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勉強会

 翌日。フィーリア達は図書館に訪れていた。今の期間、図書館では勉強する他の生徒達の姿が多くみられる。今だけは会話はある程度許され、勉強会を開いている生徒もちらほらと見られる。


 勉強会をするという話をヴィセリオにすると、彼はすぐに参加することを承諾した。自分の勉強はしなくても大丈夫なのかと問うと、彼は笑って大丈夫だと答えた。本当に、彼はいつ勉強をしているのだろう。いや、もしかすると勉強などせずとも点数を取ることができるのかもしれない。


 そんな万能な兄は、にこにこと機嫌がよさそうな笑顔を浮かべ、フィーリアの隣で歩いていた。

 レティシアの後ろには、彼女に付き従うように歩くルーンオードの姿がある。そしてその隣にはルディの姿が。始めはルーンオードとルディに関わりがあるのかと不思議に思ったが、騎士クラブに入っているのであれば、顔見知りなのは当然だろうと納得した。


 美形で花のあるヴィセリオとルーンオード、ルディが同じ空間にいるだけで、目立って仕方がない。他の生徒達の視線がちらちらと彼らに向けられており、明らかに勉強の邪魔をしている。フィーリアはできるだけ早く席を取ることを第一に考えた。

 場所を確保してから、誰がどこの席に座るかという話が出た。椅子は八個あり、四つずつ並べられている。自然と座るならば、体面を考えて女子四人、男子三人が横に並ぶことになるが、そう簡単にことは運ばなかった。主にヴィセリオのせいで。


「フィアは私の隣に座るといい。私が何でも教えてあげよう」

「それだと、家で勉強すると変わらないじゃないですか。でしたら、お兄様はわたしの前に座ってください」


 フィーリアはジト目でヴィセリオを見たが、彼は気にせず笑みを浮かべながら彼女の肩に手を乗せる。彼はどうしてもフィーリアの隣に座りたいようだ。助けを求めるように視線を兄から離すと、呆れた顔をしたルディの紅い瞳と目があった。


「おい、ヴィセリオ。フィーリア嬢に迷惑をかけるな。今くらいは自重しろ」

「…………そうだね、分かった。これは勉強会だものね。フィアばかりを優先するのはよくない」


 随分と間が開いた後、ヴィセリオは引き下がった。彼の言葉の通りだ。勉強会でこんなに妹の隣に座りたいと言い張る兄がいるとは思えない。

 結局、奥からアレクシア、フィーリア、レティシア、ソフィアの順に座り、彼女ら二人の前の間にヴィセリオ、ルーンオード、ルディの順で座ることに落ち着いた。




「この問題は、このように解くと良いのですよ、アレクシア嬢」

「なるほど……確かにそのように解くと、簡単に答えが出せます。今まで悩んでいたのが不思議なくらいです」


 アレクシアが首を捻っていたのに目ざとく気が付いたヴィセリオは、彼女に解き方を教えている。先程まで妹の隣に座りたいと言っていた人と同一人物とは思えない変わりようだ。

 真剣に彼の教えを受けて頷いているアレクシアは、勉強熱心なようで、ヴィセリオも教えがいがあるだろう。


「これは、発想の転換が必要になる。魔術科の先生はこのような変わった問題を出してくるから、対応できるようにしておくべきだ」

「発想の転換……難しいですね」

「ちなみに、兄様ならどのように解かれるのですか?」

「そうだな、私なら……」


 レティシアとソフィアは同じ問題で躓いたらしく、ルディから教えを受けていた。ルディも学園内で上位の成績を収めており、教えるのが上手い。彼は最初レティシア相手に敬語を使っていたが、そのうち素の話し方に戻っていた。

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