。


 眼球からの視線が四人組に向けられ、”次は俺達”そんな言葉が彼らの思考全てを埋めるように頭に響く。見られていると分かっていても、変にその化け物の気に触れないよう、女性の一人が音を立てずにゆっくりと後ずさりドアノブに手をかける。

 ゆっくりとドアを引き、開けようとするが、ビクともしない。押しても開かないことで焦り始め、音を立ててまでドアを乱暴に押し引きする。


「……ねぇ!?何で開かないの!?出してよ!出して!!!」


 女性は狂ったかのようにガンガンと音を立ててドアを押し引きするが、ビクともしない。ぐちゃり、ぐちゃりという音がドアの音で隠されていたが、他の三人は確かに聞き取り、音の方へと振り向く。


「おい!お前、ドアから離れろ!」


 男の一人が制止しようと声を上げたが、ドアの音にかき消されてしまう。大きな音に反応したのだろうと、これ以上大声を出すことをやめ、三人は女性を助けることをやめ、音を立てずにドアから離れていく。


「ねぇ、彼女はどうなるの!?」

「知るか!パニックになったやつを助けて俺たちまであれみたいに食い殺されてぇのか!?」

「全員は無理だ!この三人で生きて帰るぞ!」

「……なんでそんなすぐに切り捨てられるの……?」


 三人はドアの音が鳴り響く空間の中、小声で話す。三人は、冷静でいるが、内心焦っているのだろう。だが、三人は自分を保護することを最優先してしまったがために仲間を切り捨ててしまったのだった。

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