お出かけ
フィーリアが自分のことをヴィセリオに話した三日後。レティシアとのお出かけの日になった。あれからヴィセリオは、解呪のために色々な人に話を聞いてくれている。
「わたくし、こうやってお友達とお出かけするのに憧れていたのです!」
聖女として顔が知られているレティシアは、金色の髪を魔法で茶髪に変えている。それでも彼女の美しい容姿は隠しようがなく、おしゃれなワンピースを着こなしているため、道行く人々の目を奪っている。
フィーリアは以前美術館に出かけた時と同じように髪を栗色に変えて、この前とは少し違った水色のワンピースを着ている。ヴィセリオに勧められたまま着たものだ。
この場には、レティシアとフィーリアだけでなく、聖女の護衛としてルーンオードもいる。彼も髪の色を黒色に変えて、落ち着いた服を着ている。ヴィセリオが着ていたものとよく似ているので、騎士団ではそういった服が流行っているのだろうか。
ヴィセリオに対して自分の想いを明かした今、彼の顔を見るのがやけに恥ずかしい。自分が本心では彼のことを忘れられず、彼の傍にいることを望んでいることがはっきりと分かったのからである。
ルーンオードはいつものように、感情が籠っていない冷たい笑みを張り付けている。心なしか、いつもよりも不機嫌そうにも見える。
「わたくしはフィーリア様と二人でお出かけがしたかったのに」
「貴女様は聖女なのですから、そういうわけにはいかないのですよ」
レティシアとルーンオードが親しげにそう話しているのを聞き、心が痛むのを無視してフィーリアは微笑みを浮かべた。
「レティシア様とのお出かけ、とても楽しみにしていたのです。以前お兄様とこの辺りを訪れましたが、可愛らしいお店を見つけたのですよ」
「そうなのですか! 是非入ってみたいです」
きらきらと明るいレティシアの笑みは、フィーリアの胸の内とは対照的にとても眩しかった。
最初に、レティシアが行きたいと言っていたカフェを訪れた。その間、ルーンオードは護衛だからと、フィーリア達と同じ席に座ろうとせず外で待機していた。中の安全は、ユリース侯爵家の影の護衛がいるから安心である。
最近流行のカラフルなパフェや不思議な色の飲み物を頼み、レティシアと共にいろんな話を楽しんだ。甘いもの好きな彼女は、美味しそうにお菓子を食べており、店内の男性客の目をとにかく引き付けていた。
次に、フィーリアが見つけた可愛らしいお店を訪れた。レティシアは可愛いものが好きなようで、楽しそうにレースのリボンやおしゃれな帽子などを見ていた。途中で彼女はルーンオードに猫耳カチューシャを付けさせており、それはそれは不愉快なルーンオードだったが、とても似合っていてフィーリアも思わず笑ってしまった。
それからも目に入ったお店に入っていく。お小遣いは沢山貰っていたので、気に入ったものは購入し、家族へのお土産も買った。
「見てください、フィーリア様! あのお菓子、美味しそうです!」
「確かに、美味しそうです。食べてみましょう」
楽しそうなレティシアを見ていると、フィーリアもつられて楽しくなる。少し沈んでいた気持ちは、彼女の明るさに救われてとっくに和らいでいた。
向かいの店で販売されている食べ歩き用のアイスに目を付けたレティシアは、駆け足で列の最後尾に並んだ。フィーリアも隣に並ぶために、足を進める。
しかしその時、遠方から悲鳴が聞こえてきた。




